トリプル・ディザスター

・・シマハモエテイルカ・・


A国のタカ派で名高いマルシュは、自分がナチにでもなったかのような、
錯覚すら覚えていた。
「島は燃えているか?」
「はっ!徹底的にやっております。愛護団体の切望で残した、
 中央部の森林があるだけで、あとはきれいさっぱり焼け野原です。」
下士官は、島を指差した。
「ご覧ください。」
そこには、いたるところに爆発や銃撃の傷跡をつけられた、
島の姿があった。
始めに集中攻撃が仕掛けられた砂浜など、大地が露出していた。
あれから、半日。
軍艦によるミサイルの波状攻撃。爆撃機で一部を残しつつ絨毯爆撃。
さらに、これから兵を上陸させる。
「たかが一人のテロリストにやりすぎじゃないですかね?」
「黙れ!たかが企業のボスに戦いの何が分かる。ロット!」
マルシュは軽蔑の混ざった眼でロットを睨んだ。
ここで、ちょっとこの戦争屋・・もとい、ロットについて話そう。
彼は一代で「R・J・Hコーポレーション」なる、
兵器や軍事関連の一大企業を築き上げた男だ。
彼の名は各国上層部に知れ渡っており、
「戦争あるならRJHあり。」
と、までとある国家の首相にいわせた男である。
さて、話を元に戻さなければなるまい。
「そもそも、我が軍の優秀さは、内戦で分かっている。
 足りなかったのは物資と兵器の数のみなのだ。数のみだ!
 それが足りた今、我が軍は無敵!上陸した特殊部隊が、暦を始末する。
 それで私も、出世間違い無しだ!うわはははは!」
周囲で点呼や指示をしていた下士官たちが、マルシュに、
「やっぱりそれかよ。」という視線を向けた。

爆撃、雷撃が一段落着いたようで、葎とプロトは穴から顔を出した。
森に隠れたのはいいが、とにかく、二人は訳が分からなかった。
なんで遭難者にA国の軍隊が力を入れて攻撃してくるのか?
葎は思った。A国は暦とでも繋がっているのか?
プロトは思った。事故って船をふっとばしたのが見られたのか。
とにかく、二人ともこの久々にできた友人に、迷惑をかけたく無かった。
「・・・どうします?」
「いや、どうしましょう。」
「・・・・・・・オレはやっぱ、降参だと思うんですが。」
「ま、普通そうですね。」
と、いうわけで、あっさり降参する事にした。
まあ、戦闘をする気が無いのだが。
白旗は無いけれど、両手を挙げて行けば、意思表示にはなるだろう。
がさごそと草を掻き分け、進んでいった。
しばらくして、防弾チョッキやヘッドギアをつけた、
なんかいかにもっていう感じの一団に出会った。
彼らは、自動小銃を携えていた。
二人は英語で言った。
「STOP!T’m sorry.」
日本語訳、止まれ!ごめんなさい。
いまいち意味は分からないが、通じるとは思った。
だが、甘かった。
「コリュターノ バイグレージ キエンス?」
「!?」
なんと、彼らは英語を使わないばかりか、独自の言語で会話していた。
やばい・・・日本語もどうせ通じまい・・これはやばい!
「キエンス?」
「あ、あ、あのお・・降参を・・」
葎は必死で訴えたが、通じない。
「サーグレッディ!イジョマニョ!」
思わず、プロトは叫んでいた。
「逃げろ!」
走り出した瞬間に、銃弾が連射され、葎のほほをかすめた。
二人は、キャンプに戻って、穴に潜り込んだ。
・・・・・困った事になった。
言葉が通じないんじゃ、どうせ言っても無駄だ。
それに、よく考えてみれば、プロトのエネルギーミサイル、
あれが宣戦布告と見て取られてしまっているのだ!
これじゃ、どっちにしろ、生きる道が無い。
「・・・葎さん、なんか武器持ってます?」
「護身用の自動式の銃を一丁だけ。」
「一丁・・・」
それじゃ、勝てるはずが無い。
今さらながら、プロトは途方にくれてきた。
上空を、また一機、ヘリコプターが通り過ぎていった。
熱い。


 


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