悪闘L&A


PHASE 7「心」


冷たい雨が血を走らせる。
血を導(みちしるべ)にする。

「はううううぅぅ……」
雷がいきなり鳴った。それに驚いたリリスは震えた声と
ともに身をすくませた。
……てどういうこと。
「……けが人をけが人を、落とすなよ……おら」
壮介を知らずに地面に落としたということ。
「は、はうっ!ごめ!」
びっくりの光景だったので誤りはしたが、
やはりびっくりだったからか「ごめん」と
ちゃんと言えてない。

「こんガキは……」
「うぐぅ、ガキって言わないでよ〜」
とりあえず、もう一度リリスは壮介をかつぎ直す。

友達になったひと。
そのひとが心配になる。
人間だから?
大切なトコロの生きものだから?

そんなんじゃないよ。

大切なんだよ。
壮介だって。

アテナだって。

もう『友達』だから…

「リリスちゃ〜ん……」
「はい?」
「こんのエマージェンシーエマージェンシー言うてる
おかたが、何をにへらと笑うてる?」
「……てひひ……ちょっと」
なぜかもう一人の仲間が危険な目にあってるかもしれない

いうそんなときなのに、顔が柔らかくなっていたリリスで
あった。
「……ふっ」
背中の上にいる壮介も、そんな彼女の顔を見て、
にこり一つ笑みをこぼした。

「随分とぬるんでいるね」
その笑いの世界を消しさるように、黒い影が現れた。
「ちっ、もう来たか…」
「早くて悪いことは一つもないさ」
空気も凍る闇の眼差し。
地面を踏むのは赤い赤い血の色。
トガイがふたたび、姿を見せる。

「アテナは……どうしたの!?」
リリスがそのトガイに、今や大事な『親友』のことを。
聞いた。
「……………………早期彫女なだけさ」
            ☆
「まあ……わかり易く説明させて頂くと……
傷ついた女は綺麗な女。だから傷つけた……
今は死んだかも……いい……実にいい……悪夢だ」
ひねくれた心、さらに極まれりということか。
それを聞いた壮介の顔は怒りのあまり激しく紅潮した。
「…………ってめぇえええええええ!!」
自分が傷だらけのことも忘れて。
「人間をなめくさってんじゃねぇぞオオオオオッッ!!
だぁらあああああっ!!!!」
怒りまかせに拳激をトガイの顔に1発ぶちあてた。
首から上が動き、口から血がこぼれる。
「っはぁ……はぁ……どうだ……これはアテナの分!」
とまあ、そこまでの威勢はよかった。
そこまでだが。
「実に素晴らしい快感だ……」
首が曲がったまま、目だけ壮介にむけてトガイは言葉を
吐いた。
「……うえ……気持ち悪い奴」
「まあ……君はどうでもいいんだ………それより」
「………………!!」
トガイはリリスの方向に顔を。
「な……な……」
「君は……病に呪われ神を呪う者ヤコブ」
人を聖書の者、ただし堕ちていく言い方に例え、
殺す。トガイの楽しみかた。
「……あ……っ!」
首をおもいっきり掴まれ、それを解こうにも解くことが
できない。
「リリ!!」
「邪魔をするか!!ならば」
壮介の体がたかくたかく持ちあがった。
「死ね!!」
壮介は、そのままあらぬところへとばされる……
「うわあああああ!!!!!」
            ☆

壮介はあらぬ方向へ飛ばされた。
そして……

なんだ……
今度こそ……死んだ?
違う。
あいつだ。でも何か違う。
この光はなんだろう。
さっきの治癒の光と
似てなんか違う感じ。

「…ん」
壮介はふと気がつき、体を起こそうとした。
「……まだ寝てなければ……」
それは目の前のアテナによって止められたが。
(アテナ……)
それは一見、確かにアテナだった。だが、
その光輝くルビーのような赤い髪、赤い眼、
額についた『鳳凰』の羽の印。
『麻宮アテナ』とは、どこか雰囲気が違った。

「お前……アテナか?」
あまりに変わったアテナの様子に、壮介は思わず聞いた。
アテナはそのことにゆっくり頷くと、
「私は闇を消しさるために光を運んできた鳳凰です。
彼女は私の中の眠れる彼女であり、眠れる私……」
「眠れる……」
「鳳凰……『麻宮アテナ』の持つ眠れる魂。
それは闇を滅ぼす力……
本当ならずっと目覚めるはずのないこの私が、
一人の『メンフェニティ』の暴走により、時の軸、沈む者
の魂…この私にショックを与え、私はやってきました。
さきほどの麻宮アテナの仲間を救いたいという強い
意志が、私を完全に目覚めさせた」
「………」
「目覚めた以上、私は闇を払う」
壮介の傷をヒーリングで完全に治すと、
アテナは立ち上がり、次の方向を向いた。
それを壮介が止める。
「待てよ」

「俺も連れてけ」

「…………わかっています。
あなたは、『アテナ』と、今救わねばならぬ輝きの仲間
ですもの」
            ★
「さすがに……強い……」
ファイティングポーズをグッと構えているリリス。
「誉め言葉どうも……」
そしてトガイは後ろに手を回して、その目でリリスを
見つめていた。
二人して傷は思ったよりは浅いようだった。
が。
「僕を誉めた……プレゼント」

パチン


「う………!!」
トガイの指が鳴る。そうすると、
急にリリスの体中から、血がどっ、と大量に吹き出す。
「面白かったかな……くはははははは……」
その痛み、辛さ、苦しみに、リリスは膝から一気に
崩れ落ちた。
「……さて、殺すか。一気に気持ちよく」
「っ……」
趣味のフィニッシュ。
トガイの手が高く上がった。
その時。

『サプライズライトニングサーベル!!』

眩しい光が辺りを巻き込み、トガイの右腕を斬り裂いた。
「ぐうううっ!!」

「その子の命、絶やすわけにはいきません」



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