餓狼伝説
〜狙われた狼〜

作者 タイ米

24


「父親を尊敬してるんだな。俺とは大違いだ…」
 デイルと二人っきりになったロックが最初に発した
言葉だった。
 何故、ロックが急にこんな言葉を言ったのか、デイル
には理解できなかった。
「あんた、親父は?」
「俺の親父はもうこの世にいない。もっとも、あんな奴を
親父とは認めたくないけどな…」
 ロックの表情には哀愁が漂っていた。

 彼の父親はサウスタウンの実力者。
 どこまでも、自分の野望の為に生きた男であった。
 その為には、息子、妻、あらゆるものを犠牲にしてきた。

 ロックの母親は、だいぶ昔に、病で命を落とした。
 だが、夫は最後まで駆けつける事はなかった。

 ロックは、そんな父親を憎んでいた。
 母親を見殺しにした男を…。

 しかし、野望に生きた男にも、最期というのが訪れた。

 ギースタワー屋上での、テリー・ボガードとの戦い。

 展開は熾烈に熾烈を極めた。
 二人とも、あと一発が限度であった。
 それぞれの全てを込めた技が炸裂せんとした。

「パワーゲイザー!!」

「レイジングストーム!!」

 だが、男の技、レイジングストームが放たれる事はなかった。
 衝撃で、男の体は宙を舞い、外にまで体がぶち破られようと
していた。

「GEESE!!」
 テリーの叫び。
 全力疾走した末に、宿敵とも言えるその男に手を差し伸べる。

 テリーが男の腕を掴む。
 だが、男は自らその手を振り払った。

「GOOD−BYE.HA−HA−HA−HA!!」

 高笑いを残し、男はその身を投げた。

 テリーはただ、その光景を見守るしかなかった。

 タワーから帰ると、そこにはロックの姿があった。
 秦の秘伝書騒動の時以来から、彼らは行動を共にしている。
 テリーは、ロックに今まで見せたこともないような悲しい
表情をしていた。
「お前の親父を、殺しちまった…」

 ロックはその言葉を聞き、愕然とした。
 テリーの目にうっすらと涙が見えた。
 そして、無意識にロックは構えた。

 息子として、ごく自然な行動を取るかの如く。

 テリーもそれに応えた。

 結果はやはり、目に見えていた。
 今のロックに、テリーを破る術はなかった。

 しかし、全てを出し切ったからなのか、その後もロックは
テリーと行動を共にしている。

 対決から数日後、テリーはロックに話し掛けた。
「なあ、ロック。最近、思う事があるんだが…」
「?」
「復讐なんて、ロクなもんじゃねぇな。ちょっと前までは
そんな事、微塵も思わなかったのに…」
「……」
「終わってみれば、残ったのは虚しさだけ。こんなモンなの
かなぁ?」
 ロックは、テリーの問いに答える事ができなかった。
 ただ、テリーの表情は、あの日からずっと優れていない事
しかわからなかった。

 復讐で得るものなど何もない。
 ロックは、テリーを通して、その事を学んだ。

「テリーはそれがわかってたからこそ、あんたに厳しい言葉を
かけたんだ…」
 ロックは語る。
 テリーの心情を。
 だが、それでもデイルの気持ちは変わらなかった。
「だとしても、虚しさしか残らなくても、俺にも譲れない
ものはある!」
 デイルが駆け出した。
「あ、待てよ!」
 ロックも後を追いかける。

 その時だった。

 凄まじい爆音。

 二人の足が止まった。
「何だ、これは!?」
 デイルが叫ぶ。
 ロックは感じた。
 凄まじく、しかし覚えのある気を…。
(馬鹿な!?)
 我に返ると、デイルは気の方に向かって走り出した。
「おい! 俺も行くぞ!!」

 二人の少年は全速力で駆け、闇の中に消えていった。


 
第25話に続く
第23話に続く
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