世界規模格闘大会FOWについてのレポート
第三稿
くぁああ、じめじめしたいやな朝だ。
と、感じていると言う事は、私はまだ生きていて、精神もまともだ。
ということで第三稿を書こうとおもう。
ビーフジャーキーは夕べのうちになくなっていた。
食われたのかどうかは分からないが、
あとでベーコンを置いてみることにする。
今日は前に書いたとおり私の屋根裏に住んでいる(と思われる)
あれのことについて書いてみようと思う。
私の思いつく限り、あれが出たのは、私が始めてFOWの会場に
潜入して帰ってきた日からであると思う。
これまで私はたびたび会場に潜入して取材をしてきた。
だが、私が始めてあそこに赴き、思ったことは筆舌にしがたい。
ひじょうに個性的であるとだけ書いておこう。
もう一つ書いておくべきことは、
あそこの会場はほとんど外界から遮断されてると言ってもいいと言う事。
まるで、一般人を寄せ付けぬかのようにである。
だが、そこでの暮らしはとても豊かだ。
選手専用のホテルや、商店もある。・・・なぜか吉野家もあった。
だが、交通の便は非常に悪い。
行くためにはクルーザーとかの船舶が必要だ。
私は幸いな事にヘリコプターの免許を持っていて、助かった。
ただ、ヘリを町に下ろすのに少々苦労したが・・
私はあの会場街に入るなり、まず、本物の出場者に取材をこころみたが、
ほとんどが無視された。されないものも自己PR文を言ってくるのみで、
いい結果は得られなかった。
そこで私は変化球から攻めてみることにした。
窓拭きの用務員に化けて選手の宿泊するホテルに三日間つとめたのだ。
これを読んでいる選手の皆さんには謝っておきたい。
とくに、私が皆さんの部屋を覗き見して撮影した事も素直に認める。
謝ろう。なんなら殴ってくれてもいい。
だが、それで様々な情報が得られたのも事実である。
私はホテル内で、暦、シチリアンマフィア、香港マフィア、兵器商、
などの、いろいろと噂のある人物らを撮影した。
今後、やはり出場者に関してよく調べたい。
その他にも、銃刀法にひっかからないのかと思う人間や、
絶対にこいつは人間の領域を超えているな、と思える方々もいた。
それもたくさん。
また、もうひとつよくわからなかったことがある。
私が昼食のために入った吉野屋で、やたらと騒ぐ大量の・・・・
大量の・・・・・
ひ、ひまわりに囲まれる少女が牛丼を食っているのをを見た・・
瞳がやたら紅く輝いており、あの瞳に私は少なからず恐怖感を抱いた。
少女は牛丼を食べながらひまわりと会話しているようにも見えたが、
・・・・・・ま、まあ気のせいであると思う。
しかし、あのひまわりはなんだったのだろうか?
今から考えてみると不思議で仕方がない。
もしかしたら、私の家の屋根裏に住むあれもひまわりでないかと
最近思いつつある、が、ひまわりはネズミや肉は食わない。
・・・・私も焼きが回ったようだ。
それと、吉野家の牛丼はとてもとても美味しかった!
そこらのチェーン店の吉野家よりも美味い。機会があればまたいきたい。
吉野家を出た後、私は人間観察がてらふらふらと町をさまよった。
そこで、私は問題の人物に出会う。
あの少年の髪の色はこの際つっこまない。それは個人の趣味だと思う。
銀髪に緑だからと言ってどうと言う事はない。
だが、あの頭についていた鍵穴はなんだったのだろうか。
あれは不気味だった。
その鍵穴少年は私と同じようにふらふらと一人歩きしており、
私がベンチに腰掛けていると、彼と目が会った。
いや、彼はサングラスをしていたので事実、目があったかどうかは、
分からないはずなのだ。なのに、私は目があったと認識してしまった。
何故だろう。やはりあの町の不思議な雰囲気のせいなのだろうか。
だが、その瞬間、私は彼と目があったと認識し、
私の背筋に異常な悪寒と恐怖が走ったのも事実なのだ。
牛丼を食っていた少女の瞳ともまた違った恐怖である。
そしてその時、彼は一瞬、ほんの一瞬だったが、嘲るようにくすりと・・
笑った。
ああ、ああ、今思い出しただけでもぞっとする。
そうだ、あれからだ、あれから私は半ば狂ってしまったのかも知れぬ。
それからその少年はその場を去ったが、私は呆然と数時間、
ベンチに座っていた。
それがどうしたと思われるかもしれないが、そのときの感覚と
屋根裏のあれとの感覚が妙に似ている事が気にかかるのである。
まあ、関係ないかもしれないが。
そして、翌日。ホテルの皆さんにお別れの挨拶をして、帰ってきた。
私が思うにあの町はたしかに個性的であり、不思議な町である。
だが、その個性的な感覚が妙に私の心をくすぐるのだ。
また行ってみたい。
そうそう、私は先ほどから会場の事をあの町、会場としか書いていないが
たしか名前はトゥエルヴムーンシティだったと思う。
が、場所はあえて書かないでおく。
私があの場所に好奇心を覚えるのは、私のドサ回り経験で鍛えられた
鋼の探求意欲のためであって、普通の人が行っては神経が参ると思う。
それでも、けっこう楽しいと思う人もいるかもしれないので、
探したい人は探してみると良い。
気に入るかもしれない。
さて、と。もうそろそろ仕事が来る頃なので今日は終いにする。
私は明日も生きているだろうか。狂ってはいないだろうか?
・・・不安だ。
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