翼の拳
〜Fists of Wings〜


第57話

作者 タイ米

 救急隊がイースターの元に駆け寄る。
 そして、巨大な彼の体を担架で運ぶ。
 その様子をじっと見るなのは。
 その時、背後から肩を思いきり叩かれた。
 振り向くなのは。
「どうした。勝った実感ないって顔だぜ?」
 そこにいたのは政樹だった。
「探偵さん…」
「わからないなら俺が言うぞ。君は勝ったんだ、ザ・イースターに。だからも
っと喜べって!」
 政樹に言われ、初めて勝利したという実感を得るなのは。
 その顔から、自然に笑みがこぼれた。
「私、勝ったんだね…」
「ああ。世紀の大番狂わせさ…」
 夏香と八河もその場に到着する。
「まさか、こんな結果になるとは…」
 八河がつぶやく。
「八河さん」
 夏香が八河の名を呼んだ。
「はい?」
「あなたの言うことも間違ってないかもしれない。だけど、簡単に諦めなけれ
ば、いい結果が生まれる事もあるのよ」
 沈黙する八河。
 しばらくして後、笑みを浮かべながら彼女に言い返す。
「どうやら、そのようですね…」

 4人が喜び合う光景を見ていたヘルメス。
 彼の焦点は、月影なのはに合っていた。
「なるほど、あれが『翼の拳』か。幹部達が揃って興味を示すわけだ…」
 そのまま、その場から消えるヘルメス。
 直後に、フードを深く被った少年が、ヘルメスの消えた位置で4人を見る。
「やっぱりこの大会に出て正解だった。もしかしたら、ウェンディにお目にか
かれるかもしれないしね…」
 少年が微笑を浮かべる。
 彼の視線もまた、月影なのはに注がれていた。


 

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