世界最強に挑戦!
10
「どうしたの? 喉なんか押さえて」
「久しぶりに興奮してきてんだよ……喉の傷が疼いてきたんだ」
「ふうん……それって褒め言葉として受け取っていいのかな?」
「最高の褒め言葉だよ。お前さんとなら、もっと本気で勝負ができそうだ」
そう言うと、軋琉は腰を少し落とし、初めて夏香に向かって身構えた。
「感謝しろよ……俺に身構えさせるやつなんて、そうそういないからな」
その言葉と共に、軋琉の全身から闘志とも殺気とも取れるオーラのようなものを、夏香は感じ取った。
「フフフ……そうこなくっちゃね。こっちも本気の出し甲斐がないよ」
夏香も同様に低く身構え、軋琉に負けるとも劣らぬオーラを発すると、鋭い目つきで軋琉を睨みつけた。
僅かに傾けられた体から、怪しく殺気が迸る。
夏香の変化は、対する軋流にも真剣を強いていた。
「(…なるほどね。これが『疾風怒濤の葉月か』…)」
蛇の道は蛇。
軋流も当然その名に無知ではない。
「(…にしても、こんなに出来る奴だったてのは噂以上だな…)」
軋流はつまらない興味から予想外の死闘に巻き込まれたことに若干の後悔を覚えた。
とはいえ、目の前に殺る気満々の敵が立っている以上、相手をしてやるより仕方ない。
しかし、軋琉にはそれ以上に、かつて自分の喉を傷つけたタウティほどの実力の人間と戦えることに高い高揚感を覚えていた。
自分の喉の傷が疼くのが何よりの証拠……
「こっからが……本番だ……」
「望むところよ……」
互いにフッと笑い、それと同時に、姿が消えるくらいの高速移動からぶつかり合おうとした瞬間だった。
第11話に続く
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