カプエス
DJステーションシリーズ
『新・BOFストーリーズ』

ライブ10

作者 タイ米

 ライブハウス。
 中はさほど広くないが、すでに人はギュウギュウ詰めであった。
 その中に混じっているカップル(?)二人。

 高嶺響と矢吹真吾。

 同じ高校の二人で、響が真吾に一目惚れしたという関係だが、真吾は彼女の
性格を知ってしまってから、どうも苦手意識が抜けきれていない。
 このデートも響にしつこく付きまとわれ、嫌々ながらやっているような様子
だった。
 だが、そんな事など響は全く知る由もなかった。
「嬉しいわ。真吾さんとこうしてバンドのライブを見に行けるなんて…」
「は、はぁ…」
 浮かない顔の真吾。
 構わず響は続ける。
「真吾さんもそう思わない?」
「えっ、あ、はいはい! 俺もそう思いますよ〜!!」
 唐突に聞かれた真吾は慌てて答える。
「本当に!? 嬉しい!!」
 響は真吾の方にきらきらした目を見せる。
「え、そういうつもりで言った訳じゃ…」
「何か?」
 響の目が一瞬、鋭くなったように感じた。
 ビビる真吾。
「い、いえ! 何でもないです〜!!」
 そう言い、口笛を吹く真吾。
 それから、少し会話が途切れた。
 数分後、真吾が口を開く。
「そういや、今日出てくるBBBってどういう人達ですか?」
「さあ…」
「さあって…」
「チケットをくれた優しい人がいるんです。その人が見た方がいいって」
「へえ…」
 真吾はそう言い、回りの観客を見る。

 濃い。

 とにかく濃い。
 みんな何かしらのメイクを顔に施している。
 恐らく、メンバーのメイクを真似ているのだろう。
 ノーメイクのこちらが逆に浮いている感じだ。
 その時だった。

 ギター音とドラム音。
 そして、観客の大歓声。
「始まった!」
 真吾が呟く。
 ステージ上にはライトに照らされたBBBの5人が立っていた。
 ボーカルのクリザリッドがマイクを手に持つ。
「よく来たな、お前ら。今日はお前ら、僕共にとって生涯、忘れられない日に
なるであろう…」
『イエ〜〜〜ッ!!』
 観客の大歓声がライブハウス中に響く。
 真吾もこれほどまでのファンの熱さに戸惑いを隠せない。
 思わず、響の方を見る。
 だが、響はクリザリッドの方をずっと食い入るように見ている。
「響…さん?」
「いくぞ、お前ら! 宴の始まりだ〜!!」
『イエ〜〜〜〜ッ!!』
「……」
 大歓声。
 響は黙ったまま。
 しかし、明らかに様子がおかしかった。
 体は震え、今にも何かから解き放たれそうな感じだった。
「一曲目だ〜! お前ら…」
「……」
「ア・タ・マ・フ・レ・〜〜〜ッッ!!」
『イエ〜〜〜〜〜ッッ!!』
 観客のヘッドバンギング。
 そして…、
「イエ〜〜〜〜〜ッッ!!」
 響もついに歓声を上げ始める。
 そして、観客達と共にヘッドバンギングをする。
「ちょ、響さ…痛っ!!」
 響の頭が真吾の顔に当たった。
 しかし、それでも響の勢いは止まらない。
「こ、これは…」
 真吾は響を見て唖然とする。
 そこにいたのは真吾に一目惚れする彼女でも、シンガーソングライターとし
ての彼女でもない。
 BBBというビジュアル系バンドに心を奪われた彼女がそこにいた。


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