餓狼伝説
〜狙われた狼〜
作者 タイ米
8
| 大会当日。 時計は9時ちょうどを知らせ、出場者達は再び、大広間 に顔を揃えた。 「一体、何するつもりなんだ? 主催者側は」 テリーがアンディに尋ねた。 「さあね。僕にもさっぱりだ。だが…」 アンディが、ある方向に視線を移す。 そこには大型のTVが設置されていた。 「あそこに不自然に置いてあるTV。どことなく、胡散臭 さが漂うね…」 それはテリーも同意見だった。 そして、その予想は見事に的中した。 急にTVの画面から、ある男の顔が映し出される。 「?」 「どうも、皆さん。お初にお目にかかります。私の名はレ オン・バーンズ。今回の大会における主催者代表です」 「レオン!?」 その名を聞き、テリーはリリィの言った事を思い出した。 「奴が、ビリーを倒した連中の一人なのか!?」 呟くテリー。 TVの中のレオンは話を続ける。 「今回のルールですが、従来の大会のそれと、少し異なっ ております」 「!?」 レオンの言葉に耳を疑う選手一同。 「実は、皆さんにある人物を倒していただきたいのです」 次の瞬間、TV画面が一人の男を映し出した。 「に、兄さん!!」 最初に叫んだのはアンディだった。 そう。TV画面に映った男の正体は誰であろうテリー・ ボガードだったからだ。 他の出場者達も動揺を隠し切れない。 「こ、これは一体!?」 そして、テリーも例外ではなかった。 「ここに映る人物、ディフェンディングチャンピオンのテ リー・ボガードを倒し、彼のバッジをギースタワー最上階 まで持って来た者に、今大会の優勝者としての称号を与え る」 いくら何でも無茶苦茶なルールだった。 みんなして、テリーをターゲットにするなど。 主催者は一体、何を考えているのか。 レオンは続けた。 「なお、狙われる側のテリー君だが、君には私がこの街に 放った5人の刺客を倒してもらう」 「!?」 「それぞれ、番号なしの赤、青、黄、桃、黒のバッジをつ けている。それを全部集め、タワー最上階まで持ってきて ほしい。そうすれば、今大会は君の勝ちだ」 これはテリーにとって過酷な条件であった。 常に狙ってくる出場者達を蹴散らしつつ、自分も5人の 刺客と戦わなければならないのだ。 他の出場者は一回勝てばいい。 しかし、テリーは何回も勝ち続けなければならない。 何故、このような理不尽なルールを採用するのか、疑問 でならなかった。 それに、アンディ、ジョーを始めとしたテリーの仲間達。 彼らが、こんなルールに乗るはずがない。 だが、レオンはこうも続けた。 「ちなみにどうしてもテリー君の味方につきたい者は、彼 の代わりに刺客と戦う事を認めよう。もちろん刺客に勝っ て得たバッジはテリー君が持っていかないと、効力は発揮 されないがね…」 「……」 「あと、裏切りもアリだ。つまり、テリー君側についてい たが、優勝したいがために、狙う側につくとかね。そうそ う、この大会はテリー君側についている限り、優勝できな いからそのつもりで…」 とことん舐め切ったルールだ。 あと、レオンは狙っている側同士の潰しあいも認めると 付け加えた。 つまり、テリーを倒してバッジを獲得されても、タワー 最上階に着くまでの間に、それを奪えばいいという事だ。 「ルール説明は以上だ。大会開始は一時間後。選手全員が 外に出た時点でスタートだ。では、健闘を祈る」 レオンがそう言った直後、TVの電源が切れた。 「あの野郎、イカれてやがるぜ! 一体、テリーに何をさ せたいんだ!!」 ジョーが両拳を打ちつける。 「まあ、とりあえず、今回の主催者もまともじゃないとい う事は言えそうね…」 舞が呟く。 「いや、主催者だけじゃないですね」 ボブが付け加える。 テリーが辺りを見回した。 大会の出場者達が、それぞれにテリーを睨みつけている。 「テリー。お前、案外人望ないな…」 ジョーがテリーの肩を叩く。 「みんな、俺側についても構わないが、それにしたって敵 は多いぜ」 「そうだね。彼ら全員の相手をしていてはキリがない。奴 が言ってた『刺客』を探して倒すのが、手っ取り早いだろ うな…」 「て事は、開幕ダッシュか?」 「そういう事になるね…」 テリー、アンディ、ジョーの作戦会議が密かに行われる。 短針が10の位置を指そうとしていた。 そろそろ始まる時間である。 テリー達は先手必勝とばかりに、先に外に出ようとした。 だが、他の出場者達もそれを見て、後をついてきた。 中には、テリー達を追い越し、先に出る出場者達もいた。 大会開始1分前。 テリー達は完全に囲まれてしまった。 「数で攻めようってか…」 呟くテリー。 時間が刻一刻と迫る。 出場者達が全員、ホテルの外に出た。 同時に、時刻が10時になった。 前代未聞の大会の始まりである。 出場者達が一斉にテリーに襲いかかろうとした。 が、その時、とてつもない気がテリーの周りに集まった。 反射的にガードする出場者達。 「いい選択だ。その方がダメージが低くて済むぜ!!」 テリーの拳に気が充満する。 そして、大量の気を纏った拳を、そのまま地面に打ちつ けた。 「パワーゲイザー!!」 巨大な気の間欠泉が上がる。 あまりの重圧に、出場者達は圧されないように、しっか りと両足に力を入れていた。 その時、テリーの口から大きな声が聞こえた。 「よし、お前ら! 走るぞ!!」 重圧を抱えてるのは、アンディ達も同じだった。 だが、他の出場者達は、まだ身動きが取れていない。 この機を利用しなければ、この状況から逃れることはで きない。 アンディ達は、自分の体に鞭打ち、動けない出場者達を 押しのけて、その場を後にした。 「OK! 開幕パワーゲイザー成功!!」 テリーが叫ぶ。 「だが、おかげでこっちも多少の体力を消耗しちまったぞ!」 「とりあえず、この状況を回避するには、これしかなかっ たんだ。我慢してくれ、ジョー」 「チッ」 テリー達はある一定の距離まで走った後、レオンの放った 刺客達を探す為、バラバラな方向に散らばった。 「ほう。面白い事をやってくれるじゃないか…」 街中に備え付けられたカメラの画面から、今の様子を確認 するレオン。 「だが、これくらいでくたばってもらっちゃ、面白くないぜ。 本当のお楽しみはこれからなんだからな…」 画面を見つつ、レオンは不敵な笑みを浮かべた。 |