を待つ主の館

ファイル5「三階其の弐」
「死ネーー!!」
一斉に飛びかかってきた黒い覆面集団。
ただ、ここは館の通路という狭い場所。
たくさんの黒が、一度にたくさんの奴が
飛びあがったせいで、頭をぶつけあったり、
殆ど飛べずに沈んだりしてしまったり、
どうやら床に穴も開いたような。
「……」
覆面は目が見える構造になっている。どうやら顔を
しかめているようだ。
「もう一回、デッドゼイ!!」
覆面の一人が気を取り直して、再び飛ぼうとした、が。
「いで!」
頭の後ろで何かがきた。
後ろを振り替える。
「何をしようとしている?」
テリーによく似た長髪、金髪の男が、覆面の前で手を
開いている。
覆面がこっちを振り向くのを待っていたようだ。
「お、俺は、邪魔者を倒すだけだが…それもやめるさ」
いきなり両手を上に上げ、言葉も言葉となってない。
明らかに動揺している。
「問答無用…!飛翔拳!!」
男の手から気が放たれた。吹っ飛ぶ覆面の一人。
「……お前も来てたのか、アンディ」
テリーが笑みを幽かに浮かべる。
「僕だけじゃないよ。他にも、あと…」
「え?他って、誰?」
「二人もよーく知ってるはずだ」
そう言ってアンディが三階の入り口のほうを向くと、
忘れられていた覆面の集団がたくさん。
そして…声も。
「KOFでもカプエスでも、俺を忘れる奴はどこにも
いねぇよなぁ!!オリャーーーッ!!」
大きい声とともに、見るものを圧倒するほどの大きい
竜巻がやって来る。
竜巻は、覆面集団を飲み込み、そして窓や壁を勢いよく
壊して館の外に出てしまった。
「オッシャァァァーーー!!」
威勢のいい声が館中に際限なく響く。
「はりきってんな、ジョー」
「お前がピンチの時は、火の中水の中どっからでも
駆けつけてやるぜ、テリー!」
そんな誇張した言葉も、彼が言うと本当に
やってのけそうに聞こえる男、ジョー、ヒガシ。
彼はそう言うと、大きく息を吸い、こう言い放った。
「おいおい!!もういねぇのか!?いるなら出てこいよ!
このムエタイチャンプ、ジョー東様がまとめて相手して
やってからよォ!!」
館中に声が響く。
声に反応したのか、覆面が一人下の階段から現れる。
誰かの声がうるさかったのか、耳を押さえているが。
「くらああああ!!」
片耳を押さえたまま、そいつは四人に向かう。
しかし、そいつの側を、一つの陰が通る。
そして、陰とともに、覆面の体が上に上がった。
「あれは…」
とぽかんとするアンディ。
「揃ったわね、人員が見事に」
二つ頷くマリー。
            ☆
「不知火流奥義、花嵐!!」
その言葉とともに、陰…不知火 舞は、扇子で覆面を
床に叩きつけた。
「うお…っ」
そして舞は地面に降りると、
「よっ、日本一ぃ〜」
お得意の決めポーズを魅せた。
            ☆
「俺にマリーにアンディにジョーに舞…メンツが全員
揃っちまったな」
いまだここは三階。ただしもう邪魔はなくなったと
見える。
そんな中、手を頭の後ろで組みながら、テリーが
そんなことを言った。
「本当にそうね」
マリーもその意見は当然のごとく同じのようだ。
「…でも、あなたたちがここにきたのも、偶然、って
わけはないでしょ?」
そう言うと、テリーのほうを向くマリー。
「これを、誰か一人は持ってると思うんだけどな?」
マリーの目が、それを合図していたように、テリーが
例の招待状を取りだして三人に見せる。
その次に口を開いたのは、アンディ。
「やっぱり、兄さんのところにも届いてたんだね」
「届いたのは私のところよ。この依頼がキナ臭そうだから
相棒を呼んだのよ。ま、本当にアレだったんだけど」
「そっか。僕もこの招待状には、裏があると思ったんだ」
そう言ってアンディはテリーのと同じ形の招待状をだす。
「一人でこいとは書いてなかったから、頼りにできる
仲間…この二人と来たんだよ」
アンディがそう言ったところに、舞がムスッとした表情で
やってくる。
「今、一瞬『間』があったわね…?そうでしょーね。
今回もあたしをまたまたのけものにしようとしてさ!」
「いや、今回は、本当に何があるか解らないから、
君を行かせるわけには…」
脚色のない言い訳でこの場はすませたいアンディだが、
こんな事で舞が止まるわけがない。
「問答無用!今度からはあたしに黙ってどっか行くな!
水鳥の舞!!」
「うおわっ!!」
怒りの水鳥の舞をなんとかかわしていくアンディ。
「女にはやさしくしろよー」
「まったくだぜー」
ジョーとテリーにフォローされるどころか、逆に
からかわれるハメになるアンディ。もはや困り顔である。
「ち、ちょっと二人とも!」
アンディは、舞の扇子から猫に追われるネズミのごとく、
にげているのみ。
            ★
「ハハ…」
とかなんとか笑ったあと、狼が乗り移ったような
真剣な表情に戻り、帽子を被り直してテリーは言う。
「メンツは揃った!一気に屋上にいくぜ!」



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