餓狼伝説
〜狙われた狼〜
作者 タイ米
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| 辺りには焼け焦げた臭いが漂っていた。 全身に火傷を負い、ぐったりと地に伏すアンディ。 それを見下ろす舞。 「フフッ。案外、呆気なかったね…」 舞の背後にレイラが現れた。 「あのテリー・ボガードの弟だっていうから、もう少し 楽しませてもらえるかな、と思ってたのに、とんだ見当 違いね」 クスクスと笑みを浮かべるレイラ。 「まあ、こんな雑魚にこだわっても仕方ないか。舞姉ちゃん、 さっさと息の根を止めちゃって」 舞の瞳が妖しく輝く。 そして、レイラの命令を了承したのか、攻撃を振るおうと する。 その時だった。 「!?」 アンディの目がカッと見開き、舞に浴びせ蹴りを喰ら わせた。 「あら、まだ意識があったのね?」 レイラが口を開いた。 「舞の様子がおかしかったから、何事かと思ったが、君の 仕業だったんだね?」 アンディが尋ねた。 「そうよ。彼女が私を探しているようだったから、姿を 現したの。そしたら、目の色変えて襲い掛かってきちゃって。 少し落ち着かせるために、洗脳したってわけ…」 「君も例のバッジをつけてるな。レオンの手下だな?」 「バッジが欲しければ、まずは彼女を倒す事ね。できればの 話だけど…」 レイラが舞に目を合わせる。 舞の目が光る。 「さあ、舞姉ちゃん。アンディ・ボガードを殺しちゃって!」 レイラの命令と共に、舞がアンディに襲い掛かる。 「舞、そういう事か!」 そうすると、アンディはいきなり構えを解いた。 「何!?」 舞は驚きつつも、アンディに攻撃する。 しかし、アンディは何もせず、舞の攻撃を受け続けた。 レイラは、アンディの意図をすぐに悟った。 「なるほど。攻撃を受け続けて、正気になるのを待つ作戦ね。 だけど、それは無駄よ。私の洗脳術はそんな安っぽい方法で 解けるほど甘くはないわ!」 だが、アンディは攻撃を受け続けた。 舞の攻撃は決して甘くない。 一つ一つの攻撃が、容赦なく、アンディの体力を奪っていく。 「フン、わからない人ね。舞姉ちゃん、一気に決めちゃって!」 舞は突進し、両手に持った扇で、アンディを打ち上げた。 「行くわよ! 花嵐!!」 舞の技の中でも、一、二を争う威力の技。 アンディは、それもまともに喰らった。 完全な手応えを感じた舞は、これで終わったと確信した。 しかし、アンディは荒い呼吸になりながらも、起き上がって きた。 「何ですって!?」 これにはレイラも舞も驚いた。 「気付かないのか、舞。お前は操られている事に…」 「だから言ってるでしょう。あなたのやり方では、私の洗脳術 は解けないって。それどころか、あなたの言葉すら、今の彼女 には…」 「舞! 今の僕達の敵はレオン・バーンズだ! こんな所で 争ってる暇はないはずだ!」 レイラの話も聞かず、アンディは舞に語り続ける。 「まだわかってないわね。だから…」 「舞ィィッ!! 僕達の絆は、そんな洗脳如きで断ち切られる ものなのか!!?」 アンディが大声で叫んだ。 その叫びは、周りを静寂に導いた。 この光景にレイラが笑い出した。 「ククッ、ハハハハッ! 呆れた。女々しいったらありゃ しない。今まで散々、嫌がってきた癖に、いざとなったら『絆』 なんて言葉を吐き出す。虫がいいにも程があるわよ!」 「……」 舞は沈黙を貫いた。 「もういいわ。こんな茶番なんてさっさと終わらせましょう。 舞姉ちゃん、アンディを殺しなさい!」 だが、舞は動かない。 「何やってるの? 早く…」 「わ、私は…」 舞が口を開く。 自分の心の中で、必死に彼女は戦っていた。 「私は…」 「まさか、こんな事で!?」 「あなたの下僕なんかじゃないわ!!」 舞の目が、レイラを睨む。 そして、側転をしながら、自らの体を業火に包んだ。 「不知火流の奥義を受けなさい! 超必殺忍蜂!!」 「こ、こんな事って!!」 反応の遅れたレイラは、舞の攻撃をまともに喰らった。 遠くにまで吹き飛ぶレイラ。 彼女は、そのまま立ち上がる素振りを見せなかった。 「舞!」 舞の下に駆け寄るアンディ。 「アンディ!」 舞も、アンディに近づき、自ら抱かれていった。 「お、おい、ちょっと…」 アンディは、少し照れくさそうに言った。 「もう、馬鹿! 来るのが遅すぎるわよ!!」 舞は涙を流しながら言った。 その涙が、アンディの肩にこぼれる。 「…ああ、悪かった」 アンディは舞に小声で謝った。 ギースタワー社長室。 レオンは、今までの一部始終を全て確認していた。 「なるほど。テリーのお仲間も中々やるじゃないか。だが、 これで全て終わったとは思わない事だ…」 「その通りだぜ…」 レオンの背後で声がした。 振り返ると、そこには洗脳から覚めた山崎の姿があった。 「敵意が感じられるな。裏切り…か?」 「冗談言うな。俺はてめぇの味方になった覚えなんざ、 これっぽっちもないぜ!」 山崎が舌を出し、口の周りをゆっくりと嘗め回した。 |