カプエス
DJステーションシリーズ
『新・BOFストーリーズ』
ライブ5
作者 タイ米
次に入ってきたのは二人組だった。
一人はちょんまげに眼帯、そしてその格好に明らかにミスマッチな背広を
着ていた。
もう一人は、同じくちょんまげだが、鎧を着ており、顔は美形でどこかの
芸能人を彷彿とさせる。
「まずは自己紹介からしてもらおうか…」
山崎がタバコを吸いながら、二人に指示する。
二人は同時に喋りだす。
『柳生十兵衛です』
「はい!?」
同時に同じ名前を言ったので驚いた山崎。
「だから自己紹介って言ってんだろ? まずはそこの眼帯から!」
「柳生十兵衛です」
「……」
眼帯男の自己紹介に沈黙する山崎。
「そこの若いの!」
今度は若い男に自己紹介させる山崎。
「柳生十兵衛です」
またもや同じ返答だった。
これにはさすがの山崎もキレる。
「なめんとのか〜! てめぇら〜!!」
そこら辺にあった灰皿を次々に投げつける山崎。
「わわわっ!!」
「社長! 落ち着いて!! ドウドウ!!」
香緋のおかげで落ち着きを取り戻す山崎。
「社長さん、我々が同じ名前なのは偶然なのでございます」
「何だと!?」
眼帯男が説明をする。
「私が会社をリストラされ、再就職の目途も立たず途方に暮れていた時、彼に
出会ったのです。彼もまた、私と同じような境遇に立たされた為、我々はすぐ
に意気投合しました。そして、彼と私の名前が同じだったと知った時、二人で
何かをしようと決意しました。そんな時、このオーディションの話を知ったの
です」
「ええ話やなぁ…」
涙ぐむ香緋。
「まぁ、お涙頂戴の話はこの際どうでもいい。それよりてめぇら、ちゃんと音
楽できるんだろうな…」
「それはもちろん。ここにおられる若い十兵衛君は昔、音楽をかじっていた事
があるそうですよ」
「ほほう、そりゃ期待できるな…」
ワクワクする山崎。
が、さっきからピクリとも動かない若い男。
「おい。さっきから動いてねぇけど、どうかしたか?」
山崎が聞いた時、急に口から血を吐く若い男。
「げぼはぁっ!!」
「ぐあっ!!」
この光景に驚く3人。
そして、手についた血を見て小刻みに震える若い男。
それを見て一言。
「何じゃ、こりゃあ!!」
某刑事ドラマの名セリフ。
同時に倒れる男。
「わぁっ! 大丈夫!?」
動揺する香緋。
「おい。しっかりせい、十兵衛君! 傷は浅いぞ!!」
「一体どうしてこんな事に…」
考える香緋。
すると、若い男のそばにはさっき山崎が投げつけた灰皿の一つが落ちていた。
「こ、これはまさか…」
「え? あ!? 俺!!?」
香緋と眼帯男に睨まれ、焦る山崎。
「だってさっき、社長が灰皿投げたでしょう。その1個が彼に当たったんです
よ!!」
「おい、マジかよ…」
山崎が呼びかける。
若い男の返事はない。
血の気が引く山崎。
「社長さん、うちの若い者をどうしてくれるんですか!」
「社長!!」
二人に迫られる山崎。
「うっ! とにかく救急車だ!! 審査はその後!!」
周りがあたふたする中、何とか若い男は一命を取り留める。
この事件をきっかけに、山崎は灰皿を投げるのは控える事を決意する。
だが、次の応募者のおかげで、その決意は見事に取り消される事となる。