「欺く月」


第8話 「地獄の番人月見て笑う」

200X年―セカンドサウス。

「・・・テリー、空が・・・なんか、おかしいぜ。」
「ん・・・?あぁ、嫌な過去を思い出しちまうね。こんな空は・・・」
少年は空を見上げていた。空は漆黒に染まり、異様な空気が渦巻いていた。
「ロック。そんなことよりもよ、今日の晩飯はチキンでどうだ?
 ・・・ロック?  おい、どこいった?」






「真剣勝負に水を挿すたぁ真っ当な侍のするこっちゃねぇな。」
「!誰だ!?」
月を舞台にぶつかる影の下、金髪の少女はその声に過敏なほどに反応した。・・・この少女も戦いにおいては素人ではないようだ。
身体はすでに身構えていた。
「熱イ!熱イゾ!!体中ニ殺意ガ渦巻イテイル!!!」
もがき苦しむ白い胴着の男・・・名は『リュウ』というらしい。
リュウの白い胴着はみるみる内に黒く変色していく。
そして、暗闇の中から声の主が光に侵食されるかのようにゆっくりと現れた。
「・・・ほう、おもしろい。鬼退治といくか!」
『シャキン』
「誰だお前は!?」
「俺かい?俺は覇王丸。修羅を貫くただの侍よ」
「ウガァァァアアアアアア!!」
大雑把に刀を振りまわした後、腰につけた酒を口に含み、刀にそれを吹きかけた。
「お嬢チャン、辺に手を出すと怪我するぜ?」
「・・・くっ、まぁいい、リュウの力を試させてもらう。GO!」
リュウの瞳は赤く染まっていた。まるで血の宿命を煽るかのように。
「・・・心ノ臓・・・止メテクレル・・・」
「なるほどね、正気を失っている鬼なんぞは恐れるに足らんぜ」
リュウは突然腰を据えるように構えた。なにかを出そうとしている。
しかし、それは一瞬の出来事だった
「波動拳ンン!」
覇王丸は防御の型をとった。
気の弾は覇王丸の刀にぶつかり、二つに割れた。
「あっぶねぇ!・・!!」
三馬身程離れていたはずのリュウの姿は無く、背後に居た。
「昇竜拳!!」
離れたところで見ていた少女・・・キャミィはその光景を見て呟いた。
「終わったな」
しかし、舞ったのは覇王丸の身体ではなく、小さく裂けた布キレだけだった。
「甘ェね。知り合いに忍びがいるんでね。奇襲には慣れっこなんだ」
そう言いながら覇王丸は刀を背中につくぐらいに大きく振りかぶった拳を突き出し空を舞うリュウの全身に覇王丸の太刀筋が走った。

一閃―。

まさにそういうのであろう。
「グワァァァァアアアアア!!」
「そんなもんかぃ?・・・じゃねぇだろ」
リュウはまた腰を据えて構えた。しかし、最初とはなにか気配が違う。
「真空・・・・」
その目は殺意に燃え上がる炎のように真っ赤だった。
なにが来るかは解らない。しかし、侍の勘というのかその一撃は凄まじいという以外の言葉が見つからなかった。
「いつまでたっても人形みたいに操られやがって・・・いい加減、あったま来たぜ!」
リュウの掌からとてつもなく巨大な気の弾が放たれた。
「波動拳ンンンンンッッッ!!!!」
覇王丸は振りかぶった
「これでも食らいな!」

『ガァァァアアアアンンッッ!』





傍らで少女が倒れていた。しょうがねぇな。そう呟くともう一方の肩でその少女を背負った。
「波動の力か・・・こいつとはまた、シラフの時に手合わせしたいね」
覇王丸の両肩にはリュウとキャミィが担がれていた。
「それにこっちには闇の力・・・。役者は揃ったってわけか」
覇王丸の懐には不思議な光を放つ玉が光っていた。

瞬間、覇王丸の横を風が横切った。
「・・・ま、一筋縄では終わらんようだが」
風を目で追いながら、一人呟いた。





「兄さん!」

「!?」

刃の音が止まった。

「楓・・・か」

「なにをやってるんだ!一体なにが起ころうとしてるんだ!」
「お前には関係の無いことだ。」
嘉神はその光景を見て言った。
「来たか・・・。青龍の少年。・・・天野はどうした。」
「・・・天野さんは、地獄門の番人に・・・」
嘉神、それに守矢の顔色が途端に変わった。

闇の中から湧き出す様に、5人の前に影が現れた。
大きな鷲が空からその影に止まった。

「くくく・・・悪夢のようだろ?」
「地獄門が・・・」
「開いた・・・というわけか。」
庵はただ黙っていた。邪魔がはいろうと庵は戦うことをやめはしない。
しかし、黙ったままで動かなかった。
「・・・ほう、死を望むのは俺だけではないようだ・・・」
「八神さん?」
「八神?」
「・・・」

             『どくん』

「!!嘉神さん!まずいです!!」
庵が黙っていた理由。―それは、再び彼の中にオロチが舞い降りた瞬間
の証明だった。
『朱雀の剣』の炎がみるみる内に紫色に変わっていく。

血が舞い散った。月に咲く華のように。

「兄さん!!」
楓が叫ぶ、・・・守矢が倒れる。
そして、闇の咆哮。
「グゥウ・・・キシャァァァァアアアア!!!」

全員が構える。
アテナ、嘉神、楓。
全員がとまどっていた。

最後の敵は・・・八神庵??

そして、一人だけ笑う男、刹那。

「くくく・・・いいじゃぁないか。死の香・・・」









覇王丸は一筋の汗と共に声を上げた

「どうやら、まずい展開らしいな!急ぐか!!」





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