餓狼伝説
〜狙われた狼〜
作者 タイ米
6
| キング・オブ・ザ・ファイターズ前日の夜、二人の男女が サウスタウンにやってきた。 テリーの弟、アンディ・ボガード。 不知火流忍術の後継者、不知火舞。 この2人にも当然、大会の招待状は届けられていた。 「舞。あまりくっつかないでくれないか?」 さながら恋人のように腕を組んでくる舞に、アンディは幾 分、困惑した様子だ。 「何、言ってるのよ。私達の仲は今や、世界規模で知られて るわよ」 さらにくっつく舞。 彼女にとって、アンディは恋人という存在なので、こうい う行動も無理はない。 とはいえ、やはり人目に着く場所。 もう少し、控えめにしてもらえないものか、とアンディは 思っていた。 「しかし、サウスタウンも久々だな。早く、兄さん達に会う のが楽しみだ」 「そうね」 二人が空港から一歩、外に出る。 その時、ある違和感が感じられた。 「何だ? この気は。ギースの時とは違う殺伐とした気が街 全体を覆っている。これは一体…」 アンディが舞の方を向く。 彼女の厳しい表情から察するに、やはり同じ事を思ってい たようだ。 「舞…」 「とりあえず、大会参加者用のホテルに行ってみましょう」 「そうだな…」 アンディと舞は一路、ホテルへと向かっていった。 「何だ? こりゃ…」 アンディ達より一足先にホテルに辿りついたテリー、ロッ ク、ジョーの3人。 その際、出場者であるテリーとジョーはそれぞれバッジを もらったわけだが、これは受け取った時のジョーの感想であ る。 中にいる他の出場者達も見てみたが、同じようにバッジが ついている。 「どうやら、これが大会出場者の印ってやつか」 テリーが呟く。 「ああ。そうだ…ってお前!?」 ジョーがテリーの方を振り返った時、自分の、いや他の人 と少し違うバッジだったので驚いた。 バッジにはそれぞれ、番号が書かれているのだが、普通の バッジにはそれが黒、テリーのそれには金色で書かれていた のである。 「どうやら、ディフェンディングチャンピオン用のバッジら しい…」 テリーのバッジには『1』という番号が燦然と輝いている。 「ケッ。そのバッジをつけていられるのも今のうちだ。次の 大会には俺がつけているからな!!」 「OK! 俺もこれを譲る気はさらさらないぜ!」 「NO! それを次につけているのは私デース」 テリーとジョーの会話に割って入ってきたのは、ボブであ った。 「そうだった。お前も出るんだったよな。忘れてたよ」 「忘れないで下さい。ついでにあの時のツケも」 ボブが手を開く。 金を払え、との合図らしい。 「残念だ。今、財布はすっからかんなんだ。大会後にしてく れないか?」 テリーが財布を開け、中身がない事をボブに伝える。 「ちょ! テリーさん!!」 「とりあえず、俺達は大部屋に行くぜ」 怒りのボブをよそに、テリー達は大部屋に足を運んだ。 大広間には、まだ全員ではないとはいえ、かなりの数の出 場者達が顔を揃えていた。 「HYU! みんないい顔してやがる。こりゃ、今回も楽し みだぜ」 早くもテリーの血が滾り始める。 その時、テリーは先日ぶつかったあの少年を見つけた。 (あいつ…) 「へぇ。あいつも出るのかぁ!」 ジョーはあの少年に対して、あまりいい感情は抱いていな かった。 「もし、俺があいつと当たる事があったら、俺が世の中のル ールってやつを教えてやるぜ!!」 「ジョー。お前、自分で言ってて、大人気ないって思わない か?」 「あんな年下にムキになるなんて…」 テリーとロックに同時に突っ込まれるジョー。 「おい。テリーはともかく、お前だけには突っ込まれたくな いぞ、ロック!!」 「だったら、もう少し大人らしくする事だな…」 8歳の子供に言いくるめられるジョー。 年齢に合わず、ロックは言う事が大人じみている。 そして、あの少年も年齢の割に、いろんなものを抱えた雰 囲気を漂わせている。 初めて会った時もそうだが、やはりテリーはあの少年が気 になって仕方がなかった。 「Hi! 何を考え込んでるのかしら?」 突然、背後で声がした。 振り返ると、そこにはフリーエージェントのブルー・マリ ーがいた。 テリーとマリーはお互い、境遇が似ている事もあり、今で は気のいい友人同士となっている。 「マリー。お前も出るのか?」 「ええ」 「また、クライアントからの依頼か?」 「まあ、そんなとこ…」 「やっぱ大会の主催者か?」 「詳しい事は言えないわ。依頼内容は極秘だから…」 「想像通りの答えだ」 「まあ、お互い大会で頑張りましょう」 「ああ…」 一通り、話し終えると、マリーはすぐさま立ち去っていっ た。 「あれ? 今のってマリーさんじゃない?」 入れ替わりで、今度はアンディと舞がやってきた。 「アンディ! 舞! お前達も出るんだな」 「当然。今度こそ、兄さんに勝つから、そのつもりでね」 「あと、私もいる事、忘れないでよ!!」 戦い前の会話をかわす3人。 だが、アンディが突然、厳しい表情をし始めた。 「そういや、ここに来る時、ギースとかとはまた違った巨大 な気が感じたんだ」 「マリーさんが来ているといい、やっぱ今回も何かありそう って感じかしら」 「ああ。いつも通りといったら、いつも通りだがな…」 テリーが笑みをこぼす。 確かに、大会に裏があることは、今日だけの話ではない。 「ま、勝ち抜くまでだろ!!」 テリーが帽子を被り直す。 「同感だね…」 アンディもテリーの言う事に頷く。 時計が午後9時を指した。 出場者達が、続々と宿泊部屋に足を運ぶ。 テリー達もそれに続いた。 「レオン様。大会参加者、全員揃いました」 「ご苦労、カレン。では予定通りに…」 「はっ」 カレンは報告を終えると、レオンの部屋から姿を消した。 元はあのギース・ハワードが使っていた部屋だ。 レオンは、ギースがやっていた時と同じように、窓から街 の全景を眺めた。 「いよいよだな。史上最高の茶番劇が幕を開ける…」 レオンは窓に映る自分の姿を見ながら、笑みを浮かべるの であった。 |