トリプル・ディザスター

・・3によるEND・・


「・・・・」
運び込まれた宇宙服を、マルシュは終始無言で見つめていた。
思ったよりも軽いようで、なんとか笑いガスが抜けた隊員が、
緊張しながら服を身にまとっていた。
「どうですか、これは!」
ロットが、後ろでにこにこ笑っていた。
神経を逆なでする笑みだ。
「素晴らしい、と、言いたいな・・・・だが、な。」
今の状況はマルシュにとって屈辱以外のなんでもなかった。
自分が世界に誇ると思っているA軍すら、戦争屋とか米軍の力を得ぬと、
赤子も同然になっているとは・・・・!
「これで、この作戦が失敗した場合。
 ロット・J・ハワード。三つ目のディザスターは貴様だな・・」
「いや、どうでしょう?」
ロットはやはり、にたにた顔。
「ひょっとしたら、それはあなたになるかもしれませんよ?」

輸送ヘリから影が三つ、深夜のクラナ島に降ろされた。
宇宙服である。
さすがに、ジャミングやガスの影響を受けているようには見えない。
「なんだ、ありゃ?」
「あれは新型の宇宙服ですよ、けっこう前に取材しました。
 ようやくできたんだ・・」
物陰から、二人のディザスター・・葎とプロトが木陰から覗いていた。
ブウン、という機械音を立てて、紅い点がその木に点いた。
瞬間、木がはじけた。
「どわあ!」
「なんだ?ハンマーチェーンか?」
その通りであった。作業用のチェーンも、使いかた次第で武器となる。
葎は自動小銃を撃った。直撃して火花が飛び散る。
びくともしてない。
また、紅い点が点いた。
「くっそ!」
チェーンが飛んできて、岩を破壊した。
さらに、宇宙服も自動小銃を携えている。
ぱりぱりぱりっと軽い連射音がして、土煙がそこらじゅうに上がった。
「畜生!夜だっていうのになんでこんな狙いが正確なんだ?
 レーダーは駄目なはずだろう!」
プロトがエネルギーマグナムを撃ちながら叫んだ。
それもそのはず、宇宙服は、サーモグラフィーを使っていたのだ。
二人は森の中に後退した。
そこにも容赦なく弾丸が浴びけさせられる。
さらに、執拗に二人を三人の宇宙服がおってくる。
二人は必死で走り続けた。
今度は、なんか明るい物が飛んでくる。
バズーカの砲弾だ!
「くそう!あいつら無茶苦茶だ!」
「なんなんだ、こりゃ!」
走る二人の真横で爆発が起こった。
二人は、森のさらに奥へ奥へと追い詰められていった。

それから、四時間後。
島の中央部で悲鳴が聞こえた。この上ない悲痛な叫び声だった。

さらに、一時間後。
A国(レンタル)師団司令艦の中に、久々の吉報が舞い込んできた。
「宇宙服が!特殊部隊員が帰ってきました!」
おお!と、歓声が上がった。
そこには、二人の宇宙服が、二人の男をつるし上げている勇姿があった。
思わず、マルシュは涙ぐんだ。
「よくやった!君たちはゆっくり休みたまえ。」
二人の宇宙服は敬礼して、司令室から出て行った。
マルシュはまじまじとその男二人の顔を見た。
この上なくボコボコにされている二人を見て、思わず笑みがこぼれる。
「これで・・ようやく、終わった。大統領に報告だ。」
受話器を取って、ホットラインウェーブにあわせる。
あちこちから、状況終了の声が聞こえる。
「ええ、終わりました。
 A国を守ることができました。そうですか、閣下は最後まで、
 あきらめなかったと、ああ、そうですか!
 そのお心を民が忘れない事を祈ります。」
受話器を置く。ため息をつく。終わった、すべておわ・・
「宇宙服が脱走しました!ボートを取られてます!」
急な大声に、マルシュは卒倒しそうになった。
ロットが呟いた。
「逃げられた・・」


 


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