翼の拳
〜Fists of Wings〜


第17話

作者 タイ米

「炎虎…さん。どうしてここに…」
「…お前を殺す。その為だけに来た…」
 なのはの問いに静かに答える炎虎。
「私を殺す!? 何の為に!!?」
「構えろ。殺されたくなければ、己自身の力で俺を倒す事だ!」
 構える炎虎。
「ちょっと、おかしいですよ! あなたはこんな事をする人じゃない!」
「闘う意志なしか?」
 なのはの言葉を無視しつづける炎虎。
 彼の形相は、鬼のようなものになっていた。
「やめて! 私はあなたと闘えない!!」
「そちらが闘えぬというならその命、奪うまで! 行くぞ!!」
 迫る炎虎。
 地面が揺れ、渾身の掌打がなのはを襲う。
「ワッ!?」
 間一髪で避けるなのは。
 しかし、すかさず蹴りが飛び込んでくる。
「クッ!!」
 辛うじてガードするなのは。
 しかし、ガードの上からでも相当なダメージが、なのはを襲う。
「やめて!」
「ハァッ!」
「私は…」
「デイッ!!」
「あなたと闘えない!!」
「セイヤァッ!!!」
 炎虎の攻撃が、なのはのガードを崩す。
「しまった!」
「終わりだ! 娘!!」
 至近距離からの炎虎の掌打。
 完全に決まったかと思われたその時、炎虎の動きが止まる。
 なのはも何が起こったのかわからず、唖然としている。
 炎虎が足下を見ている。
 なのはも下を見ると、地面にはリボンが刺さっていた。 
「そのぐらいにしといたら? 本人が闘いたくないって言ってるじゃない」
 どこからともなく、声が聞こえた。
 と同時に、上空から炎虎めがけて、何者かが蹴りを仕掛けてきた。
 それを紙一重でかわす炎虎。
 攻撃を仕掛けた方は、地面に刺さっていたリボンを拾う。
「あ、あなたが私を…?」
 なのはが震えながら、その人物に聞く。
「礼は高くつくわよ。何たって、あなたの命の恩人なわけだし」
「え?」
「…なんてね」
 ユーモアな所を見せる人物。髪が長く、声もそれなりに高い。
 見た目もなのはと同年代くらいの少女であった。
「貴様、邪魔をする気か…」
 炎虎が少女を見る。
「…邪魔をすると、どうなるの?」
 少女が表情を変える。
 先程までの明るい所は微塵も感じさせない。
 すると炎虎は次の瞬間、動揺する。
 顔からは冷や汗が流れていた。
「貴様、なぜここにいる!?」
「さあね。それはあなたにも聞きたいけど…」
 炎虎が一瞬、体をピクリとさせる。
 そして、小さく舌打ちをし、構えを解く。
「今日のところは退いておこう。だが、今度会ったときはその命、ないもの
と思え!」
 そう言い残し、炎虎は去って行った。
 残されたなのはと少女。
「あ、あの…、ありがとうございます。おかげで助かりました!」
 なのはが礼を言う。
「あなたが『翼の拳』の少女、月影なのはね…」
「え?」
 なのはは、少女が自分の名前を知っていた事に驚いた。
「私は麻生夏香。しばらくあなたのボディガードになってあげる…」
「ボディ…ガード!?」
 次々襲いかかるこの状況に、なのはは困惑気味であった。



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