餓狼伝説
〜狙われた狼〜

作者 タイ米

27


 デイルの目の前で、ディンの姿が変化する。
 あの忌まわしき男、レオンの姿に…。
「ククク、久しぶりだな、小僧。お前の実力、とくと
拝見させてもらおう」
「そうか。それじゃ行くぜ!」

 デイルの手に宿った刃が伸びる。
 そして、それはそのままディンに襲い掛かる。
「これは!?」
 ディンが突然、冷や汗をかきだした。
 刃はディンの心臓を狙っている。
「くっ!」
 ディンは間一髪のところでそれを避けた。
 そして、避けた態勢のまま、掌に気を集め、一気に
解き放つ。
「喰らえぃっ!!」
 猛スピードで襲い掛かる気弾。
 だが、デイルは全く動じなかった。
「ざけんなぁっ!!」
 ディンの放った気を一刀両断する。
「ちぃっ! 外したか!」
 再び構えるディン。
 自らの周りの気がさらに膨れ上がる。
「おぉぉぉぉぉぉーーーっっ!!」
 今度は自ら突進する。
 拳に気を纏わせ、強烈な連続攻撃を喰らわせた。
 だが、デイルは倒れなかった。
「おらぁっ!!」
 ディンがさらにもう一発喰らわそうとした時だった。
「くだらねぇっ!!」
 刃が、ディンの体を貫いた。
 心臓ではなかったものの、勢いを止めるには十分な
一発だった。

「ば、馬鹿な…」
 血を吐き出しながら、ディンは、今の状況を信じられ
ない状態でいた。
「今のてめぇは、レオンに見えねぇよ!」
 ディンの胸倉を掴むデイル。
 その表情は怒りに満ちていた。
「てめぇはレオンの何を知っているんだ、あぁ!?」
 さらに強く胸倉を掴む。
「どうやら、てめぇはレオンの事を再現しきれてないよう
だから、教えてやる…」
 デイルの言葉に耳を疑うテリー。
「おい、どういう事だよ。今、あいつが見せたのが、レオン
の戦い方じゃないのか?」
「技とかはそのままなんだろうが、根本的な事が違ってん
だよ!」
「根本的?」
「レオンの格闘の概念には、『避ける』というものは存在
しねぇんだ!」
「何だって!?」
「相手の攻撃は全て受けきる。その上で、相手を叩きのめす。
それが奴のやり方なんだよ!」
 デイルは復讐を決めたその時から、レオンの事について
調べに調べた。
「だからこそ、俺は憎しみを込めたこの刃の技を会得したん
だ。奴を殺す為にな!!」
 デイルの技には、そういう思いが込められていた。
「それとも何か。てめぇが見たレオンっていうのは相手の
攻撃を避けるほど、腑抜けた野郎だってのか?」
 デイルがディンに尋ねる。
「フッ。俺とてレオンの刺客の一人だ。そのくらいの事は
知っている。だが、いくら姿形は真似ても、奴を完全に再現
することだけは不可能なのだ」
「どういう事だ?」
 テリーが尋ねる。
「奴は、傷を受ければ受けるほど強くなる。その領域は、
俺の再現力など、全く手の届かないところに存在する…」
 ディンが咳きこむ。
 その度に大量の血が吐き出される。
「デイルとか言ったな。おそらく、今のお前の攻撃でさえ、
奴の…」

 その時だった。
 ディンの上から雷が降ってきた。
「避けろぉっ! デイル!!」
 テリーの言葉に呼応するかのように、デイルはその場を
離れた。
 ディンを襲った雷は、そのまま、彼の意識を飛ばした。
「くっ! 山崎の時と全く同じか…」
 テリーが呟く。
「あーあ。どうしてこうも、大人っておしゃべりばっか
なのかなぁ?」
「!?」
 声の方に振り向くテリー。
 見ると、少女が空中に浮かんでいた。
 彼女の胸には、桃色のバッジが光っている。
「まさか、お前も刺客なのか!?」
「ピンポーン! 大正解!!」
 テリーの問いに、笑顔で答える少女。
「誰だ、お前は!?」
 今度はロックが尋ねた。
「私の名はレイラ・クルーズ。レオン様直属の最強の部下よ」
 全く笑顔を崩さず、レイラはそう答えた。


 
第28話に続く
第26話に続く
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