外伝 F・O・W
〜忘れ得ぬ光〜
第6話
作者 かみぃゆ
| 崩壊後、日本の国は七つの都市をそれぞれ3〜7の区域に分別した。 成田(第5区)・新宿(第7区)・渋谷(第3区)・東京(第3区)・大阪(第4区)・北海道(第3区)・九州(第6区) 何故、こういうことになったのかというと。日本の場合、崩壊前の全土の実に半分以上が海に沈んでしまったからである。 予測しきれなかった事態に政治の要人達のほとんども死亡した。(これも暦の作戦の内だったいう説もある。) 残った人々が、弱々しく変貌した日本をそう新しく呼んだのだ。 そして、ここは第2大阪―。 外伝F・O・W 第6話 「似て非なるモノ」 黒い拳法着に身を包んだ白髪の男は、出されたコーヒーをすすりながら呟いた。 「そうですか・・・。政樹さんのところには柳さんが来ましたか。」 クッションの硬いグレーのソファに越し掛ける白髪の男と、その男に背を向けながら書類の整理をする白いジャケットを羽織って歳よりも若く見える茶色の長い髪を後で束ねた中年の男がそれに答えた。 「ああ、正直、びっくりこいたね。全然、歳のとってねぇ、”惨劇”前の柳がいたんだからな。思わず飛びつこうかと思ったぜ!へへ、あっちの方はまだまだ現役だからな〜♪」 軽い感じの男『政樹』は笑いながら言った。 「で、あんたんとこには”あずみ”か…、」 「えぇ、」 政樹は書類仕事の手を止め、独り言のように呟いた。 「…また、何かが動いてるみたいだな…。また始まるのか、また…」 しばらく黙ったあと、政樹は振り向いて白髪の男に言った。 「まだ、戦えるかい?龍黄さん」 彼は右手に持った木の置物を『バキッ!』っと音を立て握り折った。 そして、その口元に笑みを浮かべ答えた 「まだ…現役ですよ!」 同時刻、第5新宿―。 「どっからどう見ても、夏香だが・・・。」 ”夏香”は義仲の目を見ず、その視線の先は遠い先にあるようだ。 「仏滅の者ですが。日向義仲さんですね?治安保持の為に、この少女を見つけたらご連絡をいただきたいのです。」 声も、姿も、全てが夏香と一緒だが、決定的に違う口ぶり、ロボットのような素振り、…なにがどうなっているのかは解らないが、こいつはよくできた人形だ。 義仲は差し出された写真を受け取った。 「これは…あんたらの”元・総帥”じゃないのか?」 「重犯罪者です。」 (これだけの用件ならば、何故、夏香の偽者を使う?なにか他に意図があるはずだが・・・) 「ちょっと、いいかい?」 「なんでしょうか」 義仲は『夏香』の顔を伺い慎重に尋ねた。 「あんたの名は?」 「8月です。」 一枚の写真を覗き込む政樹 「俺のとこに来たのが5月…、で、龍黄さんのとこに来たあずみが2月か。誰か他の奴のところにも来ているはずだ・・・他の『10人』が。仏滅、暦…もちろん関係バリバリなんだろうなぁ。 そして、この女―」 一人の少女の写真の下にはこう見出してある 『見掛けたらご一報を。名は 石澤 梨華 』 第4成田― リラックスチェアーに腰を掛け、ぼんやりと窓の外の景色を眺める髪の長い中年の女性。 ずっと、窓の外ばかりを見ている。 「もうちょっとで思い出せそうなんだけどな。」 寂しそうに彼女は窓の景色に話し掛けた。 『コン、コン』 彼女のドアがノックに響いた。 「どうぞ。」 彼女は玄関先を見ずにそう言った。 『ガチャリ』 そこには、赤い髪をミツ編みにした緑のトレーナーを着た少女が立っていた。 「涼子・ライトスターさんですか?仏滅の者です。」 その瞬間、彼女の周りの空気が止まった。それは、彼女だけの感覚だが。 「涼子・ライトスターさんですね?」 チェアーからぼんやりと立ちあがり赤い髪の少女に尋ねた 「涼子…?涼子と言うの?私は…」 なにかが、静かに静かに動き出していた。 「灰原 希美の居所は?」 「第3成田に絞られました。」 「…、あの片目の女のいる区ね・・・。ふふ、見つかると厄介だわ」 「いかがします?飯高様。」 「いいわ、そこもアダムに任せましょう。12月と9月は送り込んだ?」 「ハイ、麻生夏香、三崎小次郎の両方に送りました。」 「ふふ・・・上出来・・・」 続く |