餓狼伝説
〜狙われた狼〜

作者 タイ米

19


 サウスタウン内に数台のパトカーが止まっていた。
 警官達が誰かを待っていると、ヌンチャクを持った男が
急に現れてた。
「ホンフゥ刑事!!」
 警官達が敬礼する。
「おぅ! 噂は本当っちゃね? 山崎がこの大会に関与し
とるっちゅう話は」
 ホンフゥと呼ばれた刑事が尋ねる。
「ハッ。先程、その裏も取れました」
「ご苦労。あとは山崎を捕らえるだけっちゃね」
 ホンフゥは闘志を燃やしていた。
 山崎逮捕の為に、惜しい所まで行ったものの、肝心な所
ですぐ逃げられる。
 今回こそは全ての決着をつけようと、わざわざ香港から
急いでやってきたのだ。
「さて、いるとわかったら、早速、捜査開始ばい!」

 その時、ホンフゥは自分達の前に誰かが近づいてくるの
に気付いた。
「よぉ。ホンフゥじゃないか」
 そこにいたのは、血だらけのマリーを抱えているテリー
だった。
「て、テリーさん! そこにいるのはマリーさん! これ
は一体…」
「話は後だ。マリーを一刻も早く病院に連れて行きたい」
 確かにホンフゥの目にもマリーの状態が酷いのはわかっ
た。
「よっしゃ! おい、誰か近くの病院まで彼女を連れてい
ってくれ!」
 警官の一人がマリーをパトカーに乗せ、サイレンを鳴ら
しながら、その場を後にする。
「しかし、あんたも来ていたとはね」
 テリーが口を開く。
「ああ。山崎がこの大会に参加しとる事を知ってな」
「山崎!?」
 テリーの表情が変わった。
「俺、さっき、あいつと戦ったぞ!」
「何!?」
 意外な情報が入り、驚きを隠し切れないホンフゥ。
 警官達と共に、山崎と戦った場所に急行する。
 だが、そこに山崎の姿はなかった。
「い、いないだと?」
「なあ、テリーさん。本当に奴とここで戦ったと?」
 ホンフゥが疑いの目でこちらを見る。
「間違いない。奴は主催者側は用意した人間として参加し
たんだ」
「どういうことばい?」

 テリーは山崎が主催者のレオンの刺客の一人として参加
したこと、そして、おそらく洗脳されていた事について話
した。
「なるほど。そういや、レオン・バーンズという男の情報
はこちらにもチョクチョク入ってきてたばい」
「本当か?」
「急に裏社会に名乗りを挙げてきた男っちゃ。既に何人も
の影の実力者を倒し、最近ではビリー・カーンも倒したと
いう噂が立っとるばい」
「ビリーか。俺達も確認した。その話は本当で、何でも仲
間が数人いるらしい」
「それも聞いてる。どいつも一癖ある奴っちゃ」
「ああ。マリーをあんな姿にしたんだ。実力の方も相当だ」
 その時、テリーは一人の女性を数人の男達が物陰に連れ
ていくところを発見した。
「あれは?」
 テリーは急に降りはじめた。
「ちょ! どこ行くと!?」
「すぐ戻る!」
 そして、テリーは消えていった。

「一体、何なんですか? あなた達!」
 物陰では、金髪の女性が数人の男達に迫られていた。
「あんた、確かビリー・カーンの妹だったよな?」
「俺らも昔は、あの男に一杯喰わされたんだよなぁ」
「うさ晴らしじゃないけどよ、何かやっておかないと気が
済まなくてな」
 男達の狂った笑い声が女性の耳に入ってくる。
「さて、覚悟してもらうぜ!」
 男の声に覚悟を決めた女性。
 その時だった。
「そこで何やってやがる!」
 振り向く男達。
 そこにはテリーがいた。
「テリーさん!」
 女性が叫んだ。
「ほう。こんなところでターゲットに会えるとはな…」
 見ると、男達は全員、大会出場者のバッジをつけていた。
「お前らみたいなのも参加者とはな。格闘家の風上にも置
けねぇ」
「何とでも言え。こっちには人質がついてる」
 男の一人が女性を取り押さえる。
「キャッ!」
「リリィちゃん!」
「へっ。てめぇが妙な動きをしたら、こいつの命はないぜ!」
「てめぇら…」
 その時、テリーの背後でさらに声がした。
「ああ、ダメダメ。警察の前でそんな真似しちゃ」
 テリーが振り向く。
「ホンフゥ!」
「一般市民のピンチに駆けつけるのが警察っちゃ!」
 ホンフゥが愛用のヌンチャクを取り出し、構える。
「さて、きさんら、覚悟はよかね!?」
 ホンフゥのヌンチャクが、出場者達に炸裂した。


 
第20話に続く
第18話に続く
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