血塗られた歴史と炎
ラウンド3「格闘と呼び声」
同じ頃。某所の格闘場では。
「ていやっ!」
赤いハチマキと着たきりの白い胴着の男の廻し蹴りが、
それよりはひと、ふた回りはありそうな大男の頬に
見事に入った。
「おお〜っと!!波乱の決勝、時間切れ1分前で、
な、なんと、リュウ選手!ベルジン選手を…」
アナウンサーの声が大きくなり、止まる。
審判がベルジンと呼ばれる大男にカウントを入れる。
「…9!10!!試合終了!ウィナー、イズ、リュウ!!」
その時、会場は拍手と『リュウ』の声に包まれたという。
「さすが噂にたがわないボクシングの実力だ。
いい試合だった!」
ベルジンを起こしながら相手を認めるリュウ。
「あんたの拳も、なかなかの腕前だったぜ!」
相手もこちらを認めてくれたようだ。
「これから、どうすんだ?」
「明日にはここを出る。俺は俺より強い奴を
探してるんだ。真の格闘家を目指すために!」
その言葉にベルジンは肩を震わせた。
「…あんた、噂どおりだなぁ。へへ。今夜は家にきな。
とびっきりいいのを紹介してやる」
ベルジンの言葉に、リュウは賛成した。ただ。
「…3日何も食べてない。飯と引き替えで頼む」
グルルルルルル
腹の虫というオマケがついてしまったようだ。
「さっきまで鳴かないでいたのが不思議だよ、
あんたの腹」
次の飯を早く食べないと、ずっとからかわれる。
リュウはそう思った。だが…
「どうした?」
訪ねるベルジン。
「いや、今、何かに見られていたような気が…」
そういったリュウだが、ベルジンが辺りを見回しても
誰もいない。
「気のせいだろ。行くぞ」
「あ、ああ」
だがリュウは、何かが引っかかっているように
『見られている』の感触から抜け出せなかった。
(いったい、今のは…)
(なんという気づきの早さ…まあいい、私の目的は
あの格闘家たちではない。奴だ…)
リュウの勘は、当たっていた…
とある港。港から海を見ていた革ジャンに
グラサンといういでたちの男が港から街へ
ゆこうとしている。
「どこいくのー?」
彼と行動していた栗色のロングヘアーの少女、
クーラが彼に訪ねる。
「…別に」
いつも通り、愛想なく返す。
「もーっ、なんでいつもいつもそうやってどっか一人で
行くときには『別に』とか『お前には関係ねぇ』とか、
どうしてそういう憎まれ口ばっか叩くの!?
まったく、K’ってば、女のコの気持ち、
全然解ってない」
かなりふてくされたような言い方である。まあ、今までの
狭苦しい環境から解放された分、感情などが前より
豊かになったといえば、それはそれでいいのだが。
「わかったよ…言うよ………あいつ…俺の力の源になった
あいつと、ちょっと、闘いたくなった」
言葉にため息が混じっているが、クーラには彼の
言ってることは本心だと分かった。
「?なんで闘うの?だいいちあたしたちには、もう
闘う理由なんてないんだよ?」
なんかピントが違うクーラ。
「…お前って、いつも少しズレてんな…
あいつとファイトして、俺の実力を確かめたく
なったんだ」
「どうして?」
「…俺にもよくわかんねぇよ」
たしかにわからないかもしれない。
現に彼らが所属し、そして裏切った秘密結社ネスツは、
今は名前も形も、影もない。
彼らが闘う理由はこれっぽっちもなくなった、
というわけだ。
だが何故、今になって彼は闘いたくなったのだろう。
炎が疼いてるわけでもないのに…
「…考えたってしょうがねぇ、行ってくるぜ」
「あっ…もーう」
K’が再び走ろうとしたその時、
謎のエネルギー…いや、ネスツ総帥イグニスの技、
ディバイン・アローが飛んできた。
(なに…っ、ディバイン・アロー…だと!?)
K’がそう思ったとき、光弾はすでに顔の近くまで
きていた。
「ぐおわっ!」
「K’!」
クーラがK’を気遣ったが、あの時ほど光弾のキズが
深くない。
これにはK’もクーラもおかしく思った。
「今の技…ディバイン・アロー…だよね…」
「それは間違いない。だが…イグニスに比べればな!
こんなものはなんともないぜ!顔を見せやがれ!」
その言葉に、ディバイン・アローを打った張本人は姿を
見せた。
「フフフ…私の気配を読み取るとは。
さすがはネスツを…私のいた組織を破壊した者たち!」
どこからか現れたのは、再び出た黒いネスツ幹部の服と、
短く白い髪だった。
「誰だ!?てめぇは?」
K’が問う。
「私か…私はジーク!ネスツの幹部だ!」
ラウンド4に続く
ラウンド2に戻る
図書館に戻る