世界規模格闘大会FOWについてのレポート
第八稿
今回、私はこの文章を手書きで書いている。
松前に頼もうと思ったのだが、ジャミングがでていて連絡できない。
だから、遺書代わりに、このレポートにピリオドを打つ。
今、私がいるのはトゥエルヴムーンシティ。そこの配管の中。
FOWの会場であった場所だ。
だが、今から約二時間ほど前から、
とある人々の血みどろの殺し合いの場と化している。
彼らは暦である。それともう一つは大会参加者たちだ。
ことは、一週間前までさかのぼる。
私があるひじょうにおしゃべりな大会参加者に聞いて、
この大会は暦が動いている事がはっきりした。
また、例のハッカー友人から、サー・ダッシュウッドの銀行口座に、
大量の使途不明金となんらかの特定人物に渡した賄賂らしきものの
存在を確認したため、私は一目散に倫敦へ再び飛んだ。
新聞記者という名目で、取材と称してダッシュウッド邸に入り、
当のご本人と対面した。
考えてみるとすごくすごく無謀で軽率だったのだがいたしかたない。
始めは最近の女王の近況とか銀行株の話をしていたのだが、
唐突に話を私が知りたかった事に持っていき、さらに追求したためか、
怒りをかった。
いきなり数人の男女に取り囲まれて、銃口を向けられた。
それからは立場が逆になり、私が尋問された。
どうやってここまで調べたかに始まり、私の氏名年齢住所電話番号就職先
なにからなにまできかれて、ようやく私が質問する事を許された。
まず、暦の目的。わかりきっていたことだが世界革命と答えた。
次に、彼の暦での役職。彼は十二人委員会の四月というものに
入っているそうで、だいたいやることは資金調達、援助であると言う。
最後にFOWの目的。ところが、これについて彼は答えを、
出し渋ったのである。
今まではひょいひょい答えてくれていたのにだ!私はしつこく追及した。
が、やはり駄目だった。
ので、論点を変えて、娘さんの話に切り替えた。
途端、ぶちきれた。
貴様のような下賎な輩に私の娘のことを言う筋合いはない!だのなんだの
言われて、挙句の果てに監禁された。
それでそれから数時間、天井裏に飯をおくのを忘れていたなどの、
他愛のないことを考えていたら、ばかでかい・・多分・・
犬、だと思う。それがドアを壊した。
犬を呼ぶ少女の声が聞こえたのだが、私はあまり気にせずにドアから出て
タクシーを拾い、空港へ。それから予定を繰り上げて成田行きの、
チケットを買い、日本へとんぼ返りした。
自分でもあそこまで行動力があるとは思っておらず、驚いている。
それからダッシュでうちに帰り、まずしたことは、
天井裏の確認と、飯がないのを確認したら、奮発して、成田で買った
崎陽軒のシュウマイをおく事だった。
そんなことをやってる場合ではなかったのだが、その時、私は異常に
混乱していて、はっきりいっていつにもまして頭がどうかしていたので、
いつもの日常をやり始めるしかできなかったのである。
それから、今まで唯一連絡を取っていたハッカーと松前に、
報告をして、自分の原稿の貸し金庫の暗証番号を教えた。
それから、ナップザックに荷物を詰めて、今すぐにでも大会会場に、
いける準備をした。
それから、ふと最近書いていなかった原稿に手をつけ始めたとき、
突如、銃弾が飛んできたのだ。それも数十発。
誰が撃ったかは知らないが、おそらく暦関連であると思う。
銃弾がやむ頃には原稿を書き終え、例の、すきとおる少女を見かけた。
それから港へ行き、ホバークラフトを借りて、
トゥエルヴムーンになんとかつき、今、配管を通って進んでいる。
これがおそらく最後の手記だ。
さっき立ち聞きした所、暦の連中は大会出場者の思念を利用して、
何かとんでもない計画を実行しようとしているらしい。
半端ではない、地球レベルの騒ぎである。
私は今までこの大会の主旨を、要人を集めて一挙に謀殺、とか、
新人戦闘員の探索だと思っていたが、甘かった。
よもや地球レベルで物事が進んでいたとは!驚きである。
今から、この文書を、ビンに詰めて海に捨てる。
海流に乗れば東京に流れ着く。いや、ついてほしい。
奇跡を信じる。
この真実をたとえ万人には教えられずとも、誰かに教えるのが
悪い事であろうか!?
違う。私たちには権利がある。たとえ狂っていようとも、
真実は伝えてもいいはずである!
今までの原稿を長い目で見守っていてくれた方々、
もはや、一般人であろうが大会関係者であろうが、
狂人でも聖者でも愚者でも罪人でも暦のやつらでも構わない。
こういう事実があった。ということだけを覚えておいてほしい。
私はこれからたとえ屍になってでも隠れてでも続きを見る。
私たちには知る権利があるのだ。
今までのご拝読感謝する。
二十一世紀某月某日午前二時三十分 葎純一
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