餓狼伝説
〜狙われた狼〜
作者 タイ米
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| 「そろそろね…」 マリーは腕時計で時間を確認した。 「これだけの時間があれば、さすがに決着はついてる でしょう」 テリーと元いた場所に戻るべく、歩を進めようとし たその時だった。 マリーの足取りが急に止まった。 「殺気?」 背後で足音がした。 「誰!?」 攻撃を警戒しつつ振り向くマリー。 そこには、金髪の女が立っていた。 彼女の胸には黄色のバッジがつけられていた。 「バッジ。刺客ね?」 「ええ。そういうあなたはテリーの味方ね。マリー・ ライアン」 「今はね。でも、あなたの狙いはテリーなんじゃなく って?」 「そうよ。だけど、私達のことについて調べて回るあ なたもうざったいのよ」 「それがエージェントの仕事だから…」 「仕事…ね」 女性二人のやり取り。 金髪の女性の殺気が増していく。 「戦う気?」 「テリー・ボガードと戦う前のウォーミングアップと 考えれば悪くないわ」 「ウォーミングアップね。少々キツいものになるかも しれないわよ、カレン・ローズさん」 「構わないわ」 同時に構えるマリーとカレン。 2人の戦いが今、始まる。 「ハァ、ハァ…」 息を切らせながらテリーは歩いていた。 「くそっ。山崎との戦いで体力を消耗しすぎた。これ じゃ先が思いやられる」 全身ボロボロ。 歩くにしても、力の入ってない歩き方であった。 こういう時には、何も出て欲しくはないのだが、現 実は無情であった。 先程、マリーが追い返した出場者達の数人がテリー を待ち伏せしていたのだ。 「待ってたぜ。テリー・ボガード」 「まったく、どうしてこういう時に会っちまうかな?」 「随分と怪我してるようだが、どこかで転んだりでも したのかい?」 「ああ。派手にな」 「それはかわいそうに…」 出場者達が構える。 先程より人数はいない。 逃げられるスペースもなくはない。 しかし、今の体力で果たして逃げ切れるだろうか。 テリーにはその自信がなかった。 その時、横の方で少年の声が聞こえた。 「テリー!!」 振り返るテリー。 そこにはロックが待っていた。 幸いにも出場者達もロックの方に目を奪われている。 それを見逃さなかったテリーは全速力でロックの方 に走る。 「待て!!」 出場者達も後を追う。 ロックの元に辿りついたテリーは出場者達の方に顔 を向けた。 「今の俺には、これが限界だ!」 そう言い、拳に気を集め、地に叩きつけた。 「パワーウェイブ!!」 「何!?」 テリーの攻撃に、出場者達は反射的にガードを固め た。 全力ではなかったものの、今のパワーウェイブは出 場者達の足を止めるには十分だった。 出場者達が動けるようになった時には、すでにテリ ー達は彼らの視界から消えていた。 「くそっ!」 出場者の一人が悔しそうに、拳を地面に叩きつけた。 パオパオカフェ2号店。 店員達から傷の手当を受けるテリー。 側にいたロックに礼を言った。 「ロック、助かったよ。あの時、お前がそこにいてく れなかったら…」 「気にするなよ、テリー。俺があそこにいたのは本当 に偶然なんだ。何にせよ、悪運の強さは健在だな」 「違いない…」 テリーがそう言った時だった。 パオパオカフェにある人物が入ってきた。 灰色の髪をした少年ではあったが、ロックよりは年 上のようだ。 「いらっしゃいませ。お客様」 店員の一人が応対する。 少年が口を開いた。 「ある人物に用がある…」 「ある人物…ですか?」 「そこにいるテリー・ボガードという男にな」 少年の胸には大会出場者用のバッジがしてあった。 |