翼の拳
〜Fists of Wings〜
第13話
作者 タイ米
起き上がる炎虎。しかし、その際に多少の違和感が感じる。
あの闘いによるものではない。だが、確実に自分の身体に何
かが起こってる。
しかし、今の炎虎にそれを考える余裕はない。
組織の者と思われる男が前にいた。
「アモン様がお呼びだ。早速来てもらう…」
男はそう言うと、部屋を出る。
炎虎も後に続く。
アモンの部屋。
男がノックをする。
「入れ!」
声が聞こえると、二人はドアを開けて入る。
「ご苦労。ファン、お前は席を外せ」
「はっ…」
ファンと呼ばれた男は部屋から出る。
残されたのは炎虎と眼鏡をかけた男のみ。
「何の用だ、アモン…」
炎虎が切り出す。
「何の用? クックック…、少しは自分の立場というものをわきま
えてほしいね。君が一体どういう事をやらかしたか、わかっている
のかい?」
アモンと呼ばれた男が不敵な笑みを浮かべながら言い放つ。
「君は大変な事をしでかした。それこそ、組織の今後を左右すると
んでもないことを…」
「……」
沈黙する炎虎。
続けるアモン。
「客人達からは、そりゃあもうひどい言われっぷりさ。例の少女と
の試合、君に手加減するよう吹き込んだんじゃないかってね…」
「手加減? 俺がそんな事…」
「わかってる。私は君を雇った男だ。君の性格ぐらい把握済みだよ。
だが、そうなったらそうなったで今度は君自身の実力が舐められる。
それは、組織が舐められるも同然なんだよ…」
「何が望みだ…」
「うちの決まりはね、我が組織に泥を塗ったものを消す決まりなの
だよ。そこでだ、君にはある事をやってもらいたい」
そう言い、アモンは一枚の写真を炎虎に手渡す。
「こ、こいつは!!?」
「そう、月影なのは。彼女の抹殺を君に命ずる」
「俺が…!?」
炎虎は一瞬、動揺した。
「言っておくが、断る事は出来ないよ。君の体にはジワジワと命を
蝕む薬を服用させた」
「な!?」
「持って一年だ。それ以内に彼女を抹殺できなければ君は死ぬ」
「もし、彼女を抹殺したら?」
「その時は、これをやろう」
アモンがある物をポケットから出した。
「君の薬の効果をなくす中和剤だ。これを服用する以外、助かる手
はない…」
「俺の命は、貴様の手の中…ということか」
「そういうことだ。やってくれるな?」
しばらくの沈黙。その後、口を開く炎虎。
「わかった……」
「よろしい。頼んだぞ!!」
炎虎はそのまま部屋を出る。
そして、手渡された写真を見る。
「『月影なのは』か…」
そのまま、自分の部屋に引き返す炎虎であった。
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