翼の拳
〜Fists of Wings〜
第55話
作者 タイ米
| ヘルメスがバトルステージに到着する。 そこで彼の見た光景は、あまりにも一方的な展開の試合であった。 確かに予想通りといえば、それまでかもしれない。 しかし、見ている側にとっては、酷い事この上ないし、ここまで力の差を見 せつけるとは正直思わなかったからだ。 「やはり、無理がありすぎましたか…ね?」 ヘルメスが呟く。 イースターは彼の言葉を証明せんとばかりに、なのはを抱え上げ、その状態 で回転を始める。 彼の決め技である『ハイパーエアプレーンスピン』。 この技で幾多の敵を倒してきた。 それが今、彼女にも炸裂しようとしている。 「これが試合でなければ、助けてあげるんだがなぁ…」 またも呟くヘルメス。 イースターの回転はどんどん速くなっていく。 平衡感覚が失いそうな勢いだ。 「オォォォォォォォ〜ッッ!!」 絶叫するイースター。 そして、回転速度がピークに達した時、ついになのはを放り捨てる。 だが、その先は建物の壁であった。 なのはの体が強く壁にぶつけられ、そのままイースターの方に跳ね返ってく る。 イースターは次なる攻撃の準備をしていた。 フィニッシュのジャンピングラリアットドロップ。 「セィィィィィ〜ッ!!」 跳び上がるイースター。 とどめのラリアットがなのはに襲い掛かろうとしていた。 その時だった。 「グハッ!!」 地に叩き伏せられたのはイースターであった。 顔面からは大量の鼻血が出ている。 対するなのはは着地して、すでに構えを取っている。 「な、何故!?」 イースターは信じられない、といった表情をする。 彼女は立っているのがやっとのはず。 だが、しっかり相手の目を見て構えているだけでなく、ここへ来て今までよ りも速く、そして重い攻撃を仕掛けたのだ。 有り得ない。 そう思った時、イースターは彼女のある異変に気付いた。 「こ、これは!?」 なのはの右拳が光っている。 そして、そこには鳥のような翼が生えていた。 「まさか、本当だったのか。あの翼の拳の噂は!?」 イースターの顔には、完全に動揺の色が生まれていた。 「これが狙いだったか。アルシャンク…」 この光景を見ながら、ヘルメスは一人ほくそ笑んでいた…。 |