『中国の凄い奴』
第2話
「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!ったく、やってらんねぇ!」
ぜぇはぁと息を切らし、ガニまたで繁華街の路地裏を走る青年。
口には煙草。・・・しかし、どうやら咥えているだけで、吸ってはいないようだ。…というよりも吸う余裕がないと言ったほうが正解か
「お〜〜〜い!!待てっての!暦なんだろ!?あんたよ〜!」
彼の10bほど先には白髪混じりの長髪をなびかせる初老だろう男が走っていた。
「・・・」
「けっ!だんまりかよ!こんな中国くんだりまできて収穫なしじゃぁ、ギャラ負けの仕事になっちまう!本気だしちゃうぞぉ!いいのかぁ!!?」
赤いジャケットの下の黄色いTシャツは既に汗でぐちゅぐちゅだ。実は彼は猛既に本気なのかもしれない。
ゴミ箱や、のら猫を蹴っ飛ばし少し大きめの広場に出た。
すると目の前には急に人の波が現れた。
「うごっ!?」
彼は大げさなリアクションで驚いた。
「・・・はぁ、親父のくせしやがって素早い奴だぜ・・・。おまけに地理を知り尽くしてやがんな。ここまで出れば俺が見失うってことがみえみえだったわけだ・・・くっそ!」
プッと根元まで火の迫った煙草を吐き捨てる。すると、すれ違う少女に睨まれ、彼はバツの悪そうに今捨てた煙草をまた拾った。
そしてジャケットから携帯電話を取りだしどこかにコールした。
「あ、もしもし?お世話なりまっす。火神探偵事務所の火神ですけど・・・、えぇ、はい。・・・はぁ、それでですね、今から転送する写真の男をちょいと調べて欲しいんですわ。はいはい、今回はそれで任せますんで、毎度すんませんね。・・・え?助手ですか?女の子なら随時募集してるんですけどね、野郎相手に貴重な経費削ってまで給料払えないっすよ。支払いはいつもの通りで。じゃ、お願いしますね。・・・あ、それとしばらくどたばたと依頼するかもしれないっすけど、その時はまたよろしく。はい、・・・それじゃ。」
『ピ』
「ふぅ・・・。『暦』かぁ・・・。せっかくの手掛かりがなぁ・・・。」
溜息混じりに新しい煙草を吸おうとすると、箱の中身は空だった。
舌打ちする元気も無くし、彼、『火神 政樹』は通りの壁にもたれかかった。
「いやぁ〜収穫、収穫♪」
同じ時、政樹とは正反対に上機嫌な男が通りを鼻歌混じりにあるいていた。
「まっさか、キュベレイ買いに来てPGMk-Uに出会えるなんて・・・。最近、ネット繋いでなかったからなぁ、ロケ続きで・・・。出るのは知ってたけどまさかもう発売してるなんてぇ♪雨でも降ってロケ中止になってくんないかなぁ〜」
「危ねェな!」「きゃっ!」「うわ〜」
不意に背後から数人の声が聞こえた。何事かと振り返ると
『バキ☆』
ギリギリ視界に入ったのは白髪の混じった長い髪。
そして、その次に視界を釘付けにしたのは、Vの字に見事潰れた『PGMk-U』
その場に立ち尽くしわなわなと彼は震えていた・・・。
すると、周りからひそひそと囁く声が聞こえてきた。
「ねぇねぇ、あれってもしかして・・・跳飛 龍黄じゃない?」
「え!・・・ま、まっさかぁ・・・」
普段なら素人に素性がバレそうなときはすかさずなんらかの対処をする龍黄だが、この時はただ潰れた箱を眺めて呆然としていた。
しかし、ある子供の一言で彼の闘争心に火が着いた。
「ぼくの・・・ぼくの・・・ガン○ムMk-Uが・・・」
「ねぇねぇ、お母さん」
「なあに?」
一人の子供が龍黄を指差して言う。
「あのお兄ちゃん、泣いてるよ。」
カチ☆
スイッチが入ってしまった。次の瞬間龍黄の姿はもう見えなくなっていた。
「どこの誰だか知らないけど!せめて謝ってもらわなきゃ気が済まない!!」
半ばヤケになった龍黄は長髪の男を追った。
『そりゃぁ泣くでしょ?だって、中々無いんだよ?中国には!プラモだけ買いに日本に何度行こうと思ったか!ただでさえ僕の社会的な目があるからいけないってゆうのに!』
心の中で大声で龍黄は叫んだ!
真昼間の鬼ごっこは続く・・・
―ロケ班。
「・・・ん〜?今日は雨になりそうだな・・・。おーいみんなぁ、一応いつでも撤収できるようには準備しとけぇ」
龍黄が空きをもらってから2時間程経っていた。
第2話 完
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