翼の拳
〜Fists of Wings〜
第37話
作者 タイ米
「嘘。カスミちゃんが、『暦』の人間だなんて…」
葉月の言う事が、まだ信じられないなのは。
今まで仲良くやってきた日々は何だったのか…。
だが、そんな問いに答えるかのように、葉月は続ける。
「あなたと今まで仲良くしてたのだって、あなたのデータを取りやすくする為
にやってたのよ」
「そんな。嘘…でしょ?」
なのはがカスミの方を向く。
カスミもなのはの方を向き、静かに口を開く。
「ごめ…ん…なさい」
もう喋ることもままならない感じだった。
「カスミちゃん!」
なのはが叫ぶ。
「聞いて…、なのはちゃん。彼女の言う通り、私は…力を調査するためにあな
たに近づいたの。仲良くしていたのだって、本当は…」
その時、咳きこむカスミ。
口からさらに吐血する。
「もういい。もういいよ! カスミちゃん!!」
なのはの制止も聞かずに、続けるカスミ。
「ごめん…。もし、こういう形で逢って…なかったら本当に、友達になれたか
も。あなたの心を踏みにじるような真似をして…」
またも咳きこむカスミ。
喋ろうとするも、これ以上はさすがに無理な状態であった。
「あらあら。操られてる状態なのに、敵に謝るなんて。よっぽどあなたが仲良
く…いや、素直に騙されたってことね」
不敵に笑う葉月。
その時、なのはの右手が急に光りだした。
「あら? 効果ありって事?」
葉月が嬉しそうな表情をする。
「ふざけないで。こんなにたくさんの人を傷つけて、挙句の果てには自分の仲
間まで…」
なのはは怒りに満ちていた。
だが、それに葉月は落ち着いて反論する。
「フフ。カスミはいつまでたっても任務を遂行しないから私が処罰しただけ。
あなたのお仲間も、力の発動の為に、不本意ながら犠牲になってもらったの。
私は、あなたの力の調査をしなきゃならないからね。少しは私の仕事というも
のも理解してほしいわ」
「そんなの言い訳にならない!」
なのはの『翼の拳』がさらに光り輝く。
「私の力の何が知りたいかはわからないけど、これ以上の好き勝手はさせない!
もう、誰も傷つけさせない!!」
「ふうん、やっとやる気になったようね…」
構える葉月、そしてなのは。
「行くよ、夏香。これが『翼の拳』の力だ!!」
葉月に向かうなのは。
光り輝く翼を纏った拳が、葉月に襲いかかった。
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