餓狼伝説
〜狙われた狼〜
作者 タイ米
25
| 話はジョーがオオトモと戦う前にまで遡る。 KOF参加者の一人である、若きカポエラマスター、 ボブ・ウィルソンは、レオンの刺客を探していた。 「Fu.結構、見つからないものですね。刺客という のも…」 日が落ちかけ、夜にさしかかろうとした時だった。 一瞬だが、殺気のようなものを感じた。 それを見逃すボブではない。 「敵…ですか? 出てきなさい!」 気配の主である男は、ボブの正面から、闇から現れる ように出てきた。 胸には黒のバッジが光っている。 レオンの刺客である証だ。 「主催者が送り込んだ人間ですね。正面から堂々と出て くるとは思いませんでしたよ」 「不意打ちをかけるとでも思ったか。生憎、俺自身は そういう戦法は好まなくてな…」 男は静かに話し掛けた。 「それに、相手が自分より格下ならば、尚更だ…」 ボブは、今の言葉に反応した。 「格下? 聞き捨てなりませんね。これでも私は…」 「パオパオカフェ2号店のカポエラマスター、 ボブ・ウィルソン…か?」 ボブが答えるより早く、男が言ってのけた。 「何故、私の名を?」 「申し遅れた。俺の名はディン・イーロン。お前の事は KOFで知っている」 「なるほど。私も少しはKOFで名が知られたようですね」 「お前だけではない。主なKOF出場者のデータは知り 尽くしている…」 ディンが不敵に語る。 「そうですか。しかし、その割には肝心な事が抜け落ちてる ようですよ?」 「?」 ボブが構えた。 それに反応してか、ディンも構える。 「それは、カポエラの強さデース!!」 ボブの蹴りが、ディンに襲いかかった。 しかし、ディンはそれを上半身を動かすのみでかわした。 「HEY! まだまだ!!」 ボブの攻撃はまだ続く。 一撃一撃が強烈な破壊力を持つ蹴りを、次々と繰り出して いく。 まるで、ヘリコプターのプロペラのような感じで回りながら。 その攻撃も、ディンは紙一重でかわす。 避けるたびに、強烈な風が顔に当たる。 「データ通りだ…」 ディンは攻撃の隙に、手刀をボブの喉元に突き刺す。 「!?」 だが、寸止めにしただけで、彼は何もしなかった。 その行動に疑問を持ちつつ、ボブはなおも攻め続けた。 しかし、一向に攻撃は当たらない。 「なかなかやりますね。ならば、これはどうですか?」 頭を軸に回転し、先程とは比べものにならない蹴りで襲い かかる。 「オォォォォーーッッ! ローリングタートル!!」 しかし、ディンは臆さない。 急に伏せると、ボブの顔めがけて、手を繰り出し、視界を 塞いだ。 ボブの動きが止まる。 だが、やはりその後は何も攻撃を繰り出さない。 「どういうつもりですか!」 再び、足で立ち上がるボブ。 「手加減のつもりですか? 私をいつでも倒せると言っている のですか?」 珍しく、ボブに怒りの表情が見られた。 「半分は正解だな…」 ディンは答える。 「だが、それは俺がまだ自分のスタイルを出していないだけの 事。お望みとあらば、今からでもお見せするが?」 「見せてもらいましょう!」 「そうか。では、手始めに…」 ディンが急に目を瞑った。 そして、彼はカポエラの構えを始める。 「カポエラ? あなたもお使いになるのですか?」 「もちろん。何故なら私は…」 次の瞬間、ボブはディンの中の異変に気がついた。 さっきまで目の前にいたディンの気が存在しない。 いや、気が変化した。 そんな事が存在するのか。 しかも、それだけでは終わらなかった。 「馬鹿な! これは!?」 「何故なら私は、あなた自身なのですから!」 ボブが感じている気。 そして、今、彼が向かい合ってる人物の姿。 そこには紛れもなく、姿形が全く同じ、若きカポエラマスターの ボブ・ウィルソンが存在していた。 |