SNKvsCAPCOM
ROUND19:「これがサイキョー流」
作者 タイ米
「らぁっ!!」
序盤とは違い、弾の攻撃が段々とリョウに入り始めた。
リョウも打ち返すが、前と比べて、動きが格段によく
なった弾は、それを冷静に受け流す。
「あいつもやりおるのぉ。認めたくないが…」
弾の腕を素直に評価する事のできないロバート。
それは、何と言っても、弾のある行為によるものだっ
た。
「楽勝ッッ!!」
挑発である。
何度か攻撃を当て、距離が離れてからの挑発。
これだけだったらまだ良いが、ジャンプしつつの挑発、
前転、後転後の挑発と、何故か挑発に関するバリエーショ
ンがやけに豊富だった。
しかも、ただ闇雲に挑発しているわけではない。
要所要所のところでのみ、きっちりしているのだ。
「それがあんたのやり方か。ここまで、コケにされたのは
初めてだぜ…」
「そうかい。なら、もっとコケにしてやろうか?」
気付いてみれば、いつの間にか試合は弾ペースで進んで
いた。
彼独特の空気にうまくはまってしまったリョウ。
段々と大きな隙が生まれつつあった。
「あかん! リョウ! 動きが悪なっとるで!!」
ロバートがゲキを入れる。
しかし、時は既に遅かった。
リョウの腹に手痛い一発が入る。
「ぐぅっ!!」
「てめぇの技のお返しだ! 晃龍拳!!」
アッパーカットがリョウの顎を打ち抜く。
たまらず、ダウンするリョウ。
「お兄ちゃん!!」
叫ぶユリ。
倒れているリョウの前で、またもや挑発をやらかそうと
する弾。
「あいつ、やりたい放題やのぅ!!」
段々、腹が立ってきたロバート。
いや、ロバートだけではない。
ユリも、タクマも、門下生も、この試合とは言い難い雰
囲気に、堪忍袋の緒が切れそうになっていた。
そして、弾のポーズが、それを決定的なものとする。
「へへっ。余裕ッス、てか?」
「そ、それは!?」
一番初めに驚いたのはユリであった。
無理もない。
親指を立て、可愛らしく決めるポーズが、よりにもよっ
て、いい年こいた男にそっくりそのまま真似されたからで
ある。
「あ、あんた! パクリパクリ言ってて、どっちがパクリ
よ! 私の決めポーズ真似してぇ!!」
「せやせや! ユリちゃんに謝らんかい! 金払わんかい!」
「減点とか抜きにしても、警告に値するぞ。君の行為は…」
周りからのブーイングに、少々ウザそうにする弾。
「るせぇな。このポーズは前々から俺が温めてたやつだっ
ての。被ったのは偶然だろうが。それにこの程度の事で、
取り乱しちゃ、格闘家としてまだまだ修行が足らねぇぜ」
「い、今までのが『この程度』やて!?」
その時、8カウントで立ち上がったリョウが口を開く。
「そうだな。みんな、ちょっと騒ぎすぎだぜ…」
「リ、リョウ…」
「お兄ちゃん?」
「これが、『サイキョー流』って奴なんだろ? 相手の内
面から乱しにかかるとは、やるじゃないか…」
「あ、ああ。まあな…」
このリアクションに、弾は意外だった。
今までブーイングが当たり前だった自分の戦法が、相手
に誉められるなど、初めてのことだったからだ。
「皆! ここは自分達も耐える番だ。もし、奴の挑発に怒
りを露にしてみろ。その瞬間に、『極限流空手』は『火引
弾』という男一人に完全敗北した事になるぞ!」
リョウの意外な言葉に驚く全員。
「この戦いは『サイキョー流』に勝ってこその勝利だ。奴
のやり方を否定したら、俺らは『サイキョー流』のやり方
に屈した事になる。そうなったら、試合に勝っても『負け』
なんだよ…」
門下生達は言葉を失った。
「せやな。挑発なんざ、今まで何度も受けてきたんや!
こんなん耐えるの朝飯前やろ。なぁ、皆!」
ロバートが呼びかける。
『お、押忍!!』
門下生が一斉に叫んだ。
「リョウ、OKや。ワイらも我慢したる。『サイキョー流』
に完全に勝つためにな…」
「感謝するぜ、ロバート」
リョウは弾の方を向き直る。
「悪いな。試合が中断しちまってよ。それについては、こ
ちらが謝る」
「いいってことよ。おかげで、こっちも体力が回復できた。
今まで以上にあんたを殴れる」
「もう、好き勝手にはさせないぜ…」
両者が構える。
「始めぃ!!」
タクマの声と共に、二人は同時に駆け出して行った。
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