餓狼伝説
〜狙われた狼〜

作者 タイ米


 ギースタワーの階下が異様にうるさくなり、一人の男が
目を覚ました。

 ビリー・カーン。

 言わずと知れた、ギースの用心棒。
 ギースが、今まで数多くの修羅場を乗り越えてきたのも、
この男の力が強く、ギース亡き後のハワードコネクション
がサウスタウンでまだ大きい顔をしていられるのも、彼の
貢献が大きかった。
(ギース様の幻影が、俺にこう言ってたのさ。この街を守
れ、と。だから、ギース様に成り代わり、この俺がサウス
タウンを守ってやる!)
 彼の得物である三節棍をギュッと握りしめる。
 何者かがこちらに近づいてくる。

 一人、二人、三人。

 どれを取っても只者ではない。
「そこのてめえら、止まりな!」
 ビリーが棍を下に向け、3人の行く手を遮る。
「ビリー・カーン…だな?」
 獅子を思わせる金髪の男が、口を開いた。
「俺の名を知ってるとはな。てめえら、何者だ!」
「この街を支配する者…」
「名前を聞いてるんだよ! 初対面の奴には名を名乗る。
世界共通の一般常識だぜ?」
「フン。お前から一般常識を教えられるとは思わなかった。
まあいいだろう。自己紹介だ…」
 金髪の男が一歩、ビリーに近づく。
 廊下が真っ暗だった為、相手の顔が鮮明に見える。
「俺の名はレオン。この大柄なのがオオトモで、ネクラな
長髪男がディンだ」
 金髪の男、レオンがメンバーの自己紹介をした。
「で、何しに来た。どうやら下が騒がしいようだが?」
「単刀直入に言おう。このタワーをいただきに来た」
「!?」
 レオンの言葉によって、ビリーの棍を持つ手にさらに力
が入る。
「つまり、俺を倒しに来たわけか?」
「そういうことだ。まあ、あんたが無条件で俺達にこのタ
ワーを譲るってんなら話は別だが?」
「冗談じゃねえ!!」
 ビリーは唾を一つ、横に吐いた。
「このタワーはギース様そのものだ! 俺がてめえらみた
いな輩から、ここを守るのも仕事の一つだ!!」
「ギース様そのものか。いない奴のタワーなんざ守ってど
うするってんだ」
「るせぇ! てめえらには関係ねえだろ! それよりさっ
さとかかってこい! こっちは早く寝たくてしょうがねえ
んだからな」
「安心しろ。すぐに眠れる…」
 すると、レオンとディンは後ろに退き、代わりに大柄な
男、オオトモが前に出てきた。
「ケッ。デカブツ一人が。俺の相手になるとでも思ってる
のか!?」
「やってみな?」
 ビリーが構える。
 オオトモは無言でビリーの元に近づいた。
(ヘッ。近づいて、自分の間合いにしようってんだろうが、
生憎…)
 その時、ビリーの三節棍がオオトモの胸めがけて襲って
きた。
(そこは俺の間合いだぁっ!!)
 完全に棍がヒットしたと思われたその時、オオトモはビ
リーの棍の先端を手で抑えていた。
「!?」
 必死に棍を取り戻そうとするが、相手の握力がかなり強
く、そう簡単には戻らない。
「チッ。野郎がぁっ!!」
 ビリーが無理矢理引っ張ろうとした次の瞬間、彼の体は
宙を舞っていた。
 そして、反対側の地面に叩きつけられる。
「グアッ!!」
 すぐに起き上がったが、その時にはオオトモがビリーの
棍を持っていた。
(な、何て馬鹿力だ!!)
「おい、返してやれ…」
 すると、レオンの方から声が聞こえた。
 オオトモはビリーに黙って棍を投げ返した。
「どういうつもりだ、てめぇ!!」
 ビリーは怒鳴った。
 この時、初めてオオトモが口を開いた。
「この現実が全てだ。俺とお前の力量差が、今のやりとり
の中に全て集約されている」
 ビリーは完全に相手に嘗められていた。
 彼の頭の中の理性がキレかかる。
「ケッ。ちょっとぐらい馬鹿力だからっていい気になりや
がって。俺とてめぇの力の差がどんなもんか、見せてもら
おうじゃねぇか!!」
 今度はビリーが突進してきた。
(当たるすんでのところで、棒を掴むつもりなんだろうが…)
 突如、ビリーが棒高跳びの如く、棍を軸にして上空に飛
んだ。
(甘ぇっ!!)
 そして、ビリーが棍を回し始める。
「強襲飛翔棍か。オオトモの前では同じ事だ…」
 レオンが呟く。
 しかし、ここでビリーは予想外の行動を取った。
 棍の回転数がどんどん増していき、やがてそれは炎を生
むまでになった。
「ほ、炎!?」
 レオンが叫ぶ。
「その巨体でこれが防げるか!? 超火炎旋風棍!!」
 棍から生まれた炎の輪が、オオトモを襲った。
「ヘッ。こんなもんか!」
 着地するビリー。
 そして、レオンの方に向く。
「どうだ。俺だって、昔とは違うんだ。技の応用くらい、
しっかりやってらぁ!!」
 しかし、レオンはこの状況でも動じない。
「そうだな。お前のその技の研究具合は誉めておこう。だ
が…」
 その時、ビリーの頭を、後ろから何者かが鷲掴みにした。
「何!?」
 ビリーが必死になって後ろを見る。
 そこには火だるまになったオオトモがいた。
「て、てめぇ!!」
「ハッハッハ! 残念だったな。オオトモのタフさは人間
のそれを遥かに凌駕していてね。お前の炎一発では到底、
意識は刈り取れんよ!!」
「ぐ、うおぉぉぉ!!」
 ビリーが叫ぶ。
 彼の体に炎が付着する。
 それに加えて、化物じみたオオトモの握力が、ビリーの
頭部にジワリジワリとダメージを与えていく。
「て、めぇら!!」
 棍をしっかりと持つビリー。
 そして、後ろに向かって、オオトモの体を突く。
 力の限り突く。
 だが、それでもオオトモの攻撃は止められない。
「ぎ、ギース様。ギース様ぁぁぁぁぁーーーーっっっ!!」
 叫びと共に、渾身の一撃がオオトモを捉える。
 しかし、それがビリーの最後の一撃だった。
 オオトモが手を離し、廊下の地面に強く体を打ちつける
ビリー。
 二人の炎はすっかり消えていた。
 オオトモが二人の元に戻る。
「炎はどうだ?」
「心配ない。予想以上のダメージではあったが、これから
の計画には何ら影響はない」
 レオンの問いにそう答えるオオトモ。
「そうか。カレンとレイラも先程、任務を終わらせたそう
だ」
「全ては予定通り…というわけか」
「そう。我々が全てを手中に収める計画のな…」
 レオンは不敵な笑みを見せた。

 サウスタウンを巻き込む一大事件。
 遂にその幕があがる…。


 
第3話に続く
第1話に続く
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