悪闘L&A


PHASE 8


「アテナ…」
アテナの変化した姿を見て、リリスは口が塞がらなかった

髪の赤さ、ルビーのような暖かい目、
アテナを覆う赤く、優しいなにか……
アテナのようで、アテナでない……かんじ。
そのアテナはケガで立ちあがることもできないリリスの
ほうに目をやり、しゃがむと、
「もう大丈夫です……リリス。その傷、
わたしが治してさしあげます……」
リリスの身体に手をかぶせるようにした。
優しい、暖かい光がリリスを包む。
傷が何事もなかったかのように消えていく……
それだけとは思えない。
カラダが軽くなっていく感じがするんだ……

すっとリリスは立ち上がった。
傷の消えた体で立ちあがった。
試しに、痛みがあった腕の節々、足、首をひねってみる。
痛みが何もない。

「俺のときもそうだったけどよ……なんっつーパワーだ」
さっき傷を治してもらった壮介。なのだが、
この治癒の力、まさに見ても治されても驚きである。
そして全快したリリスは、飛び跳ねたりシャドーを
しながら、
「……もうこんなに動ける…」
「来ます!!」
アテナの言葉に全てが一瞬止まった。


            ★


「どうするんだよぉ………どうするんだよぉ………」
人の苦しみだけが糧の男は雨に打たれて帰ってきた。
しかし、右手は奴が左に持っている。
そう。さっきの斬劇。
斬られた穴から血はドロドロと落ちて、地を這うように
ながれる。
雨と同時に流れる血を見て、それより少し前の方向を
壮介はちらりと見やると、陳腐な台詞をややがっくりした
様子で吐き捨てた。
「まーだ生きてる…よ、な」
トガイ。

だが、そのトガイは様子が違う。
「クク…てめぇらにとっていいハンデになるな……
これはよ」
さきほどまでの冷静で非情な彼はどこにもいない。
今いるトガイは、強いていえば『殺人マシーン』。
「うおおおおおおお!!!!!!」
叫び声を揚げてトガイは向かってきた。
目に止めることができない速さで。
「くっ……!」
壮介は思わずガードに入る。が、無視されていた。
「おい!喧嘩は買えよ!!」
そう、トガイの目的はリリスとアテナの血肉にある。
「グワアアアアアア!!」
叫び声とともにトガイはリリスのほうに向かっていく。
「…う…運命の……」
必殺の一矢、ロビンフッドアローでそれを止めようとする
リリス。
だが遅い。
「遅い!!!」
(しまっ……!!)
また、眼をつぶる。


「………え」
「なにっ………」
トガイの突進、そして攻撃はリリスの目の前で止まっていた。
止められた。というのが正しいのだが。
「破滅のメンフェニティ、ザルゴスの使い、怨魔の師の
トガイ。秩序と平和を乱す者として、ここで消去する!!」
アテナの力を込めた腕が、トガイの進撃を食い止めていた。
「邪魔する気とは!!!」
自分の拳を止められたことにトガイは危険な
くらいにキレかかっていた。
(人間め…)
「クズめぇ!!」
空いていたほうの怒りの鉄拳がアテナに向かってきた。
「アテナ!」
リリスは危険を感じ、アテナに向かい叫んだ。
肝心のアテナは、目をつぶり、トガイの手を抑えた
ままで、リリスの言葉など耳に入れてないように見えた。

「見えた」だけだが。
『火炎審(ブレイズ・ドゥーム)…』
ひとこと、それを呟くと、トガイの体はたちまち
赤い炎の壁に包まれた。
「うぐおああああっ!!」
            ★
「ぎ……ぎゃあああああ」
炎の中で声があがる。
呻く、もがく。その声が。
「なんて強ぇ……これが」
「アテナの……本当の強さ……」
言葉という力だけで炎の壁をつくったアテナの
その炎に、目が点になっていて、なおかつ漏らした二人の
動揺。
それに赤い髪は気づくと、二人の方向に顔を向け、
二人の動揺、そして自分の強さの理由を素直に述べた。
「さっきも言いましたが……私はアテナの中のアテナ。
わかりやすくいえば……『鳳凰』でもあるのです」
「鳳凰!?」
「今でも、今までも、私の力を使って戦いを
していた『アテナ』……鳳凰の力を持った
選ばれし少女です。
ですが、この世界にあの悪魔が復活したことで次元に
ひずみが生まれ、私の魂にショックが与えられたことと、
アテナの仲間を助けたいという強い意志で、
ここ……アテナの中に私は復活した」
理由には、ここまでの深い理由があった。
「……じゃあ、いま『麻宮』アテナは!?」
そうすると、『親友』リリスが麻宮アテナの状態を
『アテナ』に聞く。
その答えは以外にして待っていたもの。
「心配しないで。リリス」

「アテナ!?」
『アテナ』の口から『麻宮アテナ』の言葉が出てきたのだ。
「『彼女』とあたしは、今ひとつの存在なのよ」
「ひとつ……の」
「ええ。」
アテナはそこまで答えると、炎の壁を見る。
雨の滴でも消えない炎。
とまらない炎。
『ぐおおおおおあああああああっ!!』
それをひとすじの強い風が破った。
「風が!」
水が炎が真横に流れる。
即座にガードポーズをとるリリス。
「心配しないで!鳳凰鏡反射(フェニックス・リフレクション)!」
アテナの放った力は、3人を覆うバリヤーとなった。
横なぐりの風も、雨も、深い闇の気も、これなら
進入はできない。
それがひとつ治まると、アテナはバリアを解いた。

そして。

「ウウウウウウウウ………」
まだ、奴は生きている。
「冗談じゃないよ。おい………」
壮介はため息まじりにそう漏らした。



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