SNKvsCAPCOM

ROUND13:「先鋒戦決着」

作者 タイ米

 二人を包んでいた光が徐々に晴れていった。
 皆、その先に広がるであろう光景に、注目していた。
「あ、あれは!?」
 リョウがいち早く叫んだ。
 さくらとユリ。
 お互いの間合いが、離れており、二人とも何かを放っ
た構えをしていた。
「あ、当たったのか? 真空波動拳…」
 弾が呟く。
「はぁ、はぁ。助かった…」
 ユリが息を切らしながらも、そう言った。
「助かった…だと!?」
 弾はこの言葉に耳を疑った。
「極限流奥義の一つ、覇王翔吼拳やな…」
 ロバートが言った。
「は、はお? 何だ、そりゃ!?」
「極限流における気を操る技において、最高峰のものだ。
今の真空波動拳の威力は見事だったが、覇王翔吼拳を貫
くまでには至らなかったようだ…」
 リョウが覇王翔吼拳について、説明する。
「何だよ! てめぇらが何言ってるか、さっぱりわから
ねえよ!」
「簡単に言えば、ユリちゃんは真空波動拳が当たる直前
に、とっさに覇王翔吼拳を出したんや。それで、互いの
気が打ち消しあったんや…」
 ロバートがこの状況を説明する。
 弾は、これを聞いて、思わず体中の力が抜けてしまっ
た。
「そ、そんなのアリかよ。さくらが覚悟決めて放った技
だぜ…。そう易々と相殺されるかよ!」
「覇王翔吼拳も、会得する為にはそれこそ、血の滲むよ
うな努力をしなくてはならない。そう簡単に破られてた
まるか!」
 弾の発言にリョウが反論する。
「とりあえず、これで先鋒戦は勝負ありやな…」
 ロバートが呟く。
 その時だった。
 さくらがゆっくりではあるが、少しずつ歩を進め、ユ
リに近づく。
「ま、まだやる気なのかよ! さくら…」
 弾が叫ぶ。
「だ、だって、こうしてユリさんが立ってるじゃない。
なのに、私が倒れるわけにはいかないよ…」
「何言ってやがる! 今のお前の体力じゃ、攻撃だって
まともにできやしねぇよ! 後は俺達が挽回するから、
だから…」
「ダメなんです…」
「ダメ?」
「リュウさんは、恐ろしい敵と今、必死に戦ってる。い
くら、技が通用しなかったからと言って、ここで楽にな
っちゃ、リュウさんを助けられない。リュウさんを目標
だなんて、言えない!!」
 その瞬間、さくらの中に僅かに残っていた闘気が噴き
出した。
「なるほど。リュウという人物が、どんな者かは知らぬ
が、確実に彼の存在が、ここまで彼女を支えてきたわけ
だ…」
 タクマが呟く。
 次の瞬間、リョウが思い切り、ユリに向かって叫んだ。
「ユリぃ! お前も全ての力を持って、彼女にとどめを
刺すんだ! それが礼儀であり、極限流のやり方だ!!」
「わ、わかった!」
 構え、ユリは一目散にさくらに向かって行った。
 とどめの一撃を刺す為に…。
「飛燕…鳳凰脚!!」
 ユリが最初の蹴りを放とうとした。
 が、その寸前に、さくらがユリに寄りかかった。
「な!」
 そして、腹の部分に両の掌を当てる。
 掌の部分から、気が充満し始めた。
「さくら! んな事したら、お前自身どうなるか…」
「これ撃ったら、どうなるかわからない。こうして動け
る力も全て気に変えるんだから…」
 ユリは戦慄した。
「あなた、本気!?」
「でも、あなたに攻撃を当てるには、これしかない!!」
 掌の気がどんどん膨れ上がっていく。
「真空…波動」
「参りました!!」
 場が静まりかえった。
 ユリの突然の降参。
「ユ、ユリ…」
「ご、ごめんなさい。お兄ちゃん。だけど、私、これ以
上、彼女と戦えない…」
 ユリが涙ながらに訴えた。
「さくらさんを見た時、目がお兄ちゃん達と同じ、命を
賭けたものだった。私は、全身全霊で戦えても、命を賭
けてまでは戦えない…」
 その時、タクマがユリの肩を叩いた。
「もういい、ユリ」
「お父さん…」
「お前の決断も正解の一つだ。お前はもともと、この空
手を護身の手段として習っていたんだ。無理に危険な戦
いに飛び込む事もあるまい…」
「お父さん、ごめん…」
「謝るな。相手をそこまで本気にさせた自分を、むしろ
誇れ!」
 タクマのその言葉に、ユリに少しだけ笑顔が戻った。
 そして、さくらの方をまた向き直った。
「さくらちゃん、ありがとう。あなたとの戦いは、私に
とってもいい経験になったよ」
「私も。こんなに強い人がいたなんて、驚いた。私も最
後の攻撃、放てるかどうか、実はわからなかったから、
降参してくれなかったら、結果は逆になってたかも…」
「さ、両者。元の位置へ…」
 タクマが二人に呼びかける。
「先鋒戦。サイキョー流代表、春日野さくら選手の勝利!
お互いに礼!!」
『ありがとうございました!!』

 こうして、女性同士の先鋒戦は、幕を閉じたのだった。



ROUND12:「厄介な相手」へ
ROUND14:「次峰戦」へ
図書館に戻る