時を駆ける青年


第五話〜朝飯〜

作者 クラッシュさん


五年後・春…
龍一は17歳になり、あれから、随分と腕も知恵も上げていった。

龍一「りゃあぁ!!!」
市川「うおぉ!?」

龍一のショートアッパーが市川の胸ぐらを突いた。市川は痛みに耐えながら、足を踏ん張り、あっと言う間に体勢を整え、反撃の構えに入っていた。

市川「チィッ!!うおりゃあぁぁぁぁ!!」
龍一「うわぁっ!!」

おそらく市川の必殺技、雷電殺と言われる技だろう。
激しい電撃に身を包まれながら、龍一は地に伏せていった。

龍一「しし、しびれたぁぁぁー……」
市川「オイオイ、もう終わりか?」
龍一「動けませんよぉ、電撃まともに喰らったんですから……」
市川「へへっ…ったくよぉ。ちょっと前までは俺に一発のジャブも喰らわせられなかった奴が、今じゃぁ、苦戦するとはなぁ。」

市川はそう言うと微笑みながら、龍一に手を差しのべた。

裕二「すげー…二人共……。」
龍一「あ、裕二君。次、智也さんと組み手する?」
裕二「俺を殺す気か?」
市川「はははは…殺さないって、俺だって手加減ぐらいは知ってーの。」

龍一も裕二も5年前からの関係がもっと深くなっていた。あれ以来、龍一は体力をつけるためにバスケを始め、裕二と共に「学生最強のタッグ」と言われている。そう、龍一と裕二は「親友」と言う深い仲だった。

市川「さて、そろそろ飯にするか。」
裕二「やった!飯!?」
龍一「あはは!裕二君、食欲旺盛だなぁ。」

…ってな訳で夕食…

裕二「あのさー、龍一?」
龍一「何ぃ?」
裕二「おまえ、食欲旺盛…って俺に言ったけどさ。」
市川「おまえの方が食べてるぞ。龍一。」
龍一「何…ムシャムシャ…言ってるんすか…ムシャムシャ…ここで…食わないと…ムシャムシャ…明日の特訓は…モグモグ…もたな…モグモグ…いッスから。ムシャムシャ…。」
市川「食うかしゃべるか!どっちかにしろぃ!!」
龍一「おかわりお願いします。」
裕二「どひゃぁー!!何杯目だぁ!?」

おそらく、ドンブリ6杯目だろう。(推定)

市川「…は、はははははは!!」
龍一「どうしました?」
市川「思い出しちまった。」
裕二「何をですか?」
市川「龍一の親父の事だよ。」
龍一「父さんの事を?」
市川「あいつさ、KOFって大会に俺達と出たんだけどさ、一回戦目で負けちまったんだ。」
裕二「え!?市川さん達でも!?」
市川「ああ、俺達が学生の頃の話だからな。まあ、あの大会は、今でも勝てるかわからないレベルだったかな。」
裕二「えぇ!!」
市川「驚く事じゃないって。でな、KOF一回戦敗退の後にさ、あいつ、俺のおごりでラーメン2杯、カツ丼5杯、フライドポテト1皿食ったんだ。その時のあいつと龍一が飯食ってる姿が、そっくりでさー。あー、笑えるぜ。」
龍一「ごちそうさまです。」
市川「おまえ、聞いてなかったろ?」
龍一「ラーメンの話ですか?」
裕二「おまえなぁ……」
市川「話を聞かない所もほんと、そっくりだな。」

龍一達の一夜は過ぎていった。

…次の日の朝

ピンポーン……
市川家のチャイムが鳴った。

市川「…ったく、るせぇーな。」
エプロンを着た中年…というのは、まだ早いかもしれないが、エプロンを着て朝御飯を作っていた市川がドアに向かって駆け出す。

ピンポーン…ピンポーン…
市川「あー、はいはい!今開けるって。」

ガチャッ。
市川は腹立てたようにドアを開けた。

市川「あ、浜崎じゃん。よう。」

ドアの前にいたのは、背筋がピンッと伸びた一人の老人だった。
この老人は「浜崎」と言う、「市川 智也」の近所に住む、「爆発博士」と言われている。市川とはご近所関係で仲がいいようだ。

市川「何しに来たんだ?」
浜崎「ふっふっふ!君に実験台になって貰おうと思ってね。」
市川「さよなら。」

ガチャッ!

浜崎「ま、待ちなさい!!ワシが開発したのは並の物じゃぁない!!タイムマシンじゃ!!タ・イ・ム・マ・シ・ン!!」
市川「信じられるかバカ者め!!洗濯機の修理もできないテメェがそんなもの作れるわけないだろうが!!」
浜崎「ならば、助言をしてやろう!みそ汁の火は良いのか?」
市川「なぁ!!!?しまったぁ!!!」
浜崎「今日の朝飯は焼き魚、豆腐とワカメの味噌汁、納豆のようじゃなぁ…」
市川「な、何故わかった!?」
浜崎「お主の家の朝飯をこの目で見てきたからじゃ!!」
市川「…なんてこった。嘘だろ…?」
浜崎「どうじゃぁ?信じるか?」
市川「…わかった。まあ、入れよ。」
浜崎「ふっふっふ!認めたか。」
市川「認めたわけじゃねぇ。面白そうだったから聞いてやるだけだ。」
浜崎「ふっふっふ!聞きたいじゃろぉ?だが、まず、みそ汁の火を…」
市川「あー!!しまった!!」


続く


 

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