餓狼伝説
〜狙われた狼〜
作者 タイ米
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| 鏡のように同じ姿の人間二人が向き合っている。 ボブは首を激しく横に振った。 「違う! 惑わされるな! 全ては幻影だ!!」 再び、目を開ける。 だが、光景は前と変わっていなかった。 「わかっていただけましたか?」 向こう側にいるボブ、いや、ディンが話し掛けた。 「では、続きと参りましょう…」 構えるディン。 仕掛けた技は、先程、ボブが放ったローリングタートル。 「私の技まで!?」 攻撃を全てガードするボブ。 しかし、蹴りの威力は半端ではなかった。 「おや、いいんですか? 防御ばかりしていては、そのうち 弾かれますよ?」 案の定、ボブのガードは弾かれた。 隙に攻撃が入り、ボブは吹き飛ばされる。 何とかダウンは回避するも、さらにディンは攻め続けた。 「READY GO!!」 今度は、ビッグ・ベアに姿を変え、強烈なタックルで ボブをさらに吹き飛ばす。 この衝撃にはボブもたまらずダウンする。 立ち上がった時には、視界に誰もいなかった。 「ここですよ!」 上空から声がした。 「飛翔脚!!」 キム・カッファンに姿を変えたディンは、急降下し、ボブ の体を踏みまくる。 「ぐぅっっ!!」 有り得ない連続攻撃に、ボブの頭はすっかりパニックを 起こしていた。 「教えてやろうか。何故、このような芸当ができるかを…」 ディンはいつの間にか、元の姿に戻っていた。 「俺はもともと役者でね。実在する人間を演じる事も多い。 そんなわけで、その人間を観察する機会というのを得るわけ だが…」 ディンはさらに話を続ける。 「人間観察を続けるうちに、俺は観察眼が鋭くなった。もち ろん、常人を遥かに超えてな…」 「……」 「そして、俺は一回見ただけで、その人間のあらゆる部分を 再現する事ができるようになった。話し方、技、そして、 その人間の気配までも…」 「だが、あなたは見かけまで変わった。それをどう説明しま すか!?」 「それはお前が勝手に作り出した幻想だ」 「幻想?」 「お前が最初に言ってたのは、実は正解だった。だが、全く 違う人間が、知人と同じ気配をさせることによって、心は 俺の姿に、その知人の姿をダブらせたのさ」 「全ては気のせい…というわけか」 「その通り…」 すると、ディンがまた誰かに姿を変えた。 「!? ギース・ハワード!!」 「言ったはずだ。私の観察眼は普通ではない。一回見ただけ で、その人物を最大限にまで再現することができる…」 「あなたは、KOFで私達の姿を見て…」 「正解だ。つまり、私は君達の事を知り尽くしているわけだ。 もっとも、知った所でもう遅すぎるがな…」 ディンが構える。 ギースが放つあの覇動までも再現している。 「こ、ここまで…再現できるものなのか!?」 「さあ、お喋りは終わりだ。貴様は地獄へ旅立ってもらおう」 その言葉に、ボブは意を決し、構えた。 「たとえ、相手がギース・ハワードであろうと、私は決して 退いたりしない!!」 ボブが駆ける。 ギースを倒すには、あまり長い事時間はかけられない。 一瞬の隙を突いて、大技を浴びせるしかない。 「でやぁぁぁぁっっ!!」 ボブが蹴りを放つ。 「甘いわ!!」 その瞬間、ディンは当て身投げの構えを取った。 「引っ掛かりましたね…」 ボブが笑みを浮かべる。 「本命はこちら! マッドスピンウルフ!!」 「!?」 当て身投げのタイミングを遅らせたボブは、ディンに隙を 作らせた。 強烈な回転蹴りがディンに襲い掛かる。 だが、その攻撃が当たる事はなかった。 ボブが技をかけようとした瞬間、ディンは後ろに退いていた のだ。 「何!?」 「残念だったな、ボブ・ウィルソン。狙いは良かったが、貴様 の戦い方は全て把握している!!」 ディンの周りに強烈な気が集まる。 そして、両手を高く掲げ、交差させた。 「この構え、まさか!?」 「地獄へ逝け! レイジングストーム!!」 地面から気の刃が現れ、ボブを突き刺す。 「ぐぁぁぁぁぁーーーっっ!!」 倒れたボブは気を失い、立ち上がる事はなかった。 「フン。所詮は格下…」 ディンは既に元に戻っていた。 だが、同時に、自分に敵意を剥き出しにする新たな人物を発見 した。 「テリー・ボガード…」 「おかしいと思ってたんだ。死んだはずの人間の気が感じられる なんて。正体はお前だったわけか!?」 「そういう事だ…」 テリーが構える。 「どうやら、お前は俺の中の狼を起こしちまったようだな!」 「ほう、そうか。では、お前はどういう対決がご所望だ?」 「?」 「親友との対決か、弟との対決か、それとも仇との対決かな?」 不敵な笑みを浮かべるディン。 次々と姿を変えていく。 「てめぇ…」 「レオン・バーンズとの戦いを頼もうか…」 側で少年の声がした。 「デイル!」 テリーが叫んだ。 闇の中からデイル、そしてロックが現れた。 「おい、化けられるんだろ? サッサと化けろよ。そして、俺と 勝負しやがれ…」 デイルの掌に気が集まり、刃が形成される。 「デイル、お前…」 「悪いが、テリー。考えを変えるつもりはない。俺はレオンを 殺す! それができる事をあんたに見せてやる!」 デイルの決心は固い。 「お前か。レオンに復讐する事を考えている馬鹿な少年という のは?」 「馬鹿かどうかは、てめぇの体で確かめてみるんだな…」 「いいだろう。お前の言う通り、レオンの体で勝負してやる…」 緊張の第2ラウンド。 デイルとディンの戦いが、始まろうとしている。 |