餓狼伝説
〜狙われた狼〜
作者 タイ米
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| ビリーは惨状の一部始終を見ていた。 確かに格闘技のテクニックではジョーの方が上だ。 しかし、一撃の破壊力、回復力、タフネスさでは圧倒的に オオトモに軍配が上がっていた。 「もはや動けまい。トドメを刺してやる…」 オオトモは、拳を振り上げ、ジョーの顔面に渾身の一撃を 喰らわそうとした。 (やはり、ここは俺がいかなきゃならねぇ!!) 残っているダメージを何とか耐え、持っている棍に力を 入れる。 ビリーがオオトモの元に突進し、攻撃を仕掛けようとした その時だった。 「!?」 オオトモの目の前で風が吹いた。 一瞬、彼の動きが止まった。 「タイガーキック!!」 炎を纏わせた膝蹴りが、オオトモの顎にクリーンヒット した。 思わぬ反撃によろめくオオトモ。 打ち所が悪かったのも原因なのかもしれない。 「まだ、これだけの力が残っていたというのか!?」 「言ったろ? 本気じゃないのはてめぇだけじゃないって!」 ジョーが拳を思い切り打ち上げる。 その勢いは強烈な風を起こすほどだった。 「喰らえ! スクリューアッパー!!」 「こ、これは!?」 先程の技とは比にならない風の力に、動きを完全に封じら れたオオトモ。 そして、衝撃は彼のガードを突き破り、易々とその巨体を 空高く舞い上げていった。 「ガハッ!!」 地面に強く叩きつけられ、立つ事の出来ないオオトモ。 辛うじて、まだ生きてはいたが、やはり相当なダメージを 負っていた。 「どうだ。俺のスクリューアッパーの味は。うめぇだろ!」 息を切らしながら、語りかけるジョー。 一歩一歩、ゆっくりではあるがオオトモの前に近づき、 胸にあった青のバッジを取った。 「こいつはいただいてくぜ!」 その次の瞬間だった。 オオトモが急に起き上がり、ジョーの顔面に強烈な一発を 入れた。 「まだだ! まだ勝負は決していない!!」 彼の瞳には輝きがなかった。 ただ、精神力だけで起き上がったのだ。 「チィッ! スクリュー喰らってまだ立ち上がれるのかよ!」 ジョーが構える。 だが、先程の腹のダメージがピークに来ている。 (ダメだ。これじゃスクリューをもう一発なんて放てやしねぇ!) オオトモがジョーに近づいてくる。 まさに絶体絶命の状態だった。 その時、オオトモの行く手を何者かが阻んだ。 「ビリー!」 ジョーが叫んだ。 「もうてめぇの出番は終わった。怪我人はサッサと休んでろ!」 「怪我人だぁ!? てめぇだって人の事言えねぇだろうが!」 「少なくとも、こっちには余力がまだ残ってるぜ…」 「馬鹿! 俺だって…」 「見え透いた嘘ついてんじゃねぇぞ! いっその事、俺の棍 で引導渡してやろうか!?」 ビリーが睨む。 だが、その目には哀愁も漂っていた。 ジョーは悟った。 リリィに関しての気持ちは彼とて同じなのだ。 しかも、彼は目の前の男に二重三重の屈辱を味わっている。 「おい、ビリー。一発で決めやがれ!」 珍しく、ジョーが退いた。 「ケッ。一発ありゃ十分だ!」 ビリーがオオトモの方を向く。 「さぁ、やろうぜ! あの時の続きをなぁ!!」 ビリーの言葉に反応するかのように、オオトモは攻めてきた。 理性がないからなのか、攻撃は簡単にビリーに避けられた。 「どうしたぁ! 全然当たんねぇぜ!!」 叫ぶビリー。 「オォォォォォォーーーッッッ!!」 オオトモの咆哮。 ストレートは虚しく空を切った。 「終わらせてやる!!」 ビリーがしゃがみつつ、多少間合いを詰めた瞬間だった。 棍を地面にこすりつけ、マッチ棒の要領で引火させる。 そして、そのまま火のついた棍を振り回した。 「RRRRRRRRRRR!!!」 棍の炎がオオトモの体にダメージを刻む。 「カリは返すぜ! サラマンダーストリーム!!」 最後に巨大な火柱が地面から上がり、オオトモは完全に動か なくなった。 ドサッと倒れた音だけが、静かな通り一帯に響いた。 「終わった…か」 ジョーが呟く。 が、ビリーはなおも倒れたオオトモの元に近づいた。 そして、自らの棍を振り上げる。 「やめろ!」 ジョーがビリーの腕を抑える。 「離せ! ここでトドメ刺さなきゃ、また暴れられるぞ!」 「馬鹿! 奥の方を見てみろ!!」 「お兄ちゃん!」 聞き覚えのある声がした。 ジョーの遥か先で、妹のリリィがこちらを見ていた。 |