もう一つの未来〜もし、この星が…


NO.6

作者 クラッシュさん


ブロロロロロォォォォ…!!!!

ムロフシは風をきりながらバイクで走っていた。
バイクの音は静かな外にはとても大きかった。
いつものように歩いて移動したならば、聞こえるのは自分と仲間の足音だけしか聞こえない。あと、聞こえるとすれば化け物の鳴き声や足音。
そんな世界からバイクの音が急に消えた。
彼はどうやらDエリアに到着したようだ。

「速ぇな。バイクってヤツは。10分でここまで来たか。」

バイクのエンジンをきったムロフシは辺りを見回した。

「へっ…あいつら、また随分と派手にやりやがった…。」

辺りには耳の先がとがっていて、羽根が生えている悪魔のような化け物の死体がごろごろと転がっている。

「これじゃ、俺の仕事はなさそうだな。クソッ、ハマサキ博士め。雑魚ばかりの場所教えやがって…まあ、いいか。えっと、トモヤ達は…」

静寂の中、ムロフシは一人で目を瞑って、耳を澄ませた。

「(足音が聞こえる……あっちか?)」

ムロフシは音の聞こえる方向へと向かって行った。
しかし、そこに待っていたのは残酷な光景だった。
足音が聞こえた場所に駆けつけたムロフシはさっきのように辺りを見回した。

「…!」

何か赤い液が地を流れていた。それは明らかに血であった。
ムロフシに嫌な予感がよぎった。

「これは…刀…?」

イチカワの刀だと思われる物が血塗れとなって落ちていた。
その時、微かな声がムロフシに聞こえた。

「ムロ…フ…シ………ク…ン……?」

ムロフシはその微かな声が聞こえる方向に駆け寄った。
そこには先ほどまでとは全く違う表情のホープが横になっていた。
ホープの胸からは大量の血が流れ出ている。

「ホープ!!おいっ!おまえ…大丈夫か!?」

ムロフシは必死になってホープの止血を行う。

「あの…ね……凄い…強い……の……が…私た…ちを…」

今にも途切れそうな声でムロフシに語りかける

「しゃべんな!死んじまうだろうが!」

ムロフシは額から汗をかいているが拭おうとはしない。
自分自身の事などすでに考えていない。

「私に…構わない…で…。逃げなきゃ……殺…されちゃう…」
「言うな!何も言うな!血を止めるのが先だろうが!グダグダ抜かすな!」

ムロフシはホープを少し抱えて自分の手で止血をしようとした。
ホープは今にも閉じそうな目でハッキリとムロフシを見つめている。

「…みん…な…みんな…殺されちゃった…の…あんなヤツら…初めてで…」

血を吐きながらホープは小さな声で言った。
その言葉にムロフシが思わず聞き返した。

「ヤツら…?複数なのか?」
「う、うん…。」

ムロフシが周りを見回すと確かに全員、倒れている…。
冗談ではなかったのだ。

「ねえ…平和になって…自然が…取り戻せたら…花畑で一緒に…寝よ?」

ホープは辛い反面、微笑んで言う。

「わかった!わかったから…もう、しゃべるな…」
「ゴメン…しゃべってたいの…でないと……後悔しちゃう…か…ら…」
「バカ野郎!しゃべってる相手の身にもなりやが……」

ホープの首は急にガクンと力が入らなくなったように上を向いた。
その瞬間、また静寂へと戻った。
ホープの青い瞳はすでに瞼と言う扉の向こうに行ってしまった。

「……。」

ムロフシは黙ってホープを強く抱いた。もう、この行動はホープを喜ばす事でもなんでもない、しかし、ムロフシ本人がこうしたかった。

「おい…後ろの4匹…何笑ってやがる!影でコソコソ覗き見しやがって!」

ホープをゆっくりと降ろしムロフシは戦闘着が血塗れになっているのも構わず素早く立ち上がった。
ムロフシの後ろに立っていた4匹の化け物はニヤニヤと笑いながらムロフシを見つめていた。

「俺を飯とでも思ってやがるのか?クズ共…。」
「クックック…メシ?ダトシタラ、マズソウナ、ヤツダナ!」

一匹がそういうと他の化け物達も大声で笑った。
ムロフシはギュッと拳を握りしめた。その拳からはホープの血かムロフシの血かわからないがポタポタと血が落ちている。

「ソコノ、ニンゲンハ、ヨワカッタ。ツメデヒッカイタダケダッタノニ、ズイブン、「チ」ガ、タクサンデテキタンダ。」

彼は目の辺りを少し、目から出た水を拭いた。さっきまで出ていた汗は乾いてしまったようだ。

「うおおぉぉりゃあああぁぁっ!!!!」

一人の男の闘いがたった今、叫びと共に始まった。


 

NO.7に続く
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