世界最強に挑戦!
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「ふぅ、ゴチソウサマ」
満足げにそう言いながら自分の後ろを歩いてくる夏香に、軋琉は半ば呆れていた。
自分がかつて所属していたチームの仲間にも結構食べる人間がいたのだが、夏香の食欲はそれを上回っていた。
思わぬ出費に軋琉は敵に塩を送りすぎたかとも思っていた。
「ねぇ、一体どこまで連れてく気よ?」
そんなことなどお構いなしに、能天気な声で夏香は軋琉に尋ねる。
しばらく歩いて軋琉はぴたりと立ち止まると、道路の右側の方を指差した。
「ほら、あそこだ」
「えっ、どこどこ?」
軋琉の指差した方向に夏香は顔を向ける。
すると、そこには周りを壁のように生えそろっている街路樹に囲まれたグラウンドのような新地があった。
広さにしてサッカー場くらいの面積、外からも見えにくく、これから大暴れをするにはもってこいの広さである。
「ここは、ある格闘技大会の試合会場として使われる予定だった場所だったんだ。会場は別のところに決まったけどな」
「それって『FOWvsNOB』?」
「その通りだ。昨日俺がぶちのめした暦の下っ端も、その格闘大会に出場する予定の格闘家達のデータを調査するためにここに来てたんだとよ」
「ふぅん……暦の連中も同じことを飽きずによくやるわね」
「そう言うこった。さあ、ここなら周りに被害も及ばないし、広さも十分。文句ないだろ?」
「ふっ、そうね。地盤も少し固まってるみたいだから、動き回りやすそうだし」
そう言うと、夏香は軋琉より先に新地の中に飛び込んでいった。
「さあ、早いとこ始めようよ!」
壁のように生えている木の向こう側から呼びかける夏香に、やれやれといった感じでうっすらと笑みを浮かべると、軋琉もゆっくりと新地の中に足を踏み入れた。
夏香は腕を組みながら仁王立ちで軋琉を待ち構えていた。
「ふふふ、この日を待ってたよ」
「改めて聞くが、何で俺と戦いたがるんだ?」
「フッ……簡単なこと……」
眼鏡を指で軽く押し上げると、夏香は右手で握り拳を作り、軋琉に向かって突きつけた。
「私はただ単にあんたと勝負をしてみたい。世界最強の暗殺者と言われたあんたとね」
「世界最強って言葉に、こだわってるのか?」
「当然!……私に無断で……世界最強は名乗らせねぃ!」
第6話に続く
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