SNKvsCAPCOM
ROUND5:「決着」
作者 タイ米
二人を包んでいた火柱が消える。
観客が見たものは意外な光景であった。
京の拳がリュウの頬を捉え、リュウの拳が京の腹を強
烈に突き刺していた。
「あ、相討ち!?」
真吾が呟く。
二人ともあまりの衝撃に後退する。
だが、それは一瞬の出来事だった。
すぐさま、次の攻撃のモーションに両者とも入る。
相討ち、相討ち、そのまた次も相討ちであった。
両方とも、とっくに体力の限界を超えている。
それでも、ただひたすら勝利を目指し、二人は戦い続
けた。
「アァァァァァ〜〜ッッ!!」
「ヤァァァァァ〜〜ッッ!!」
またしても、互いの頬に拳が突き刺さる。
(チィッ、このまま相討ち繰り返してたんじゃ、いつ倒
れてもおかしくねえ。やはり、ここは一発、先にいいの
を入れねえと…)
京が思案する。
と、ここで真吾の叫び声が聞こえた。
「危ない! 草薙さん!!」
我に返る京。
リュウの拳が眼前に迫っていた。
「させるかぁっ!!」
間一髪で横に避ける京。
一瞬だが、リュウに隙ができた。
「ここだ! 逃がさねぇっ!!」
ありったけの炎を拳に込め、それを解き放った。
「喰らい…」
京の秘奥義、裏百八式・大蛇薙。
94年度の大会でも、この技を紅丸に喰らわし、優勝
を決めた。
「やがれぇぇっっ!!」
炎は確実にリュウを捉えた。
これが決まれば、いかに相手とて、ひとたまりもない。
手応えがあった。
この瞬間、京は自分の勝利を確信した。
その先にあるのは、倒れている相手。
そして、それを見下ろす自分。
炎が消えるまで、そのビジョンを彼は思い描いていた。
しかし、現実は違った。
「何だと!?」
渾身の大蛇薙を喰らい、尚も立ち続けているリュウ。
しかも、波動の構えを既に行っていた。
「大蛇薙を喰らうのは、承知の上だったのかよ!?」
「そうでもしないと、こっちも大きい攻撃を当てられそ
うにないからな…」
リュウの拳に気が充満する。
京が防御の構えを取ろうとする。
だが、いかんせん距離が短すぎた。
リュウが気を放つ方が、一瞬早かった。
「真空…波動拳!!」
幾重にも重なった気の弾が、京を襲った。
「ぐあぁぁぁぁ〜〜っっ!!」
悲鳴を上げる京。
それほどまでに、衝撃は強烈なものであった。
そして、その衝撃は、京の体をふわりと浮き上がらせ
る。
地面が京の体を激しく打ちつける。
京のダウンであった。
「く、草薙さん!!」
「京!!」
真吾とユキが叫ぶ。
この展開に呆然とする観客。
レフェリーも、一瞬慌てたが、すぐに冷静さを取り戻
し、京のところへ行って、カウントを取り始める。
「草薙さん、嘘でしょ! 立ってくださいよ!! ここ
まで来て負けちゃダメです!!」
真吾が涙ながらに叫ぶ。
観客も同じく、京に叫び始めた。
ここで、紅丸だけでなく、京までも同じ相手に敗れる
ことがあれば、番狂わせどころで済む騒ぎではない。
日本、いや、世界の格闘シーンにおける大波乱と言っ
ても過言ではない。
と、ここでユキがある異変に気付いた。
「あ、あれは!?」
ユキが指差す方向を皆が見た。
すると、リュウもそこでダウンをしていた。
どうやら、真空波動拳を放った時点で、力を全て使い
きったようだ。
レフェリーが二人にカウントを取る。
どちらかが立てば、その時点で、その者の勝利が決ま
る。
しかし、二人は持てる力を使い果たした。
立つ力さえも…。
テンカウントを数えた時点で二人とも立つ事はなかっ
た。
静まりかえる場内。
「こ、この場合は…?」
真吾が呟く。
すると、レフェリーがマイクを持ち、こう告げた。
「草薙京選手とリュウ選手のこの勝負、両者ダウンによ
り、引き分け。同時優勝とさせていただきます!!」
引き分け。
この決着に、観客は一瞬、黙ってしまった。
だが、次の瞬間には、皆、惜しみない拍手を送った。
最高の戦いをしてくれた、眠っている二人の英雄に対
して…。
こうして、全日本異種格闘技選手権は、京とリュウの
同時優勝という、前代未聞の結末で幕を閉じた。
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