翼の拳
〜Fists of Wings〜


第50話

作者 タイ米


 トゥエルヴムーンシティの中心部にあるホテル。
 ここが選手達の宿泊場所であり、控え室になっていた。

 試合が組まれたなのはは早速、道着姿になる。
「よしっ!!」
 師匠から貰った黒帯を締め、気合を入れるなのは。
「用意は全て整ったね」
 夏香が聞く。
「ええ。後は持てる全ての力をぶつけるだけ…」
 その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ…」
 なのはが言う。
 入ってきたのは、政樹とサラリーマン風の男であった。
「た、探偵さん!?」
「よっ。お久しぶり、お二人さん」
 明るい態度で接する政樹。
「やはり、あなたも出るのね。大会に…」
 夏香が言う。
「まあな。どうもこの大会にも『暦』が絡んでるようでな。調査の一環で参加してるんだ」
「で、そこにいる人は?」
 なのはがサラリーマン風の男に目を向ける。
「はじめまして。観筑寺八河と申します。政樹さんとはひょんな事から知り合いまして…」
 照れながら答える八河。
「実は八河さん、暦関係のグループに絡まれてな。乱闘になったんだが、加勢した俺と二人で全滅させて、それ以来の仲なんだ」
「大会の話を持ちかけたのも、政樹さんなんですよ。最初は断ったんですけど、乱闘騒ぎを見ていた上司が出ろ出ろってうるさくて…」
「それにグループの残党がやけに最近、彼の会社にちょっかいを出してきてな。ま、それもあって彼も今回参戦って事になったわけさ」
 政樹と八河が話し終える。
「てことは、二人と当たる可能性もあるって事ね…」
 夏香が聞く。
「まあな」
 返答する政樹。

 夏香は感じた。

 政樹はさることながら、一緒にいる八河も相当の実力者だということに…。

「ああ、それからなのはちゃんの道場生達には今回の会場入りは遠慮させてもらう事にした」
「え?」
 政樹の一言に驚くなのは。
「俺がそうしたんだ。この大会は『暦』が深く関わってるからな。またあの事件みたいに利用される恐れがある。そういう訳で自宅待機という事にさせてもらったのさ。ま、君の事はTVで応援してるだろうけどね」
「そうですか…」
 目を瞑り、黒帯の両端を持つなのは。
「悪いな。だが、彼らの安全も考えてやらないと…」
 政樹が言う。
「ううん、探偵さんは悪くないよ。それにこの道着、この黒帯にみんなの気持ちが込められてる。みんなは私の中にちゃんといるよ」
 なのはの語るその姿は、清々しささえ感じられた。
「おっと、なのは。そろそろ時間よ」
「うん。行きましょう、試合場へ!!」
 目を開けるなのは。
 夏香達と共にバトルステージへと向かう。


 

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