翼の拳
〜Fists of Wings〜
第2話
作者 タイ米
| あれから1ヶ月が経った。 『翼の拳』は依然として出ない。 そんなある時、なのはは師匠に練習後、呼ばれた。 「なんでしょう」 「月影、今度の日曜は空いているか?」 「日曜…ですか?」 突然の問いに戸惑うなのは。 「ええ、空いてますが何か…」 「実は私のライバル兼親友がこの近くでムエタイの道場をやっていてな。私達は年に一度、他流試合をしているのだ」 「他流試合…ですか」 「そう。その時にお前を連れて行きたいと思うのだ」 「え!?私をですか?でもまだ道場代表として出る程の腕では…」 「勘違いするな。お前は観戦だけだ」 「え?では何故…」 「今、むこうでは若干14ながらにして道場のエースと呼ばれてる男がいるらしい」 「14!?」 師匠の言葉に驚くなのは。まさか自分と同い年の男性が道場のエースとして活躍しているとは…。 「今のお前は非常に成長が速い。彼を通して更に何かプラスになれば…と思う」 「あ…ありがとうございます!是非行かせて下さい!」 なのはは即座にこの誘いを受けた。 同い年の格闘家ならば学ぶ事も多いし、何より刺激になる。それにもしかしたら『翼の拳』について何かわかるかもしれない。 なのはは早く当日にならないかと楽しみにしていた。 そして、他流試合当日。 師匠の親友が経営しているジムに着いた。 早速、中に入るなのは達。 そこはすでに空気が違っていた。明日のチャンプを目指してジム生たちが黙々と、しかし激しくトレーニングをしていた。 しばらくすると、師匠のもとに近づいてくる男がいた。 「やあやあ、久しぶりだな。藤岡君」 その男は会うなり師匠に抱きつく。 「やめたまえ、坂田。一年に一回会ってるではないか」 「ハハ、それもそうだな」 この坂田という男が師匠の親友兼ライバルのようだ。 「坂田、前回は負けたが今回は精鋭中の精鋭を集めた。 そう簡単には勝たせんよ」 師匠は闘志満々だ。 「なるほど。そちらのお嬢さんも?」 「いや、彼女は今回は観戦だけだ。君のところのエースを見て、勉強させてもらうよ」 「ハハ、エースか。まあ、その通りだが。おい、日向をリングに上がらせろ!」 坂田に言われ、ジム生は日向を呼ぶ。 日向がリングに上がる。 金髪で外国人の感じも混ざってる顔立ちである。 体格としてはどちらかといえば小さめで、華奢な感じは否めない。 こんな彼がなぜエースと呼ばれてるのか、なのははわからなかった。だが、その疑問はすぐに吹き飛んだ。 スパーリングの相手がリングに上がる。日向のひとまわりは体が大きかった。 ゴングが鳴る。 最初は様子見。それがしばらく続く。 しかし、日向が急にペースを上げる。相手も思わずつられてしまう。 「チェイヤアッ!!」 相手の隙を突いた日向のハイキックが炸裂し、相手はダウン。そのままテンカウントとなった。 (こ、この人、強い!!) なのはの正直な感想だ。とても同じ14とは思えぬ強さだった。 リングを降りようとした日向。 しかし、彼が急に動くのをやめた。顔はずっとなのはの方を向いていた。 「あの、私の顔がどうかしました?」 日向に聞くなのは。 「いやさ、君、どっかで会ったことない?」 「え?」 日向の突然の言葉に戸惑うなのは。しかし、すぐに思い出した。 「あ、まさかあなたって、B組の日向君!?」 |