餓狼伝説
〜狙われた狼〜

作者 タイ米


 サウスタウンから少し離れた片田舎。
 レストランなど、店が建ち並ぶ大通りに、少しばかり
人だかりができていた。
 その中心に位置する男二人は、互いに向き合い、拳を
ぶつけている。

 いわゆるストリートファイトだ。

 一人は大柄な喧嘩自慢の男。
 もう一人は、体格は相手より一回り小さい、帽子を被
った金髪の男。

 見かけだけなら、大柄な男の方に分がある。
 だが、ギャラリーの賭け率は圧倒的に帽子の男に軍配
が上がっていた。
 彼らはわかっていたのだ。

 この二人には圧倒的な力の差があると。

 そして、それは戦いあっている二人の男達にも、わか
っていた。
 大柄な男の方が勝負をかけにきた。
 一撃必殺のKOパンチを帽子の男に仕掛けたのだ。
 だが、すんでの所で、帽子の男はそれを避け、隙に大
きい一発を相手の顔面に叩き込んだ。
 大柄な男はそれ一発でダウンをし、そのまま立ち上が
る事はなかった。
「OK!!」
 帽子の男が、自らのトレードマークである帽子を空に
高々と上げる。
 次の瞬間、彼に賭けていたギャラリーは歓喜の声を上
げた。
「チ…イィッ!!」
 大柄な男が、近くの仲間の肩に寄りかかり、何とか立
ち上がる。
「俺は、ここらじゃ喧嘩は負けなしだったんだがな。や
っぱ、英雄の名は伊達じゃねえって事か」
 完敗をあっさり認める大柄な男。
「いや、あんたも手応えはあったぜ。リベンジならいつ
でも大歓迎だ!」
 そう言い、付き添いと思われる少年から、帽子とファ
イトマネーを受け取り、その場を去っていった。

「マスター。ホットドッグを二つな」
 ホットドッグ屋で先程の帽子の男は、昼飯を買った。
 そして、購入したホットドッグの一つを少年に分け与
える。
 歩きながら、彼らはホットドッグを頬張った。
「しかし、テリーも人が悪いよなぁ…」
 少年がいきなり愚痴をこぼす。
「ん、何がだい? ロック」
 テリーと呼ばれた男が少年、ロックに尋ねる。
「何がって、さっきのストリートファイトだよ。戦い終
わった後に、よくもそんな心ない事を言えるなって」
「心ない? 冗談! ちゃんと手応えはあったぜ。ここ
ら一帯の喧嘩自慢と呼ばれる理由も、うなづけるぜ」
「嘘つけ。その割に奥義は一つも使ってなかったじゃな
いか」
「奥義を出す出さないが強さの指針じゃないさ。それに
ストリートファイトは拳のぶつかりあいを楽しむ場だ。
いわば、戦士達の会話ってやつかな」
「そんな…軽い感じか?」
 ロックはテリーの言う事がイマイチわからなかった。
 そんなロックの頭を、テリーは笑いながら撫でる。
「ハハハ。ま、お前にもそのうち、わかる日が来るって」
 テリーはホットドッグの最後の一欠けらを口に入れ、
噛んで飲み込むという動作を、ハイペースでこなしてい
った。
「さて、これからどうするかなぁ!!」
 テリーが背伸びをしたその時だった。

 殺気。

 振り向き、テリーとロックは即座に飛び退いた。
 テリーの鼻の先には、封筒の角があった。
 もし、飛び退かなかった時はその角で突かれていたか
もしれない。
「食後の運動をさせるには、少し早過ぎないか?」
 テリーが相手を見る。
 そこには、先日、ギースタワーを襲った金髪の女のカ
レンがいた。
「これは失礼。かのサウスタウンの英雄、『テリー・ボ
ガード』氏の実力を生で拝見しようかと思いまして」
「あんた、俺と戦う気か?」
「いえ。今日はこれを渡しに来ただけです」
 カレンは封筒をテリーに渡す。
「これは?」
「キング・オブ・ザ・ファイターズの招待状です」
「な!?」

 キング・オブ・ザ・ファイターズ

 世界規模で開催される異種格闘技大会だが、実情は裏
社会の実力者が何かの陰謀の為に利用する、いわば、い
わくつきの大会である。
 しかし、ここで一定の成績を挙げた者は、間違いなく
世界で有名になれるので、格闘家への人気は、それでも
衰える事がないのである。
「あんたがこの招待状を持ってくるという事は、主催者
の関係者だな?」
「そういう事ですわね」
 テリーの問いに、全く動じる事無く答えるカレン。
「今回の主催者は何を考えている。先程の殺気といい、
やっぱり普通じゃなさそうだが」
「それは私の口からは言いかねます。しかし…」
「?」
「サウスタウンに来れば、全てがわかりますわ」
「サウスタウン…」
 テリーが呟く。
 懐かしい響きだ。
 しばらく戻ってないが、あそこでは色々な事があった。
 ギースと決着をつけ、ロックと出会ったのもサウスタ
ウンだ。
 今回も、サウスタウンで何かが起ころうというのか…。
「来て…くださりますわね?」
 カレンが確認の意味で尋ねる。
「もちろんだ!!」
 テリーは即答した。
「そうですか。当日が楽しみですわ。ちなみに詳細等は
その封筒の中に入っておりますので、よく読んでおいて
下さいませ。それでは…」
 そう言うと、カレンはその場から姿を消した。
「テリー…」
 ロックがテリーの名を呼ぶ。
「わかってる。今回も一筋縄でいきそうにねえな」
 テリーが、封筒をポケットの中に入れる。
「ロック。行こうぜ、サウスタウンに…」
「ああ」
 二人は今回の大会の舞台であるサウスタウンに進路を
取った。


 
第4話に続く
第2話に続く
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