翼の拳
〜Fists of Wings〜


第8話

作者 タイ米

 道場内。

 門下生達が見守る中、なのはと師匠が組手をしている。
 両者、一進一退の攻防を見せている。
 その時、組手の終了を知らせるベルが鳴る。
 構えを解く二人。
「ありがとうございました!!」
「ありがとうございました」
 元にいた位置に戻り、礼をする二人。
「フム。この一ヶ月よく耐えたな、月影」
 師匠がなのはを誉める。
 なのはは肩で息をしており、喋る余裕もない。何とか表
情で喜びを表す。
 彼女はこの一ヶ月間でかなりの成長を見せた。
 最初はなのはの大会の出場に反対していた門下生も、こ
れには納得、という感じだった。
「明日は本番だ。試合に疲れを残さぬよう、今日はゆっく
り休め!」
「はい!!」
 そして、門下生達は解散していった。
 なのはも帰り支度をしていた。すると、師匠が歩み寄っ
てきた。
「師匠?」
「月影、お前に伝えたい事があってな」
「伝えたい事?」
「格闘とは相手との闘いの前に自分自身との闘いだ。自分
に勝てぬ者は力を発揮できん」
「………」
「お前はこの一ヶ月間、想像を絶する練習をしてきた。腕
もかなり上がってる。もっと自分の力に自信をもっていい
んだぞ」
 師匠は背を向く。
「月影、自分に勝てよ…」
 そう言い、師匠は去っていった。
 師匠の背を見ながらなのははつぶやいた。
「ありがとうございます、師匠…」

 翌日、大会会場に集合した門下生達。
 師匠が出場選手達に激励を送る。
「いいか、お前達。とにかく自分の持てる限りの力を尽く
せ。毎試合、悔いを残すな。これこそが武聖流である!!」
「はい!!」
 出場選手達が返事をする。
「さあ、行くぞ!!」
 師匠の掛け声と共に中に入って行く門下生達。
 その時だった。なのはの肩が何者かの肩とぶつかる。
「キャッ!!」
 ぶつかったのは、ごく普通の女学生であった。反動でそ
の女学生は倒れてしまう。
「あ、すみません。大丈夫ですか?」
 なのはが女学生を起き上がらせる。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ前を見てなくて…。それでは、失礼し
ます」
 そう言い、なのはは会場内に入って行く。その光景を黙
って見届ける女学生。
 しばらくすると、急に彼女の目が蒼く光りだした。
「マスター、これより作戦を開始します…」



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