餓狼伝説
〜狙われた狼〜
作者 タイ米
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| たった一人の肉親を、父親の命を奪った男が目の前に いる。 復讐の衝動にかられたデイルだったが、ここは何とか 我慢していた。 「な、何しに来たんだ!?」 デイルが尋ねる。 「墓参りだ。そいつのな…」 「は、墓参り…だと!?」 デイルにふつふつと怒りの感情が湧き出てきた。 レオンは続ける。 「さすがはマーシャルアーツの天才だ。俺をあそこまで 追い詰めた奴はそういないからな…」 レオンがロイドの顔を見る。 「本当にそれだけの為に来たのか?」 デイルは疑った。 そこまで律義な奴なら、殺した後に自分からロイドを 埋めるはずだ。 「さすがは息子だ。本題はこれからさ」 レオンはデイルの目を見た。 「お前、俺を殺したくはないか?」 「!?」 見透かされていた。 自分の思いが、このレオンという男には…。 「お前は正直な男だ。口ではそう言わずとも、心が、そ して気がそう伝えてくれる」 「何…だと!?」 「俺は死んだ奴の事など興味はない。俺は今、ここに生 きているお前に興味があるのさ…」 レオンの周囲から、気が充満し始める。 デイルは体中に力を溜めてそれに耐えた。 下手に気を抜けば、気合いだけで吹き飛ばされかねな い。 「お前の苦しみ、悲しみ、恨みが俺をここに呼び寄せた のだ。さあ、今こそ全てをぶつけてみせろ!!」 デイルは直に感じた。 レオンの力の凄まじさを…。 しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。 「さあ。お前の仇は目の前だ。早く俺を殺しにかかって こい!!」 レオンの誘惑は続く。 だが、デイルの最後の理性とも言えるものが、それを 踏みとどまらせた。 (行くべき時は今ではない。自分自身が強くなってから 必ず…) 「そうか。お前は平坦な道を選ぶか…」 急にレオンが背中を向けた。 「一緒だな。お前の死んだ父親と…」 「どういう…事だ!?」 デイルはレオンの言葉が理解できなかった。 「そいつの負けた原因。今まで自分より弱い相手としか 戦わなかったからだ…」 「何!?」 「たった一人でお前を養う為かどうかは知らんが、その おかげで奴は平坦な道を行き始めたんだ。確実に金を稼 げるようにな…」 「何だと!?」 「それが己の腕を腐らせているとも知らず。平坦な道を 行き始めれば、敗北が恐くなる。そして強い奴と戦う事 もなくなる」 「だから何だというんだ!?」 「結果、己の腕も心も脆弱になる。そうなったら格闘家 としてお終いだ。だから俺が始末した。お前の為にもな」 「俺の…為だと!!?」 「覚えておけ。敗北を知らぬ者に真の強さは手に入らな い。敗北を恐れる者に真の勝利は手に入らない」 「……」 「よく考えておけ。生き残った俺の言う事と、哀れな末 路を辿った格闘家崩れのどちらが正しいかをな…」 「!!?」 その瞬間、デイルの中で何かが切れた。 「ざ、けんな…」 「?」 「ざけんなぁぁぁっっ!!」 デイルがレオンに立ち向かった。 デイルの渾身の一発が、振り向きざまのレオンの頬に 入った。 だが、同時にデイルの腹に凄まじい衝撃が襲った。 そして、デイルは自宅の壁に吹き飛ばされた。 「ぐはぁっ!!」 血を吐くデイル。 彼の腹には、気弾でも叩き込まれたかのような跡がつ いていた。 「いい一発だったな…」 レオンが殴られた頬を軽く押さえた。 「その感情、忘れるなよ」 そう言い、レオンは去っていった。 ズルズルと脱力するように尻を地面につけるデイル。 歯を食いしばり、悔しさを噛みしめながら呟いた。 「俺ならともかく、父さんの事を馬鹿にしやがって…」 体中が震える。 怒り、苦しみ、悲しみがいっぺんに彼に襲いかかった。 「レオン・バーンズ! 俺を怒らせた事を後悔させてや る!!」 満天の星が輝く夜空に、デイルはレオンへの復讐を誓 った。 レオンがサウスタウンを襲う3年前の出来事である。 |