カプエス
DJステーションシリーズ
『新・BOFストーリーズ』

ライブ8

作者 タイ米

 スタジオ『ブラック・ノア』。
 『R・B』ことルガールプロデューサーは、とあるアーティストのレコー
ディング作業をこなしていた。
 そして、その日の分も全て終了させる。
「お疲れ様、ユリ君」
「ありがとうッチ! 本当ルガールさんには感謝してるッチ。私の『ボク
サーをKOさせるほどの音痴』を一発で治してくれるなんて…」
「いや、君はもともと声がいいし、才能があるからね。少し手を加えれば
売れると絶対思ってたよ」
「もう、ルガールさんったら!」
「ハハハ。じゃ、明日もよろしく頼むよ…」
「まかせて! それじゃあ、お疲れッチ!!」
 そう言うと、ユリはスタジオを出て行った。
 彼女の後ろ姿を見送り、視界から消えるとルガールは一人、溜息をこぼ
すのであった。
 そこに現れた一人の金髪の女性。
「どうかなされましたか? ルガール様。かなりお疲れのようで…」
「マチュアか。全く大変だよ、あの小娘をおだてるのは。今だって歌はさ
ほど上手くはないのに…。プロデューサーが私でなかったら、確実に死者
は出てたな」
「私も常時、耳栓を離しませんでしたわ」
 マチュアが言う。
 ルガールがあさっての方向を向き、つぶやく。
「フン、しかしわからんもんだね。世の中、何が売れるか…」
「確かに…」
「今の芸能界は実力じゃない。ビジュアル重視だ。あの小娘も容姿だけで
ランキング上位に喰い込んでいる。ま、こっちとしては楽でありがたいが…」
 しかし、ルガールの表情はどこかもの淋しそうな感じが漂っていた。
 そんな中、マチュアが切り出す。
「そう言えば、例のオーディションの件。続々と応募者が殺到しておりま
すわよ…」
「ああ、あれか。目ぼしいやつはいたか?」
「ええ。今、来ている中ではBOFと高嶺響というところでしょうか…」
「キムプロか…」
「はい。それと…」
 マチュアが一瞬溜める。
「ビッグ・ボス・バンド。通称BBB(トリプルビー)。最近出てきたビ
ジュアル+実力を兼ね備えたバンドです」
「トリプルビー?」
「ファンも熱狂的で、特に世の女性達を虜にするクリザリッドのボーカル
には、音楽界からもかなりの評価を得ています」
「なるほど…」
 ルガールがBBBの書類を受け取る。
「ビジュアル系バンドか…」

 ボーカル:クリザリッド(KOF)
 ギター:天草四郎時貞(侍魂)
 ベース:豪鬼(ストU)
 キーボード:ギル(ストV)
 ドラム:Mr.BIG(龍虎の拳)

「このドラマーもビジュアル系か?」
 ルガールがスキンヘッドのドラマーの写真を指差す。
「はい。一応……」
 ルガールが彼の写真を凝視する。
 化粧や見た目が濃い四人と違って、明らかに路線が違っている。
 というより、ビジュアル系とは言い難い。
 しかし、ルガールは一部の者にしかわからない、あるものを感じた。
「もしかして、彼はすごいのか?」
 ルガールが聞く。
 マチュアが返答する。
「私もそう思います」
 その後、しばらく沈黙が続く。
 そして、ルガールが静かに口を開く。
「うむ。これはまあ、これでいいか。彼が何に対してすごいかわからん
が…」
 そう言い、スタジオを後にしようとするルガール。
「どちらへ?」
 マチュアが尋ねる。
 振り向かずにルガールが答える。
「ロデムの散歩だ…」
「あの、それならユリさんが持って行っちゃいましたよ。『クロちゃん
か〜わいい! 家で飼うッチ!!』なんて言って…」
 ルガールの動きがそこで止まった。
 そして、体を震わせながら怒りの声をあげる。
「あの小娘め! 私のロデムを勝手に持っていき、事もあろうに勝手に
『クロちゃん』なんぞと名付けおって!!」
 ルガールの血管がプチプチ鳴っているのがマチュアの耳にも聞こえた。
 そして…、
「マチュア、取り戻すのだ! あの小娘からロデムを! 早く!!」
「は、はい〜!!」
 ルガールのすごい剣幕に慌ててスタジオを飛び出すマチュア。
 ルガールは気を落ち着かせるため、煙草を一服。
「フゥ。これでも、ペットには優しいんですよ…」
 誰もいないスタジオで一人つぶやくルガールだった。

 ドラゴンプロ、高嶺響に続くライバルのBBB。
 この強敵に、果たしてBOFはどう迎え撃つのであろうか!?

「クロちゃん、か〜わいい!」
「がる〜」
 その頃のロデム。
 ユリ宅にて、すっかり新しいご主人様に懐いているのだった。

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