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ROUND12:「厄介な相手」

作者 タイ米

 先程とはうってかわり、さくらとユリ、両方とも互角
の試合展開を見せていた。
「よぅし! それでこそお前だ!!」
 弾の応援にも熱が入る。
 タクマも二人の組み手を見ながら、心の中で呟いてい
た。
(フム。このさくらという少女、まだ型は荒削りながら、
それなりにしっかりしているようだな。練習次第では、
かなり化けるやもしれん。それに…)
 その時だった。
 さくらの正拳が、ユリの顔面を捉えた。
「よっしゃ! 反撃開始ぃ!!」
 弾が叫ぶ。
「咲桜拳!!」
 間髪入れずに突進し、ユリの顎にアッパーを入れた。
 何とか、ダウンだけは回避したユリ。
 しかし、さくらの怒涛のラッシュが続いた。
 今度はユリがガードを固める番だった。
「いいぞぉ! さくら!!」
「な、何て子だ。ユリの飛燕鳳凰脚を喰らって、まだあ
んなラッシュ力を残してたなんて…」
 リョウもこの光景に驚く。
「いい目をしている。どんな時でも、希望を決して捨て
ない目だ…」
 タクマが呟く。
「そして、あの目を持った相手こそ、一番厄介なのだ。
従来では決して考えられん事を、平気で起こしてくるか
らな…」
 リョウとロバートは再び、戦ってる二人に注目した。
 タクマは戦ってるユリを見て、こう呟いた。
(さて、ユリよ。今の相手はちょっとやそっとじゃ、倒
れはしまい。そんな時、お前はどうするか。見せてもら
うぞ…)
 さくらのラッシュは、どんどん激しくなっていき、遂
にユリを壁に追い詰めた。
「チャンスだ、さくら! 相手をメッタ打ちにしてやれ!!」
「やばいで、ユリちゃん! そこから逃げるんや!!」
 しかし、ユリは壁から離れようとはしない。
 さくらはここぞとばかりにラッシュを続ける。
「な、何やっとるんや、ユリちゃん! はよう逃げんと…」
「いや…」
 ロバートの呼びかけにリョウが言い返す。
「何や、リョウ…」
「あいつ、あれを狙ってるな…」
「あれって、まさか…」
「ああ。あのさくらという子には悪いが、有利なのは極
限流だ!」
 タクマもその意図にすぐ気付いた。
(なるほど。一撃必殺の『あれ』を狙いにきたか。飛燕
鳳凰脚のダメージもある。もし、決まれば、さすがの彼
女も立てはしまい…)
 弾は極限流のメンバーの様子を察し、嫌な予感がした。
(ど、どういう事だ? 押されてるのに、さほど嫌な顔
をしていない。まさか、何かが…)
 弾がとっさにユリの方を見る。
 見た目には、状況は変わっていない。
 だが、表情が違う。
 明らかに何かに照準を定めている顔だった。
 それに気付いた弾はとっさに叫んだ。
「さくらぁ! 気をつけろ!! 相手はカウンターを狙
ってるぞ!!」
(え!?)
 しかし、声を出すのが一瞬遅かった。
 さくらの攻撃に合わせ、ユリが体を横に避けた。
(何ですって!?)
 そして、ユリのボディが、さくらの腹を襲う。
「グゥッ!!」
「よっしゃ! 決まったで!!」
「行くよ! 芯・ちょうアッパー!!」
 極限流での正式名称、滅鬼斬空牙がさくらにヒットし
た。
「ボ、ボディの後の強烈2段アッパーだと!?」
 弾は愕然とした。
 さくらは高く打ち上げられ、そのままダウンした。
 カウンター気味に入ったユリのもう一つの大技。
 さすがに、これで勝負あったと誰もが思った。
 あの弾さえも…。
 タクマが二人の側により、試合終了を呼びかけようと
したその時だった。
 さくらが、またもや起き上がったのだ。
 誰もがこれに驚いた。
「君、やれるのか?」
 タクマが尋ねた。
「だ、大丈夫です…」
 そして、肩で息をしながらも、何とか構えた。
「私、やります!!」
 さくらの意思を確認し、再開の合図をタクマは送った。
「し、しぶといわね。今ので完全に倒したと思ったけど…」
「確かに、今の攻撃は凄まじかったです。普通の私なら、
そこで起き上がれなかったでしょう」
「じゃ、じゃあ何故…」
「あの技だから、倒れなかったんです。リュウさんを目
標にしている私にとって、あの技で倒れるわけにはいか
ないんです!!」
 体中に力を入れるさくら。
「そ、そうか。リュウの『真・昇龍拳』をあいつは想像
したんだ! 確かによく似てるからなぁ! 厳密には違
うけど…」
 弾が叫ぶ。
「そ、そんな事ってあるのか? 想ってる人に似た技だ
からって、倒れないって事が…」
 リョウは思わず声を上げた。
「想像以上に厄介だ。あの少女の意識を今の技でも刈り
取れなかった。何という精神力だ。だが…」
 タクマが呟いた。
「その精神力も、もう長くは続くまい…」
 タクマの言う通りであった。
 さくらは、もう限界以上のダメージを受けている。
 そして、精神力も相当使っている。
 あと一発、攻撃を喰らえば、それで倒れてしまうだろ
う。
 弾もそれは理解していた。
「さくらぁ! もうお前は後がない! 最後の一発で決
める気持ちで行けぇ!!」
 力一杯叫んだ。
 それに無言で応えるさくら。
 体力差は、かなりある。
 だけど、攻撃はあと一回が限度。
 そして、あと一発、相手から攻撃を受ければ、それで
もお終い。
 しかし、やるしかない。
 さくらは覚悟を決めた。
(そうだ。リュウさんだって、倒れるの覚悟で真空波動
拳を放ったじゃないか! なら、私も…)
 急にさくらの周りで、気が充満し始めた。
 並大抵の量ではない。
 気を抜くと、一気に押されそうな感じである。
「こ、これはまさか、大技!?」
「覚悟を決める! もう私にはこれしか残されてないん
だ!」
 両拳に気が集約されてきた。
「大技や! ユリちゃん、避けるんや!!」
 さくらが気を集約しつつ、前に出て、1ステップでユ
リの目と鼻の先にまで詰め寄った。
「あかん! あの押し潰されそうな気のおかげで身動き
取れんか!」
「行くよ! これが私の最後の技、真空波動拳だぁ!!」
 さくらが気を解き放った。
 二人の周りを光が包んでいった。



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