翼の拳
〜Fists of Wings〜
第11話
作者 タイ米
なのはの翼の拳が炎虎に襲いかかる。
想像以上の速さに動揺する炎虎。何とか間一髪で避け
る。
しかし、第二撃がすかさず来る。
「があっ!!」
なのはの左正拳突きが炎虎の腹部を襲う。
(何だ、今のは!?これまでの攻撃とはまるで違う!!)
なのははこのチャンスを逃さない。
「やあぁぁぁっ!!」
なのはの叫びと共に、炎虎に怒涛のラッシュを仕掛け
る。
14の少女とは思えぬ攻撃の速さに全部避けきれない
炎虎。しかし、彼も黙ってはいない。
ドゴォッ!!
炎虎のカウンターのアッパーがなのはの顎を襲う。
「おぉぉぉぉぉぉっ!!」
今度は炎虎が吼えた。
バキッ!!
炎虎の飛び蹴りが、なのはのダウンを誘う。
だが、なのはもすぐに立ち上がる。
炎虎も攻めを止めない。
「やあぁぁぁぁぁっ!!」
「ぬおぉぉぉぉぉっ!!」
両者共に一進一退の攻防を見せる。
もはや会場は静まり返っていた。
それから数分が経過した。
なのはは体中、血や痣だらけ。肩で息をし、足もがたが
たに震えていた。
対する炎虎も傷はなのは程ではないが、息はかなり上が
っていた。それに緒戦でここまで追い詰められるとは思わ
ず、心理的にかなり焦っていた。
炎虎が口を開く。
「なるほど。正直、お前がここまでできるとは思わなかっ
た。さすが、この大会に出場するだけの事はある。だが、
俺もいつまでもこの闘いにつきあってる暇はない!!」
構えを解く炎虎。
そして、大きく深呼吸をする。
ただならぬ雰囲気が漂っているのをなのはも感じた。
「恐れているのか?俺がまだ全てを出し切っていない事に…」
「え!?」
なのはは愕然とした。
あれだけの攻防を演じ、あれだけ凄まじい腕を見せた炎
虎はまだ全力ではない。
なのはは一瞬、恐れを感じた。
「怖いのか?」
なのははビクッとした。心の中が全て読まれている。
再び構える炎虎。
「言った筈だ。生半可な心では命を落とすと…。それとも
お前の覚悟とはその程度のものなのか?」
炎虎の闘気がビンビン上がるのが感じられる。
「今度こそ…、終わりだ!!」
今まで以上に炎虎の表情が厳しくなる。
ここは自分も覚悟を決めなくてはダメだ、となのはは悟
った。だが、迷いはまだ完全に抜けきれてなかった。
果たしてこれから放たれる炎虎の技に耐えられるか。
もう一発、攻撃を当てられるのか。
様々な不安がなのはを押し寄せる。
だが、そんな彼女も次の瞬間に我に返る。
「月影!!」
師匠の声が聞こえた。
ハッとするなのは。
だが、次の瞬間、彼女の視界には炎虎の剛拳がいっぱい
に覆っていたのだった。
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