翼の拳
〜Fists of Wings〜


第3話

作者 タイ米

「あ、まさかあなたって、B組の日向君!?」
 なのはは思わず大声を上げてしまった。
 今まで練習をしていたジム生達がこちらを睨む。黙ってしまうなのは。
「お嬢さん、日向の知り合いなのかい?」
 坂田がなのはに尋ねる。
「ええ。彼とは同じ中学で、そういえば日向君ってよく先生に怒られてたっけ…」
「ハハハ!なんだ、それじゃあジムにいる時と何ら変わらないなぁ!」
 坂田は腹を抱えて笑う。
「おい、月影!余計な事喋るんじゃねぇよ!!」
 日向がなのはに向かって怒鳴る。
「あ、ごめんなさい。でも、よく私の名前わかったよね。クラス違うからかもしれないけど、あまり話すことないから」
「ああ、その髪の色にその背丈だからな。思いっきり印象に残ってたってわけよ」
「その背丈って余計じゃない?」
 なのはが膨れっ面をする。
「ハハハ!それより月影、お前も今日の他流試合に参加するのか?」
 日向がなのはに尋ねる。
「いや、私は今日は見学だけだけど…」
「見学かぁ〜。そりゃそうだよな。どう見ても選手には見えねえもんなぁ〜」
「ちょっ…それってどういう意味よ!」
 なのはが今の日向の言葉につっかかる。
「見た通りだよ。だってお前は女の子だろ?それにその背丈だ。とても闘えるとは思えねえよ」
「そんな…背丈は関係ないでしょ!!」
「日向!今のは言い過ぎだぞ!!」
 なのはに続いて坂田も怒鳴る。
「言い過ぎ?みんながそう思ってることじゃないのかい?」
 日向が反論する。
「馬鹿者!人を見た目で判断するなど格闘家として愚の骨頂だぞ!!」
 坂田の怒りは最高潮に達している。
「あのですねぇ、コーチ。お言葉ですけど、俺クラスの域になるとどんな奴が強いかって雰囲気でわかるようになるんですよ。そこらの奴と同じにしないでいただけます?」
 自慢気に言い放つ日向。
「フン、調子に乗りおって。日向、ならもう一番スパーでもやってもらおうか?」
 坂田が突然スパーリングを日向に強要する。
「スパーって誰がやるんですか?」
 日向が尋ねる。坂田がなのはの方を向く。
「えっ?」
 思わず声が出てしまったなのは。
「藤岡君、彼女をお借りできませんか?」
「え?しかし、月影と彼とでは実力の差が…」
「試合ではありません。あくまでスパーです。それに精鋭達に混じって彼女が来るほどだ。きっと何かあるのでしょう?」
「ま、まぁ。しかし…」
「そうか。月影君…といったね。早速準備をしたまえ。君もなんだかんだ言いながら闘いたいはずだ」
 周りの言う事を無視してなのはにスパーの準備をさせる坂田。そして、なのはがリングに上がる。
「月影、マジでやるのか?」
「あれだけ馬鹿にされて、私だって我慢できないよ。強さは見かけじゃないってところを見せてあげるよ!」
 なのはの表情は厳しいものになっていた。
「そうかい。じゃ、こちらも現実ってもんを教えてやらなきゃな」
 両者共に構える。
 開始を告げるゴングが鳴る。

 二人が同時に動き出す。


 

第4話に続く
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