カプエス
DJステーションシリーズ
『新・BOFストーリーズ』

ライブ6

作者 タイ米

 事務所に戻ってきた山崎と香緋。
「社長、まだ待たせてる人がいますから、急いでくださいよ!」
「おう、わかってらぁ!!」
 椅子に座る山崎。
「よし、次の奴。入れ!!」
 山崎の声と共に、室内に入る一人の格闘家風の男。
 ギターを持ってるとはいえ、赤い鉢巻に空手着の格好は、お世辞にも
音楽に携わるそれとは思えない。
 山崎も、その格好を見て灰皿を持ちかけたが、直前でそれを止めた。
 前回の行動を反省しての事だった。
「まず、名前から聞かせてもらおうか…」
「はい。俺の名はリュウ。真の音楽家を目指すべく、世界中を旅しており
ます」
「はぁ。で、ギターを持ってるようだが、何かできるのか?」
「はい。弾き語りを少々…」
 リュウのこの発言に、山崎は目を輝かせた。
 もしかしたら、響に代わる逸材を見つけたかもしれないと思ったからだ。
「よし。なら、その弾き語りを俺達に聞かせてくれ」
「はい」
 そう言い、チューニングを始めるリュウ。
 本格的なその光景に、ますます期待が高まってくる。
「では、始めます…」
「頼むぜ」
 リュウがギターを弾き始める。
 心地よいその音色に、しばし酔いしれる二人。
「う〜ん、いいですねぇ。社長」
「ああ。俺が求めてたのはこれだよ、これ…」
 そして5分後、リュウの演奏はまだ続いていた。
 演奏に聞き入っていた二人も、少し飽き気味になる。
 二人はひそひそ声で話し出す。
(おい、香緋。いつになったら歌いだすんだ!?)
(さあ…、もうすぐじゃないですか?)
 10分後、未だリュウは歌う気配を見せず…。
 だんだん、イライラが募る山崎。
 手には灰皿が今にも握られそうである。
 が、すんでのところで止める山崎。
 そして20分後…。
 リュウの演奏『だけ』は相変わらず続く。
 このままでは埒があかないと思った山崎はリュウに尋ねる。
「おい、いつになったら歌い始めるんだ!?」
 演奏を止めるリュウ。
「歌詞はまだ作ってません」
「は!?」
 リュウの言葉に耳を疑う二人。
「つ、作ってないって?」
「まだ、このメロディーは完璧ではない。完璧でない曲に詩はつけられない」
「じゃ、じゃあ完成してる曲を…」
「残念ながら、どの曲もメロディーはまだ完璧ではありません」
「てことは、詩がついてる曲は一曲も…」
「難しいものだな。曲を完成させるということは…」
 あさっての方向を見るリュウ。
 顔を下に向ける山崎。
 体が小刻みに震えている。
「へへへへヘ…」
「社、社長!?」
「ふざけんじゃねぇ、この野郎! 『弾き語り』といったら、ちゃんと詩の
ついた曲持ってこい!!」
 ついに堪忍袋の緒が切れたか、灰皿を所構わず投げつける山崎。
「わわわっ!」
 リュウもこの光景にはびびってしまった。
「早く逃げて!!」
 香緋の指示のもと、リュウは室内より逃げ出す。

 数分後、山崎は何とか平静を取り戻す。
「もう、社長! あれだけ灰皿を投げないって誓ったじゃないですか!」
「うるせぇ! 何が『弾き語り』だ! 同じような演奏を延々20分続けら
れたんじゃ、こっちの身が持たねぇだろうが!!」
「確かにねぇ…」
「で、次の奴はいるのか?」
「いや、これで全部です」
「へ?」
「言ったでしょう。金の卵が『所狭し』って。この超オンボロアパートじゃ
あれぐらいで満杯ですよ」
「何!? あれで終わりだというのか! だったら、今回の話はなかった事
に…」
 その時、香緋が困った顔をする。
「何だよ、その顔。まさか…」
「しちゃった。契約…」
「な、何ィ〜!?」
「仕方なかったんですよ。そうでもしないと、みんなオーディション受けて
くれないって言うし…」
「てめぇ…」
 山崎はむんずと香緋の胸倉を掴み、そのままアッパーで打ちあげる。
「てめぇはいっぺんドリルで死んで来〜い!!」
「ぎゃあ〜! それだけは勘弁!!」
 その時、部屋のドアが開く。
「何々〜? この騒ぎ?」
「相変わらずやな〜。お二人さん」
 ドラゴンプロ所属のシェルミー、一条あかりであった。
「てめぇら、何しに来やがった!」
「あのな、実はシェルミーおば…いや、姉ちゃんがええ話を持ってきてくれ
たんねんで」
「いい話…だと?」
「そう。とってもいい話…」
 シェルミーが不敵な笑いを浮かべる。

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