餓狼伝説
〜狙われた狼〜

作者 タイ米

28


「レオンの…部下だと!?」
 デイルの拳に力が入る。
 今にも理性を失い、飛び出していかんばかりの
テンションだ。
 が、そんなデイルを止めたのはテリーだった。
「待てよ。ここは俺がやる。こいつを倒せば、バッジを
全て手に入れた事になる」
 気絶しているディンから、黒のバッジを奪い取るテリー。
「さあ、最後の刺客さんよ。早く降りてきな!」
 テリーが挑発した。
 だが、レイラはそれに乗っかってはこなかった。
「残念だけど、今のあなた達とは戦う気はしないわ」
「何!?」
 この大胆不敵な発言に反応するテリー。
「勘違いしないで。別にあなたの実力をどうこう言う気は
ないから」
「なら…」
「そんなにショータイムを早く終わらせたってしょうがない
でしょう。もうちょっと楽しまなきゃ!」
「ぐだぐだうるせぇ!」
 イライラに我慢できず、デイルは、オーラの刃でレイラに
攻撃をしかけた。
「あらら…。短気なお兄ちゃんね」
 そう言い、レイラは周りにバリアを張って、攻撃を防いだ。
「チッ…」
 思わず舌打ちするデイル。
「それに、あなた達がまだ気付いているかどうかわからない
から、言っておくけど…」
「?」
「私は今、二人の人間の命を預かってるの。生かすも殺すも
全て私次第…」
「どういう意味だ!」
「今ね、タワーには宙ぶらりんになっている2人のおじさん
がいるの。もし私が気を抜いたりなんかすると、自動的に
彼らの命綱は切れて、そのまま地面にまっ逆さまになるって
仕組みなの」
 面白そうに仕掛けを説明するレイラ。
「嘘だと思ったら、タワーに実際に行ってみるといいわ。
飲まず食わずのおじさん達が、最高の特等席で、この大会を
見てるから…」
「何だと!?」
「私はこれから、別のイベントに行かなきゃならないから。
これもまた、いい見世物になりそうよ」
「見世物?」
 訳が分からず、テリーが尋ねる。
「ええ。とびっきり面白い茶番劇よ。タイトルは『愛は命を
散らす』ね」
「!?」
 未だに、意味がわからなかったが、テリーはこの言葉に
どうも嫌な予感がした。
「それじゃ、また会いましょう」
「ま、待て!」
 テリーの叫びも虚しく、レイラはその場から消えていった。

「あのガキ。俺と同じ事を誰かにやろうとしてやがるな…」
 ふと、背後で声が聞こえた。
「お前!」
 そこにいたのは、今まで姿を消していた山崎だった。
「今まで、どこにいたんだ! 山崎!!」
「あのガキを追ってたんだよ! 少しばかりカリがあった
もんでな…」
 その時、テリーは、山崎が洗脳されていた事を思いだした。
「まさか、お前を洗脳した奴ってのは…」
「……」
 山崎は語らなかった。
 だが、これでテリーは確信した。

 身内の人間の誰かが危ない、という事に。

「しかし、ガキをやっと見つけたと思ったら、逃げ出しやがった。
こんなんじゃ、また探すのは手間だな…」
 山崎の呟きを、テリーは聞き逃さなかった。
「お前、何を企む気だ!?」
「予定変更。親玉から先に始末してやるぜ」
 その言葉を聞き、デイルが即座に反応した。
「渡さない! レオンは俺が…」
「アァ!?」
 山崎の睨みに、デイルは思わず後ずさりした。
 常に生死のかかった世界に身を置く、本物の目だ。
「チッ。これくらいでビビりやがって。てめぇみたいな
甘っちょろいガキに何ができんだよ!?」
 デイルは今すぐにでも、山崎に突っかかりたかった。
 しかし、体が思うように動いてくれない。
 動こうとすればするほど、拒否反応を起こすのだ。

 自由に動くようになった時には、既に山崎の姿はなかった。
(俺は…、まだ甘いのか!?)
 自分の不甲斐なさに、悔しさの込み上げるデイルだった。

 サウスタウンに存在する一軒の空家。
 中の椅子に、一人の女性が座らされていた。
「ふぅ。ただいまぁ!」
 空家にレイラが入ってきた。
 そして、椅子に座っている女性の様子を見る。
「おっ、なかなかいい感じじゃない」
 レイラがニッコリとする。
「さて、朝日が昇ったら、イベントのスタートだよ。せいぜい
愛が導く残酷ショーを見せてあげてね。舞姉ちゃん!」
 レイラがそう呼びかけると、椅子に座ってる舞の瞳が、
妖しく輝きだした。


 
第29話に続く
第27話に続く
図書館に戻る