もう一つの未来〜もし、この星が…


NO.3

作者 クラッシュさん


ムロフシは訓練室に着いた。
そして、そこには真剣を持った男と小柄な男が向かい合っていた。

「よう。特訓は進んでるかよ?」

ムロフシの声が訓練室に響く。

「…んっ?ムロフシ。やっと起きたか。」

小柄な男がそう言う。

「ああ、おかげさまで良くない夢を見てたよ。」

ムロフシはそう言い返すとサンドバックに向かって歩いていく。

「この特訓中は集中しろ、キハラ。集中してないと叩き斬られるぞ?」
「あ、すまん。」

真剣を持った男に注意を受けた、キハラと言う男は再び構えに入った。

「堅いねぇ、トモヤ君は。」

トモヤと呼ばれた男はムロフシの言葉を無視しているかのように黙っている。
ムロフシが名字ではなく、名前で人を呼ぶのはホープ以外にはこのトモヤという男だけかもしれない。

「見ていてやるよ、お前らの特訓。」

ムロフシのこの言葉以降、訓練室は何もなかったかのように静かになった。
キハラは相手の剣だけを見ている。するとトモヤが動き始めた。

ビュンン!!!

トモヤは剣を大きく振るった。そして、それを軽々とキハラは避けた。

ビュン!!シュッ!!ブンッ!!ギュン!!

トモヤはさらに素早く剣を振るう。キハラはそれをも避け、体勢を低くして、握り拳をつくり素早く繰り出しトモヤの顎の寸前で止めた。

「…!!」

木原は汗をかいていた、決して疲れていたわけではない。木原は拳を降ろすとボソリと言った。

「ふっ…隠してたな?」
「相手は何を持ってるかわからないもんだ、気をつけな。」

トモヤの片手にはキラリと光るナイフがあった。
そう言うとキハラは微笑んで言った。

「負けたよ。まさか、剣を片手で持ってたとはな。完敗だ。俺には刃先しか見えなかった。おまけに…」

キハラの着ている胴着の襟が綺麗に斬れている。

「本気を出してたら、アッパーをする前にそのナイフで斬られてたな。」
「まあ、俺にもう一つ刃物を持たせたってだけでも、充分、評価に値するぜ。」

トモヤは自信ありげに笑いながら言った。

「へっ、よく言うぜ。」

ムロフシが割り込むように言う。

「ムロフシ…特訓しにきたのか?」

剣をしまいながらトモヤが言う。その言葉にムロフシは素っ気なく答えた。

「それでなきゃ、ここにはいねぇよ。」

水分を補給し終わったキハラがタオルで口を拭き終わった後に、ムロフシを見て言う

「そりゃ、そうだな。俺らは一旦、部屋で休むがお前はどうする?」
「せっかく来たんだ。5時間ほどはやってくよ。」
「そっか。んじゃ、頑張れよ。」

トモヤがそう言い残し、二人が去っていくと、ムロフシは再びサンドバックに向かって行き、サンドバックの前に立つと…一発のナックルをサンドバックに喰らわした。

「さて、ストレス発散もかねて特訓するか。」

彼の目はすでに「目つきの悪い男」ではなく。「格闘家の目」になっていた。


・続く


 

NO.4に続く
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