を待つ主の館

ファイル9「究極の強者」

ザルゴスの手に、赤いものが染み着く。
そう、爆発とともに…
「フッフ…弱者が…」
片手につかんでたその赤くなったものをゴミの
ように投げすてる。
            ☆
「………」
「テ…リー…?」
赤くなったもの…血で真っ赤に染まったテリーの側に
マリーが来る。
テリーは動かない。
そしてその彼を呼ぶ声が、少しずつ嗚咽に変わってゆく。
「……前に言った…かもしれないけど…私…昔一緒…
だった恋人が死んで……しばら…く…気持ち…
沈みがちだったの…
ねぇ…また…同じことに……っ…私…なっちゃうの?」
            ☆
かつてマリーには恋人がいた。
名前はブッチ。
一緒にフリーエージェントとして働いていた中で、
二人の仲は親密だったという。
しかし、それも長くは続かなかった。
あの凶弾が、マリーの父とともに、
二人を引き裂いた。
そんな辛いことが、彼女の軌跡にある。
「……あなたが…今……大事……な私のパートナー…
なのに……」
「お前が泣こうともあがこうともそいつは立てぬ。
この世には奇跡はないぞ」
テリーの手をとって哀しみを訴えるマリーを、
ザルゴスは非難する。
だが、マリーにはそんなのは聞こえてない。
「テリー!あなたといういたから私は元気でいれるの!
あなたを知らなかったら私はずっと凍った牢獄の中に
いたのかもしれないの!
あなたという存在がいたから……だから、お願い……
目を開けてよぉぉぉっ!!!」
マリーの目にはすでに涙がこぼれ落ちていた。
涙がテリーのもとに落ちてゆく。
だが。
「マンガではそれで目が覚めたり、傷が癒えたりするのが
ありがちなシーンだな」
口元を緩ませてそんなことを言ったのはザルゴスだった。
「さっきも言った筈だ。この世に奇跡はないと。
それとも…単刀直入に言ってやってもよいが?」
「言わないで!!」
「テリー・ボガードはな……」
「嫌!言わないで!!!」
「……死ぬのだ。私が与えた傷によってな」
その言葉は1人の哀しみと1人の怒りのスイッチを
同時に押す言葉。
「………てめぇ……俺の大切なダチをこんなにした
挙げ句、まだそんな減らず口叩きやがんのか!
許せねぇ!!」
「ま……待つんだ!ジョー!!」
アンディが止めるのも聞かず、ただザルゴスに向かおうと
するジョー。の筈が。

ゴゴゴゴゴゴ

突然館が揺れ出した。
さすがにジョーも動きが止まる。
「な、なんだぁ!?」
「お前のような変態の相手をするほど私も暇ではない」
「誰が変態だ!!」
お前だ、ジョー。
「したがってここも用済みだ。そこでお前たちの墓場に
作り替えることにした」
「何よそれ!冗談じゃないわよぅ!!」
「この場所に有り難くその身を捧げるがいい。
ハッハッハッハッハ……」
ザルゴスはそれだけ言うと、その場の窓から
ガラスを突き破って、館の外に出てしまった。
しっかりとは確認できなかったが…
            ★
「なんて奴だ…この10階から命綱なしで
飛び降りるなんてよぉ」
「そんなことより、早く脱出……くっ!」
ザルゴスがとった常識破りの行動に驚くジョー。
今の行動を優先したいが傷が深く、まともには動けない
アンディ。
それよりも、見て分かる大変な事態。
「うわぁっ!!壁が!!」
今いる部屋の壁が崩れてきた。
このままでは皆が潰される。
「テリーとアンディは、誰かが背負っていかねぇと
駄目だな」
これを切り出したジョー。
「…確かにね。じゃ、私は」
言うと思った。
「いちゃつくなよ」
「わーかってるわよ!!」
やれやれ、今さっき見せた悲痛の顔は無くなり、
すっかりいつもの舞である。
「そっちはいいか?アンディよ」
「僕は別に……それより」
ちらりと自分の右のほうをみやる。
いまだ倒れたままのテリーと、すっかり意気消沈して
地面に膝をついているマリーであった。
「多分、兄さんのこの状態に昔の恋人を重ね合わせて、
それにさっきの奴の言葉がマリーを」
アンディが一言呟いたあと、マリーに話しかける。
「早くここをでよう」
「……………………」
マリーはいまだ動かず黙ったまま。
「早くしないと、君も…」
「ねぇ、アンディ……奇跡って、起きるかな?」
「えっ?」
出るとは思えなかった一言。
「テリー…きっと目を覚ますわよね…
また私と…一緒に調査の仕事…してくれるわよね…」
「当然だ」
即答するアンディ。その背中には、あの影が
見えたという。
「……ありがとう……」
嬉しさのあまり、目の上に熱いものがこみあげていた。
「話まとまったんなら、早く脱出しようぜ!!」
「ほら、アンディ」
「あ、ああ。……兄さんは誰が」
「……」
テリーはマリーが相談なしでおぶっていた。
パートナーという縁なのか、それとも。
「よし!準備ができたようだな!急ぐぜ!」
急いで下へ下へ下りていく。
そして入り口まで戻って館から離れる。

館が壊れていく。

4人が再び館の方向へ目を見ると、
館は館から石の塊に変わっていた。



ファイル10へ……
ファイル8に引き返す
図書館に戻る