KOFXXシリーズ
漆番隊
『それでも来た道』

作者 蓮華


「これからどうするの?」

「梓が控え室に行きたいって」

「確か……Baroque……?」

「許可は貰ってあるから、来てくれる?」

断る理由もなかったので承諾した。霧絵と梓に着いていく。途中でスタッフらしい人にあったが事情を説明して
通して貰った。それから少し歩くと、部屋があった。ドアには紙が貼り付けてあって『Baroque Heart』と
書かれている。ドアをノックすると声がして、霧絵がドアを開けた。

「……ところでどんなバンドなんだ?」

「はい。パンフレット」

洋介が小声で言うと霧絵が手際よくパンフレットを渡してくれた。パンフレットをめくると、今日出るバンドのプロフィールや
経歴などが書かれていた。『Baroque Heart』は最後の方に書いてあった。洋介は最初から見ていった。

「来てくれたの?梓?」

「これ、お祝いだよ。遙ちゃん」

梓の方に来た背中まで伸びたストレートの栗色の髪をした可愛らしい顔つきをしている少女、浅倉遙に梓が手に持っていた
鞄の中から手作りらしいロールケーキを出した。遙は梓の友達のようだ。控え室には三人居た。

「友達?霧絵は知っているけど」

遙が後ろにいた霧絵たちを見た。霧絵のことは知っているが飛鳥と洋介に関して走らないようだった。

「僕は草薙飛鳥、そっちは土方洋介」

「よろしく」

「わぁ、ロールケーキだ」

ロールケーキを喜んだのは肩までのセミロングで黒い髪にカチューシャをしている少女、名前を羽有莢(うゆう さや)と言う。

「あら、いらっしゃい」

読んでいた本を閉じるとパイプ椅子に座っていた少女もこっちに来た。銀色の髪をしていてお嬢様と言った雰囲気をしていた。
姫崎麗、バンドではキーボード兼コーラス、たまにヴァイオリンを担当している。莢はベースを担当していて、遙は
ギター兼ボーカルをしているらしい。教えてくれたのは梓だった。

「ライブの方、見ているから頑張ってね」

「ありがとう。精一杯やるよ」

「梓ちゃん、私の遙ちゃんに手を出さないでくださいね」

「いや、梓はそう言う趣味はないと思うんだけどさ……」

励ましている梓とそれを受け取った遙、麗はそれに嫉妬をしているようだったが、霧絵が呆れたようにそれを否定していた。
飛鳥は控え室を見回していたし、洋介はパンフレットに集中していた。ようやく『Baroque Heart』の所を
読めそうになっていた。ページをめくる。そして、表情を変えた。僅かに手が震えていた。
そこに、ドアが開いた。全員が一斉にドアの方を見た。

「お待たせ……飲み物買って……」

入ってきたのは金髪をポニーテールにした女だった。パンフレットには彼女が『Baroque Heart』の
ドラムだと書かれていた。しかし、『Baroque Heart』のドラムではない彼女を知る者が控え室にいた。

「……レン、さん?」

パンフレットが下に落ちる。

「洋介……?」

想わぬ再会に彼女の抱えていた飲み物の缶が落ちた。缶の落ちる音が控え室にした。
あの日、任務がようやく終わり帰ってきた洋介を……漆番隊を待っていたのは零番隊隊長であるレンが辞めたことと
そしてエリーが行方不明になったことだった。探したが、レンの行方は解らなかったのだ。
レンは踵を返すと走った。

「おい、待て!!」

洋介もその後を追いかけた。何があったんだと場が一瞬騒然となった。

「レンさんと土方くんって知り合いだったの?」

「解らない……」

最初に口を開いたのは遙だった。聞いてみるが、梓は首を横に振るばかりだ。

「もしかして別れた恋人通しとか?」

「……そうなのかい?」

莢が言うが霧絵は首を傾げていた。そんな話は聞いたことがなかった。疑問ばかりが、部屋を満たしている。

「そんな風には見えませんでしたわね」

「僕も同意見だけど……ところで、ライブの方は大丈夫なの?」

「どうしよう。レンさんが居ないと」

飛鳥と麗は状況を分析していたが別れた恋人通しには見えなかった。むしろ、何というか、こういう言葉があっていた。
同胞と言うべきか、たとえて言うなら同じ戦場にいたかのようなそんな関係だ。飛鳥がライブについて聞いてみると、遙が慌てていた。

「とりあえず、待ちましょう。幸い私たちは後ですから」

洋介とレンの関係については解らなかったのだが、待つことにした。


走ってたどり着いたのは、公園だった。デートスポットによく使われている公園らしいが、今はカップルがそんなに居なかった。
レンが走って、息を整えていると、そこに洋介が追いついてきた。

「……何でアンタが日本に?」

「色々、あった……世界って狭いな」

正直に感想を言うと、レンは洋介を見た。変わっていなかった。最後にあったときよりも、少しだけ成長したのかも知れない。

「『ホーリーナイツ』は変わってないか?」

「少し変わったな。零番隊の隊長が、アリス・レイフィールドになった」

「そうか……私が居なくても動いていくものなんだな。そういうのは」

「俺が居なくなってもだ」

苦笑いを見せる。『ホーリーナイツ』何て一人や二人欠けても動いていくものだ。人間の身体のように少しぐらい怪我をしても
修復されていくように誰かが消えれば誰かが埋める。大怪我でもすれば聖騎士団も死ぬかも知れないが、それはなさそうだった。
自画自賛というわけではない。曲がりなりとも、政府の武力をやっているのだ。

「お前らの部隊は元気か?」

「相変わらずだ」

少しだけ懐かしんだ会話だった。レンは手すりに手をかけた。手すりにもたれるようにして空を見た。
星が輝いていても見えにくい空だった。

「……正義の味方になれると想ってた……」

「正義の味方、か」

「テレビの戦隊物みたいに、白黒はっきりしていれば楽だったのに」

白黒はっきりしている戦いも在れば、はっきりしていない戦いもあった。それが実際なのだ。
パスカルも”正義なんて滑稽ものだ。一筋の川で限界づけられるのだから。ピレネー山脈のこちら側では真実でも、
向こう側では誤りなのだ”とも言っている。

「そっちの方が、楽だな」

「結局、私は逃げたけれど……エリーを殺してしまったから……見殺しにしたんだ」

「……だから、『ホーリーナイツ』を辞めたんだな」

「洋介……アンタはこんな私が馬鹿だと思うかい?」

「……それでレンさんが楽になるならそう想う」

それから少しの沈黙があった。誰かが見ていればカップルの別れ話にでも想うかも知れないが、話していることは
人の命を預かっている……預かっていたとも言うが隊長たちの会話だった。

「相変わらずだね。…ねぇ、私はどうしたら……償え……」

レンが言いかけたとき、洋介はスポーツバックから紅い鞘の日本刀、『阿修羅』を取りだした。
それを抜くと、鞘をベルトに挟んだ。
繁みからテレビなどでおなじみの黒服の男が出てきた。黒服の男というのは相場で妖しいか運転手か、偉いところに
つとめていると言うことになっている。拳銃を出してきた男を斬った。


 

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